特報 サイバーステップ 有償ストックオプションを発行 行使価格3万5,000円に疑問の声

特報 連載


サイバーステップ(3810) 週足3年

サイバーステップ(3810) 週足3年

3月8日、オンラインゲームのサイバーステップ(3810・東マ)が有償ストックオプションの発行を発表した。

行使価格は3万5,000円で、ストックオプションの対象となる株数は6,000株。ストックオプション1個につき1株で、ストックオプションの単価は2,190円。

発行対象は同社およびその子会社従業員。役員には発行しない。同社の従業員数は2012年5月末時点で連結子会社も含めて135人だが、今回割り当てられるのはそのごく一部の従業員だという。

同社の発行済み株式総数は2万1,755株。6,000株増えるということは、希釈化(希薄化)割合は27・5%にもなる。第三者割当増資の場合は1割以上希釈化する場合は有利発行と見なされて株主総会決議が必要になるが、「第三者割当増資ではなくストックオプションなので有利発行にはあたらず、取締役会決議のみで足りると判断した」(同社)という。

今回のストックオプションの行使条件として設定されているのが、13年5月期で営業利益4,000万円の計上である。営業利益4,000万円が達成できなければ権利行使はできない。

サイバーステップは06年7月の上場である。上場来の業績は以下の通り。08年5月期、09年5月期と2期連続で営業利益以下が赤字となり、09年5月から継続前提の重要事象の存在を認める注記を開始。監査報告書にも記載される、いわゆる継続疑義注記よりは軽いものだが、13年11月期第2・四半期にようやくはずれたばかり。

サイバーステップの業績推移(06/5~09/5)
06/5 07/5 08/5 09/5
売上高 906 1,014 901 1,150
営業利益 394 388 △13 △280
当期純利益 241 238 △351 △392
総資産 820 1,362 1,090 875
純資産 721 1,309 832 419
自己資本比率 87.9% 96.1% 76.3% 44.5%
現預金 616 478 740 511
有利子負債 0 0 0 139
ネット現預金 617 478 740 372
1株純益 16,362.26 11,858.00 △16,594.22 △19,753.57
1株純資産 38,382.25 60,887.86 40,877.77 19,723.77
1株現預金 32,794.20 23,694.53 34,422.92 18,885.15
サイバーステップの業績推移(10/5~12/11・2Q)
10/5 11/5 12/5 12/11(2Q)
売上高 1,493 1,274 1,359 630
営業利益 271 173 55 19
当期純利益 194 92 36 △5
総資産 940 1,019 1,022 1,004
純資産 637 742 730 736
自己資本比率 62.1% 66.8% 70.1% 71.5%
現預金 666 680 742 688
有利子負債 176 176 169 159
ネット現預金 490 504 572 529
1株純益 9,846.13 4,664.73 1,794.25 △255.97
1株純資産 29,452.60 33,862.88 34,717.49 34,797.19
1株現預金 24,740.97 25,044.08 27,727.32 25,610.21
※単位:1株純益、1株純資産、1株現預金は円、それ以外は百万円

今期は上期で前期並みの営業利益を確保しているが、ヒットに恵まれれば天国、外れれば地獄というゲームの世界では、「単純に×2とはいかない」というのが会社側の言い分で、「通期で4,000万円の営業利益計上というハードルは決して低くはない」という。

業績はいまひとつだが実質無借金で自己資本比率はけっこう高い。

それでは3万5,000円という行使価格はどうなのかというと、3月8日の同社株式の終値は8万500円。3万5,000円はそのわずか43%。5割以上のディープディスカウントということになるのだが、株価がこの水準になったのはつい最近のことだ。

2月20日から大した材料もないのに急騰を始め、2月27日まで6営業日連続でストップ高が続き、2月19日の終値が3万9,400円だったのに、2月27日の終値は10万3,000円に達した。

だが、お祭りもここまで。翌日の2月28日からは下がり始め、3月8日終値は8万500円だったが、12日10時50分現在では6万1,500円である。有償ストックオプションが買い材料になるとは考えにくく、一連の急騰とその後の急落は事前に何らかの誤った情報が流れた可能性を示唆しているようにも見える。

有償ストックオプションはヤフーやソフトバンクなどで採用されているのだが、通常は現在の株価よりも高い行使価格にする。そうしないとインセンティブの意味を成さないからで、発行条件も業績面でのハードルをかなり高く設定する。

「簡単に達成できそうな業績を発行条件にし、希釈化割合も高いのに有利発行ではないという判断はおかしい」という声が証券界から出ているのは事実だ。同社株の6カ月平均は3万8,901円で、3万5,000円という行使価格はそれと比較しても1割のディスカウント。平均を2月20日以降の株価急騰が多少引き上げているにしても、「第三者割当なら1割ディスカウントで有利発行と見なされるのに、ストックオプションだと有利発行にならないというのはおかしい」という意見は一理ある。

ちなみに同社では弁護士からリーガルオピニオンも取得しているそうだが、「具体的な事務所名は公開していない」という。

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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