特報 チムニーで大儲けのカーライル 2年8カ月での再上場の裏に規則改定

特報 連載


ツバキ・ナカシマに続いて今度はチムニーである。11月9日、居酒屋チェーン経営のチムニーが再上場の承認を東京証券取引所から取得した。再上場の予定日は12月14日。上場承認を取得しながら上場を取りやめたツバキ・ナカシマに続き、今回もまた保有株を売り出す大株主は米系ファンドのカーライルである。
ツバキ・ナカシマは売り出しのみだったが、今回は公募もある。とはいえ、新規発行が28万株、自己株の放出が72万株であるのに対し、カーライルの売り出し株数は790万株。オーバーアロットメント132万株も含めれば、合計で922万株。発行済みの48・3%だ。発行済みの67%超を売り出そうとしたツバキ・ナカシマのケースに比べると控え目だ。

チムニーは1984年にイオンの子会社として設立されたが、後に米久に転売され、2005年2月にJASDAQ市場に上場した。MBO(経営陣による買収)による非公開化を決めたのは上場からわずか4年7カ月後の09年11月。手法は定番の全部取得条項スキームを使ったキャッシュアウトで、10年4月22日付で上場廃止になった。
買収に掛かったコストは総額約210億円で、半分は三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、日本政策投資銀行の3行が37億円ずつ、総額110億円融資し、残り100億円はカーライルの出資だった。

今回カーライルが売り出す790万株(OAこみで922万株)は、カーライル保有分のおよそ45%。一方、売り出し予定単価は1040円なので、首尾良く捌ければ約82億円(OA込みで95億円強)になる。従って、100億円×45%=45億円の元手で82億円の収入になるから、2年8カ月で37億円の儲け。年利回りにするとざっと30%といったところだ。
TOB(株式公開買い付け)価格は2260円。当時の一株純資産1075・81円の2・1倍、非公開化公表日終値に対するプレミアムは42%と、さほどナメた条件でもなかったにもかかわらず、カーライルはたった2年8カ月でこれほどの儲けを手にしたのだから、やはりキャッシュアウトは買収者にとっては笑いが止まらないおいしい商売なのだ。逆に言えば日本の投資家はそれだけナメられっぱなしだということだ。
それではこの2年8カ月にチムニーはどれほど企業価値が上がったのか。例によって買収にかかった借金を被買収会社に背負わせるLBOだったので、非公開化前最後の決算となった09年12月期には無借金だったものが、直近の11年12月期には60億ほどの有利子負債があり、自己資本比率は10ポイントほど低下。売上高、営業利益はほぼ非公開化前と同じ。総資産は87億円ほど増えているが、増えたのはのれん。固定資産はむしろ減っている。

投資有価証券がそっくり流出してしまったツバキ・ナカシマよりはだいぶマシだが、ROE(株主資本利益率)もROAも非公開前の約6割―半分程度。店舗数も上場廃止前の増加ペースの半分程度にダウンしたことがわかる。

上場承認と同時に公表された有価証券届け出書には、非公開化後に実施した具体策として、業務執行を具体化させる、各部門役職者全員が参加する業革会議を設けただの、組織をいじったのといったことが書かれているが、こんなことが非公開化しなければできなかった大胆な施策とはとても思えない。実際、数字を見る限り企業価値は下がりこそすれ、上がった形跡はない。

チムニーもまた、キャッシュアウトは買収者に巨額の儲けをもたらすだけのものであることを実証してくれた。

ところで、MBOで非上場化した会社の再上場は、上場廃止から3年以上経過しないと認められないという規定がかつてはあったが、今年3月の新規上場規則改訂で削除されている。

チムニーが上場廃止からたった2年8カ月での再上場が可能になったのもこのため。ただでさえ上場会社のやりたい放題なのに、この規定まで外した東証の神経を疑う。

※この記事はNSJ日本証券新聞11月14日付けに掲載されたものをそのまま再掲載しています。

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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