取材の現場 本格的な株価回復は安倍政権誕生後!? 隠れたデメリットは銀行

取材の現場から 連載


マーケットが自民党・安倍晋三総裁の発言で動いた。次期総理の影響力を見事に示した形だが、その裏には、マスコミのフライング報道や、それを受けた安倍陣営のどたばたがあった。

安倍総裁は11月15日、都内の講演で「市場が織り込み済みの緩和ではなく、2―3%のインフレ目標を設定し無制限の緩和をしていく」と発言。これに伴い、円売りドル買いが進んで円安となり、連れて株式市場も反応。「安倍相場」が始まった。

さらに安倍総裁は17日の熊本市の講演で、「建設国債は日銀に全部買ってもらう」と、日銀による国債の直接引き受けを示唆。この発言が、「日銀の政治家からの独立性を侵すものだ」と物議を呼んだ。白川総裁はマスコミの取材に、「IMF(国際通貨基金)が(指摘する)中央銀行が行ってはならない項目の最上位」と述べ、国債引き受けに反対した。〝安倍総理〟による日銀の金融政策への介入は認められないというわけだ。

ところが安倍陣営は、マスコミが報じる「安倍発言」は誤報だと言う。熊本での安倍氏の発言を正確に記せば、「建設国債、これはできれば日銀に全部買ってもらうという買いオペをしてもらうことによって、新しいマネーが強制的に市場に出ていく」というもので、日銀引き受けではなく、あくまで日常行われている買いオペに触れただけ。それをマスコミが日銀引き受けにすり替えている――と水面下でメディアに抗議を行っている。

日銀の独立性を侵すうんぬんという論議についても、「安倍氏は野党の総裁であり、解散しているから国会議員ですらない。にもかかわらず、選挙前に特定政党、特定候補者の政策を取り上げて批判するのはマスコミのルール違反だ」と訂正を求めている。

マスコミは訂正記事を出すことはないが、あらためて安倍総裁の真意を報じることになりそうだ。それに伴い、あらためて「安倍発言」がマスコミを通じてマーケットに伝えられることになる。

安倍陣営はマスコミ報道には腹を立てているが、マーケットの反応には「安倍の金融政策がマーケットに理解された。この政策を行えば景気が回復すると市場は評価したのだ」と自画自賛している。

ある安倍ブレーンは、「実は、選挙後に株価が上がると踏んでいたが、さすがに市場関係者は頭がいい。先読みして一足早く反応したのだ。だから、投票日の12月16日まで市況は上がり、選挙後には確定売りでいったん下がるだろう。が、その後に安倍政権が誕生すれば、本格的な株価回復になるに違いない」と能天気に語っている。

ゼリア新薬(4559) 日足

ゼリア新薬(4559) 日足

安倍総裁本人は、日銀の国債引き受けについては、今回の反応に懲りて、積極的な発言は差し控えるようだが、その代わり、日銀人事による金融緩和推進を唱える方針だという。3月に2人の副総裁、4月に総裁が任期を迎える。ここで、安倍金融緩和政策に賛成する人材を後任に登用。これにより日銀の金融政策決定会合で、無制限の金融緩和と2―3%のインフレターゲットという安倍金融政策を成し遂げる。これなら日銀の独立性を侵すものではない。これでデフレを解消。景気は回復し、株価も上昇する。こうして景気は回復し、株価も上昇する――。
このシナリオを抱く安倍総裁の関連銘柄というと、安倍氏の復活を成し遂げた大腸炎薬「アサコール」を扱うゼリア新薬工業(4559)が真っ先に上げられるが、本人がかつて勤めていた神戸製鋼(5406)、夫人の実家の森永製菓(2201)、地元下関に本社を置く長府製作所(5946)や林兼産業(2286)、工場があるマルハニチロ(1334)といったあたりも。

ただ、安倍氏の金融緩和政策には専門家の間から懸念の声も上がっている。何より国債価格の下落、長期金利上昇という副作用が避けられない。安倍陣営では、「副作用を超える経済効果がある。デフレ解消のためには小さな影響だ」とあくまで強気だ。が、もし裏目に出た場合には、国債を保有する銀行にとっては、破たんも避けられないほどの大きなダメージとなる。

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