深堀健二の兜町法律放談 あの超人気ドラマがヒント 倒産処理・2

兜町法律放談 連載


さて、今回は倒産手続の後編です。例の人気ドラマでも、後半は経営不振のホテルの再建がテーマになるようですし、最近では、JALが再上場した際に、上場廃止前の株券は価値があるのかが話題になりました。そこで、今日は、倒産処理手続の中でも頻繁に登場する、民事再生手続き、会社更生手続きおよび破産手続きの3種類の手続きについて、比較・整理してみたいと思います。

1.「清算型」と「再建型」

まず、倒産処理手続きは、大きく「清算型」と「再建型」の手続きの2つに分けることができます。事業継続を終了し会社財産を債権者に分配する破産手続きが「清算型」、事業を継続し将来の事業収益を分配する民事再生手続きおよび会社更生手続きが「再建型」に該当します。

そして「清算型」と「再建型」のどちらを選ぶかの判断基準は「再建した方が今すぐ清算するより債権者の利益が大きいかどうか」で、大きい場合に再建型手続きが採用されます。

2.民事再生手続は原則経営者が残留

「再建型」を選択した場合、現在では通常民事再生手続きが採用されます。その理由は、裁判所の選任した管財人が会社経営の実権を握ることになる会社更生手続きとは違い、現経営陣が原則として会社の管理処分権限を失わずに済むこと、および裁判所や管財人という第三者機関が一定程度関与することで、金融機関などの大口債権者も私的整理に較べて債権放棄などを行いやすい点にあります。

金融負債のみを大幅にカットすることで、金利支出を抑制し、収益性の向上とバランスシートの改善が一気に可能となる民事再生法は、そのコストの低さも相まって、現在では再生型手続きの中心的な存在です。

3.大型事件は会社更生手続き

もっとも、民事再生手続きは、債権者による競売などの実施を止めることはできませんので、債権者が事業の継続に必要な資産を競売すると事業を継続することができなくなるおそれがあります。

とりわけ、JALのように、多数の事業用資産を保有し、その資産に担保権が設定されているような場合には、競売実行を強制的に停止できる仕組みが必要になります。

そこで、事業規模の大きい会社で、担保権などについて裁判所が介入して競売などの権利行使を停止しない限り、事業の継続が困難な場合には会社更生手続きが採用されるのです。

4.破産手続きは清算目的

これらの「再建型」とは違い、破産手続きは、基本的には会社が債務超過の場合に、全財産を換価し、債権者に公平に分配することを目的に採用されます。

そのため、破産管財人が就任し、全ての事業活動を休止し、清算手続きに必要な最小限の人員以外は解雇、粛々と清算手続を進めることになります。

5.100%減資に株主の同意は不要

先ごろ、JALの再上場時に、JALの株式を上場廃止前から保有し続けた株主が、株を売却できないかが話題となりました。

残念ながら「株主としての権利を失っているので売却できない」が結論です。

一般に再建型の手続きの場合には、100%減資を実施し、新株主や債権を放棄する債権者が出資することが、再建途上におけるフリーハンドの確保、債権放棄の正当化、リスクマネー提供への動機付けなどのために行われます。

会社法では100%減資を実施する場合には株主総会の決議が必要ですが、再建型の法的手続きの中で実施する場合には裁判所の許可により株主総会決議に代替することができます。

株主の立場からすると、とんでもない話です。しかし、(1)「債務超過」の場合には、株主が把握している経済的価値はゼロである、(2)本来株主よりも弁済順位の高い債権者が再建計画の中で債権カットによる損失を負担していることから正当化される、と法律家は理解しているのです。

6.銀行の葛藤

では、銀行はどのようにして経営不振の取引先の処理方法を決めるのでしょうか。

過去にダイエーの整理再建が話題になりましたが、ダイエーやJALのように、銀行が株主や債権者として深く関与している会社が経営不振に陥った場合、銀行は、世論による批判を怖れるとともに、過去の株式取得や融資実行に関する行内の責任論・政治力学、対金融当局との関係、メインバンクの呼び掛けで出資・融資したほかの金融機関からの批判など、さまざまな対立関係を処理しなければならず、結局は主体的には何も決められなくなります。

そのため、会社が勝手に倒産処理手続きに入ったり、「機構」が出てきて「これしかありません」と決めてくれたりすることは、実は「銀行」にとって極めて合理的なのです。

ただ、銀行の担当者は行内のさまざまな思惑を抱えていますので、「どうすれば自分が責任を被ることなく合理的な処理ができるか」を常に考えることになります。

例の人気ドラマの後半は、そういった視点も持ちながら、楽しみたいと思っています。

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