深層を読む 謎に満ちた「HFT」の実態 超短期の順張りトレード

【深層】を読む 連載


速度勝負よりクセを見抜く

日経平均 日足

日経平均 日足

最近、ザラバも含めて相場変動のかなり大きな状態が続いている。日経平均が前日比で1,000円超も上下するのもそうだが、日中の値動きが1,000円を超えるなどというのは、数年に1度も見掛けないものだ。相場解説記事では、急拡大しているHFT(高頻度取引=ハイ・フリクエンシー・トレード)の弊害を指摘する声が出ている。HFTとは、ヘッジファンドが主に手掛ける取引手法の1つで、コンピューターによるプログラミング取引を駆使したアルゴリズム・トレードの一種だ。その中でも、とりわけ大量の超短期取引を執行して利益を得ようとする手法をHFTと呼ぶ。HFTは謎に満ちた部分が多いだけに、正体が分からないものは、すぐに悪者扱いされてしまうきらいがあるが、今回はそのHFTについて少し書いてみたい。

ヘッジファンドが主に採る戦略には大きく2種類ある。トレンド・フォロー型(順張り)とリバーサル型(逆張り)だ。HFTは超短期の取引が主体なので、逆張りでポジションを構えてじっくり我慢する時間はなく、圧倒的にトレンド・フォロー型が主流だ。つまり、「安く買って高く売る」のではなく、「高く買ってより高く売る」と「安く売ってより安く買い戻す」が戦略の骨子となる。そのため、上昇にしろ下落にしろ、相場が動き出すと一斉に順張りトレードが入り、時に相場の動きを加速する効果を生み出してしまう。留意すべき点は、HFTの特徴は超短期取引ということだ。数時間もポジションを抱えることは、ほとんどなく、数分、数秒の単位で決済取引を行うことが多い。そのため、売ったら買うし、買ったら売る、という反対売買がすぐに入ってきていることがほとんどだ。メディアでは、相場の動きを加速する側にだけ焦点を当てているが、決済取引は相場の動きを抑制する役目も担っている点を忘れてはならない。

HFTにもさまざまな戦略があり、取引データから何らかのトレンドを判断して取引を自動執行するシステムもあれば、経済指標の数字をコンピューターがが読み取り、売り買いを自動的に判断するシステムもある。また、ニュース記事のヘッドラインや、最近ではツイッターの内容を読み取って自動執行するHFTもある。先日、米AP通信の公式ツイッターがハッカーに乗っ取られ、ホワイトハウスが爆破されオバマ大統領がけがをした、と流れて米株式市場が一時急落した。これも、自動化されたHFTなどの高速取引が引き金を引いたとされている。もちろん、こういったHFTシステムも、プログラミングするのはトレーダーでありプログラマーという人間だ。彼らの相場に対するノウハウや投資アイデア、投資戦略などが注ぎ込まれたプログラムが、優劣を競ってマーケットで戦っている。マーケット時間中はトレーダー兼プログラマーが動向を監視しているが、彼らが手動で取引を行うことはほとんどなく、一度走り始めたプログラムは、疲れも見せず、眠らず、何も食べず、文句も言わず、トイレにも行かず、ただひたすら大量の取引を自動執行して利益を追求しているのだ。

ここまで読んだだけでも、生身の人間がHFTと全く同じ土俵で戦うのはいささか無謀だということが理解できるだろう。人間がまばたきしている間に、HFTは数十、数百もの取引を執行するのだから、単純に速度競争するのは賢い手法とはいえない。一方、HFTはポジションをほとんど持ち越さないことが基本なので、比較的速やかに反対売買を執行してくる。HFTに文句をいうのではなく、HFTにより増加した流動性を生かしつつ、どうやってHFTのクセを自分のために「活用」できるかを考えた方が、投資家として賢い選択肢だろう。

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