取材の現場から 的中!ホンダ社長交代 新社長はホンダでは珍しいゼネラリスト

取材の現場から 連載


新体制は出足快調で始動へ

2月9日付の本欄で、ホンダ(7267)の社長交代の可能性に触れたが、23日に正式に伊東孝伸社長は退任を表明した。退任の理由は「品質問題」。具体的には日米でのリコール問題だ。今回の人事では、“腹心”として伊東社長を支えてきた野中俊彦取締役も退任し、ホンダエンジニアリング社長として転出することになった。引責辞任と言って間違いない。

「しかし、退任会見は異例でした。冒頭、伊東社長は自らの社長としての実績をとうとうと述べていました。確かに、品質問題がなければ中興の祖として歴史に残ったかもしれない。いくつもの成果も挙げています。本人も、こんな形の社長交代には忸怩(じくじ)たる思いがあるのでしょう」(自動車担当記者)

ホンダ(7267) 週足

ホンダ(7267) 週足

確かに伊東社長は、リーマン・ショックや震災を乗り越え、業績を伸ばした。それだけでなく、F1再参戦やホンダジェットの初飛行、ヒット車種Nシリーズの投入など、確たる成果を残している。しかし、2012年に打ち出した中期計画で、全世界で四輪車を600万台販売するとし、この目標値に縛られ、開発や品質管理がおろそかになったと指摘されている。

さて、後継社長に就任するのが八郷隆弘氏。まだ取締役ではなく、昨年4月に常務執行役員になったばかりの人物。下馬評では、初代フィットの開発責任者だった松本宜之常務執行役員や、品質改革担当役員の福尾幸一専務執行役員の名も挙がっていたが、55歳と若く、ノーマークだった八郷氏が指名された。

八郷氏の経歴を見ると、開発から購買、生産、さらに欧州や中国子会社の経営などを歴任しており、ホンダでは珍しいゼネラリスト。また、ホンダでは、開発子会社の本田技術研究所の社長を務めることが社長就任の登竜門とされてきたが、その経歴はない。その意味では伊東社長は、トップ人事の慣例を見直すという改革を最後に行ったともいえる。

いずれにせよホンダは、人事刷新で出直しを図ることになるが、品質問題は簡単に改善できるものではない。簡単に出来るのなら、伊東社長がやってしまっていたはずだ。ここが八郷ホンダの最初のハードルとなる。

ただラッキーな環境にもある。品質問題によって14年度に投入予定の新車投入が後送りされ、15年度の国内販売ではタマが豊富だ。3月にはステップワゴンも出るし、4月には軽の新型スポーツカー「S660」も出る見通し。

取りあえずは出足快調で新体制は始動する。その中、いかに「技術のホンダ」を取り戻すかだ。

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