取材の現場から TPPの米攻勢に余裕の自動車業界 輸入車ディーラーの負担は軽減されず

セクター 取材の現場から 連載


参院選に向けて自民党は農業対策を加速。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への反発を抑えるため、5,000億円の交付金制度の導入などを検討している。その割りを食っているのが自動車だ。政府は自動車分野を米国との交渉の“生贄(いけにえ)”に差し出し、農業の「聖域」維持の材料にしようとしている。

日本には自動車関連の関税はない。あるのはシート用の革製品ぐらいで、ほかはゼロだ。米国は乗用車が2.5%、トラックには25%もの関税が掛けられる。明らかな不平等だが、米自動車業界はTPPに反発。米国は自動車関税を維持する構えだが、日本政府もそれを了承していると伝えられる。

それだけではない。日本側から率先して、輸入車優遇策を提示。PHP(輸入自動車特別取扱)制度の緩和を早々に提示している。PHPは、型式指定を取っていない輸入車の優遇措置。輸入台数2,000台以下なら、サンプル車両の提出免除や、書類の軽減など手続きを簡便化している。自動車摩擦で外圧が加えられていた1886年に、米国の要請に応える形で導入した特例だ。これを5,000台に緩和するという。

しかし、自動車工業会の関係者は、「痛くも痒くもない。PHP制度が導入されて30年近くなるが、2,000台を超えたクルマはないから、5,000台に引き上げても、何の変化も起きない」とささやく。PHPはVWのゴルフとかフォードのエクスプローラーという車種単位ではなく、型式ごとなので、台数は小さくなる。だから、台数制限の引き上げは実は意味がない。

PHPは輸入車ディーラーに評判がよくない。型式指定を取ったクルマは、陸運局でナンバープレートの交付を受けられるが、PHPの輸入車は自動車検査登録事務所で1台ごと検査を受けねばナンバーを得られない。外車ディーラーにとっては負担でしかない。

そもそも日本の自動車メーカーは、米国の現地生産化が進んでいるので、アメリカの関税撤廃への関心は低い。TPPにおいては、乗用車関税83%のベトナムや同35%のマレーシアなど、新興国の関税軽減を期待している。

ところが、自動車業界はこうしたことは口にしない。「むしろ農業の犠牲になっているという世論が広まる方が何かと有利」だと考えているのだ。

その一方で、輸入車ディーラーの負担は軽減されない。サーラコーポレーション(2734)、 サンオータス(7623・JQ)、ファミリー(8298・JQ)、ケーユーホールディングス (9856・2部)といった輸入車販売会社は、米国によるPHP手続き緩和という外圧を期待するしかない。

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