特報 日本風力開発が国家賠償請求訴訟 審判期日は延期のまま

特報 連載


日本風力開発(2766) 週足

日本風力開発(2766) 週足

新聞はどこも取り上げなかったが、7月12日、日本風力開発(2766・東マ)が国を相手取り、1億3,557万35円の国家賠償請求訴訟を起こしたことを公表した。もう読者諸氏は忘れておられるだろうが、今年3月29日、証券取引等監視委員会(SESC)が日本風力開発に対し、4億円の課徴金納付命令を下すよう、金融庁に勧告を行っている。

SESCは2009年3月期の決算について、実態のない風力発電機販売斡旋(あっせん)取引に係る売上計上があり、連結経常損益が4億400万円の赤字であるところを18億6,100万円の黒字に、また連結当期純損益が16億3,500万円の赤字であるところを6億3,000万円の黒字と記載した。つまり赤字を黒字と偽った粉飾決算を行ったと認定。この09年3月期の有価証券報告書を参照書類として公募増資や新株予約権付き社債募集などで総額88億円を調達したので、課徴金の計算式に従って4億円という課徴金を算出した。

訂正前の業績推移(クリックで拡大)

訂正前の業績推移

この措置に猛反発した日本風力開発は同日、金融庁の審判で徹底的に争う予定であることを公表。4月12日に関東財務局から受けた有価証券報告書の訂正命令については、これを拒絶すると即上場廃止になってしまうので、不本意ながら上場廃止を回避するためにやむなく訂正に応じている。

訂正命令の対象は09年3月期決算の売上高と費用の部分なので、結果的に純益が影響を与える総資産や純資産も訂正対象になり、翌年以降の10年3月期、11年3月期、12年3月期についても前の期からの積み上げで計算される総資産と純資産、それに自己資本比率の部分を訂正している。

だが、訂正に応じたからといって粉飾を認めたわけではないということも表明。この訂正命令の取り消しを求める訴訟も起こしている。

本筋の課徴金納付命令の撤回を求めるべく望む金融庁の審判の方は、1回目が5月13日に開催されるはずだったが、5月13日の期日が流れて以降、2カ月以上が経過した現在も期日は入っていない。

そんな中での国家賠償請求訴訟である。訂正にあたっては監査法人に再監査費用も払うハメになるなど多大な損失を被ったので、賠償せよというわけだ。

SESC相手の国家賠償請求訴訟は6月6日に昭和ホールディングスも起こしており、こちらは10年6月8日に実施されたSESCによる強制調査がいわれのないものだったから損害を賠償せよというものだ。

審判期日がなぜいまだに入らないのかは不明だが、風力開発側の鼻息の荒さからすると、風力開発側の事情で延期されているとは考えにくい。第一、処分の対象になっている会社の事情で延期が認められるケースは極めて例外的なはずなので、これはどう考えてもSESC側の事情だろう。

ちなみに日本風力開発、この課徴金処分で10万円を超えていた株価は8万円を割り込む水準に急落。さらには13年3月期決算の着地が予想を下回り、なおかつ14年3月期が最終赤字となることが嫌気されたらしく、決算発表があった5月15日以降はさらに落ち込み、現在は6万円台後半で推移している。

14年3月期は電力の固定買い取り制度の恩恵で営業損益は黒字転換する。13年3月期で発電子会社6カ所を売却して有利子負債を減らしたとはいえ、依然として金利負担は重いが、それでも経常損益予想は2億円強と何とか黒字になる。だが本体が実質コストセンターになっている一方で、発電子会社が黒字になるので、子会社側に納税が発生するため、最終損益は赤字予想ということらしい。

投資家は配当に直結する1株純益に敏感なので、営業損益の黒字化へのプラス評価を最終赤字へのマイナス評価が上回っている状態になっているのだろう。

09年3月期決算訂正後の業績推移(クリックで拡大)

09年3月期決算訂正後の業績推移(クリックで拡大)

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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