特報 花王 カネボウ化粧品自主回収 業績へ影響は限定的

特報 連載


利益貢献度はファブリック&ホーム部門

花王(4452) 週足

花王(4452) 週足

7月4日のカネボウ化粧品による自主回収発表からほぼ1カ月。7月29日、親会社の花王(4452)が業績予想の下方修正を発表した。通期で売上高1兆2,700億円、営業利益1,160億円、当期純利益730億円としていた期初予想のうち、売上高と営業利益は据え置き、当期純利益だけを60億円減額して670億円とする内容だった。

このうち、カネボウ化粧品の美白化粧水の自主回収関連の損失の影響額は84億円。売り上げ原価に28億円、特別損失に56億円というのがその内訳だ。

同時に発表した上半期の業績予想は、売上高600億円、営業利益320億円、当期純利益190億円からそれぞれ6,250億円、429億円に上方修正。純益だけは7億円減額して183億円。

上期の修正を見る限り、自主回収なかりせば通期も相当な上方修正となったであろうことは容易に想像がつく。

セグメント別売上構成推移

セグメント別売上構成推移(クリックで拡大)

花王は現在、BtoC部門とBtoB部門の2部門に分けてセグメント情報を開示している。BtoC部門に関しては、さらにビューティーケア、ヒューマンヘルスケア、ファブリック&ホームの3つの部門に分けて開示をしている。

ビューティーケアにはカネボウ、ソフィーナの2ブランドの化粧品のほか、シャンプー、リンス、化粧せっけんが分類されており、ヒューマンヘルスケアにはヘルシアなどの健康飲料や食料油、入浴剤や歯磨き、歯ブラシ、男性用化粧品、そして生理用品と紙おむつが分類されている。ファブリック&ホームにはアタックなどの衣料用洗剤やキッチンハイター、キュキュットといった台所用洗剤、クイックルワイパーなどの清掃用具や住居用洗剤などが分類されている。

前期が12月決算への決算期変更のために9カ月決算になったため、その前の2012年3月期との単純比較はできないが、実質的には12年12月期は0.4%の増収、営業利益は3.2%の増益、当期純利益は20.5%の増益だった。

今期の期初の売り上げ予想では、ビューティーケアが前期比4.1%増の5,600億円、ヒューマンヘルスケアが1,970億円(3.9%増)、ファブリック&ホームケアが3,050億円(4.5%増)、そして油脂アルコールや界面活性剤、トナーやインクジェットプリンターインク用の色材といったBtoB向けケミカル事業が2,420億円(2.3%)だった。

もう間もなく発表になる中間決算の説明会時には、各セグメントごとの通期売上計画に修正があるのかどうかが判明するはずだが、新興国で爆発的に需要が増えている紙おむつや洗剤などが2ケタ成長を遂げるのは間違いなく、ビューティーケアを減らしてヒューマンヘルスケアとファブリック&ホームケアを上乗せし、トータルでは売上高は期初予想と同じということになるのだろう。

株価の方も業績予想の下方修正発表の2日ほど前から1割ほど下げたのみで、相変わらずPERは予想ベースで23倍、PBR(株価純資産倍率)も実績ベースで2.7倍と市場の評価は高い。

セグメント別営業利益推移

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花王はカネボウ化粧品買収を機にセグメントの分け方を一部変更しており、旧工業用はケミカルにそのままスライドしたが、旧家庭用に分類していたせっけんやシャンプー、リンスの部門を旧化粧品と合体させてビューティーケアとした。このため、カネボウ化粧品統合後のビューティーケア部門の数字が、旧化粧品部門に比べて大きく伸びているように見えるが、せっけんやシャンプー、リンスの異動効果も影響している。

現在のカネボウ化粧品の貢献度はというと、12年12月期でカネボウ化粧品の売上高は1,500億円で営業利益は105億円。ビューティーケア部門の営業利益は218億円なので、カネボウ化粧品の貢献度は半分弱。ただ、花王の消費者向け化粧品部門は赤字で、この部門の稼ぎ頭は美容サロン向け。花王全体ではファブリック&ホームの貢献度が群を抜いている。

一部で今回の自主回収の影響で花王がかなりのダメージを受けるのではないかとか、カネボウ化粧品を切り離すのではないかといったうわさも出回っているのだが、花王の連結業績への影響は今のところ限定的。市場もほとんど反応していない。

このうわさの出どころはどうやらカネボウ化粧品の関係者らしく、花王傘下に入って7年半も経過しているというのに、エベレスト級のプライドの高さ故なのか、いまだに相いれないものがあるらしい。

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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