特報 ライツオファリング発行規制の効果てきめん

特報 連載


今年に入ってサイバーステップのみ

2月16日からサイバーステップ(3810・東マ)の新株予約権の取引が始まった。最終売買日は4月3日だ。

昨年秋、債務超過会社と2期連続の経常赤字会社はライツオファリングの発行が出来ないという規制が入ったわけだが、その効果はてきめん、発行は激減。今年は1月13日公表のサイバーステップ以降に事例はない。

昨年秋に導入された規制によって、証券会社の引き受けが付かないノンコミットメント型の場合は、株主総会決議が必要になった。過去の事例では引き受けが付く方が例外的だから、当然総会決議ということになる。

サイバーステップの場合もノンコミットメント型なので、2月3日の臨時株主総会で決議を採り、賛成議決権6,426個、反対議決権663個、86.65%の賛成で可決している。

もっとも、総議決権数は2万2984個なので、権利行使率はわずか30%ということになる。定時総会なら大体6-7割の株主は委任状を出すなどして議決権行使をするので、いかに株主が無関心かよく分かる。

規制導入後の1号案件・山喜もノンコミットメント型だったので臨時株主総会決議を採ったが、賛成割合は98.94%。権利行使した議決権総数は4万5,117個。この会社の総議決権数は7万5,329個なので、権利行使率は59%。定時総会の平均的な行使率に比べれば低いが、それでもサイバーステップよりはかなりマシ。

総会決議の権利行使率が何と相関性があるのかは、今後の研究課題にするとして、次なる関心は予約権の方の権利行使率に移る。サイバーステップの権利行使価格のディスカウント率は48%と、5割を切っている。過去の事例では権利行使率とディスカウント率には明らかに相関関係がある。下の集計表をご覧いただきたい。ディスカウント率が5割を割るとたちまち権利行使率が落ちることが分かる。

山喜は2月17日に権利行使期間が終了、翌18日に公表された結果によると、権利行使率は91.56%という高い水準になった。

山喜の権利行使価格は、ディスカウント率が53.7%。5割は超えているが、6割、7割という事例から比べればかなり控え目。それでも9割以上になった。

このため、サイバーステップの場合はどのくらいの行使率を獲得できるのか興味深いが、何しろ予約権の売買の最終日がまだ1カ月以上先の4月3日。権利行使期間は4月10日までなので、結果公表まではまだしばらく時間がある。

発行発表後の株価も、規制導入に動いた市場関係者や専門家が問題視する点と言える。何しろ権利行使率を上げるため、権利行使価格はとんでもないディスカウントプライスに設定される。そして発行実施の公表後は、その価格めがけて一気に株価が下がっていく。株主は権利行使して平均取得単価を下げざるを得なくなるので、権利行使価格を安く設定すること自体が、株主への強圧性を伴うものだというわけだ。

再び表に戻っていただきたい。確かにいったんライツオファリングを発行すると株価はなかなか戻らない。

日医工、アジアグロースキャピタルは年初から23%、アルメディオは41%上昇し、ライツオファリング実施公表時点の株価を超えているが、これまでにライツオファリングの実施を公表した全29銘柄中、公表直前の株価を現在の株価が超えている銘柄は7銘柄しかない。

権利行使率を上げるためにディープディスカウントが避けられないというのなら、やはり業績を上げ、いったん下がった株価を上げてみせることしか株主に報いる方法はないということだろう。

ライツ・オファリングの実施事例

ライツ・オファリングの実施事例(クリックで拡大)

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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