取材の現場から 日銀の物価指数統計で読む 原油安メリットの行方

取材の現場から 連載


粗利稼ぎ絶好のタイミング

主な石油関連製品の物価指数推移

主な石油関連製品の物価指数推移

原油安で物価上昇率が伸び悩んでいると日銀総裁がこぼしていたが、確かにガソリン価格は下がっているし、ナフサの価格も下がっている。それなのに、物価が下がっているという実感はあまりしない。もしかすると、メーカーが値下げを手控えているのかもしれない――。

石油を原料とする製品が今、値下がりしていないのであれば、そのメーカーがもうけている可能性は高い。日銀の物価指数統計で、いくつかの製品を見てみよう。

■カーボンブラック

まず、製造コストの7割が原油燃料費という「カーボンブラック」。ゴムの補強材として主に使われ、インキや乾電池、IT機器用タッチパネルにも使われている素材だが、物価指数のデータを見ると、原油価格が下がる前の昨年6月以降、横ばいが続いていた。1月になり、やっと5ポイント下がった。値下がりまで半年かかっている。ということは、ここ数カ月はそこそこもうけたのではないかとみえる。

カーボンブラックの製造メーカーには、タイヤ用で国内首位の東海カーボン(5301)や三菱化学(三菱ケミカルHD・4188)、新日鉄住金(5401)の孫会社にあたる新日化カーボンなどがある。

■ABS樹脂

続いて、プラスチック素材として最も汎用性の高い「ABS樹脂」。原油高になると値上げしているので、原油安なら値下げするはず。だが、物価指数を見ると7月からむしろ値を上げ、12月になってやっと値下がりしている。

ABS樹脂の主なメーカーとしては、東レ(3402)電気化学工業(4061)が上げられる。

■雨どい

続いては、プラスチック製品の「雨どい」。物価指数を見ると、原油安が進む中、横ばいで推移し、1月には6ポイント上昇。あまり値動きのない製品だが、昨年初めからじわじわと上昇し、1月にポンと伸びた感じの値動きだ。

雨どいメーカーとしては、プラスチック加工大手のタキロン(4215)や、前出ABS樹脂メーカーの電気化学工業、三菱樹脂(三菱ケミカルHD)、積水化学工業(4204)などがある。

■発泡プラスチック

もう一つ、「発泡プラスチック」を見てみよう。いわゆる発泡スチロールなどの素材や加工製品だ。こちらは1月になっても横ばいを続けている。メーカーとしては、首位の積水化成品工業(4228)JSP(7942)カネカ(4118)アキレス(5142)といったところがある。

石油安の影響について旭化成(3407)は決算会見で、「原油安は製品価格への影響があるが、全体ではプラスに働く」とコメント。値下げを強いられるが、原料安のメリットの方が大きいと説明している。前記の企業は、自社製品の値下げはせず、一方でナフサなど原料価格は下がっているので、それなりにもうかっているとみていいのではないか。

「政府は物価上昇を公約に掲げており、消費増税のときも下請けに値下げさせないよう目を光らせていた。だから今回の原油安でも、なかなか取引先に値下げ要請しづらい雰囲気がある」(某メーカー)

確かに、トヨタ(7203)は下請けへの値下げを見送り、さらに新日鉄住金との鋼板価格交渉も横ばいで決着。産業界では値下げをはばかる雰囲気が出ている。

原油安による値下げが広がらないことは、庶民にとっては厳しいが、企業にとっては、粗利稼ぎの絶好のタイミングになっているのではないだろうか。(本紙2月23日付14面)

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