特報 ファナックにサードポイント登場 求めるのは自社株買い?

特報 連載


潤沢資金は8,000億円

アクティビストファンドとして知られるサードポイントが、工作機械用NC装置世界首位のファナック(6954)に株付けしていることが判明して1週間。この間、祭日を挟んだ4営業日での株価上昇率は1割程度にとどまっている。

ファナック(6954) 日足

ファナック(6954) 日足

売買高も、サードポイントによる株付けの事実が報道された翌日の2月10日は、通常のほぼ3倍の売買高になったが、それ以降は通常のペースを取り戻している。市場の反応は限定的といったところか。

ファナックは圧倒的な技術力を誇るグローバルカンパニーでありながら、かなり異色のスーパーカンパニーとしても有名だ。何しろ外国人持ち株比率が5割を超え、上位株主は軒並み外資系金融機関のカストディ口座だというのに、会社四季報の取材も受けなければ、アナリストのインタビューも拒否。

メディアの取材も受けず、会社のHPにも過去3期分の短信しか載せず、有価証券報告書はEDINET頼み。プレスリリースはめったに出さない、というか出すような展開にならないということなのか、業績修正と配当決定のリリースのみ。

というのも、期初の業績予想は上期予想のみで通期予想は中間決算発表時。配当は予想を出さず決定のみ。

それでもPBR(株価純資産倍率)が1倍を割ったことはなく、基本的に3倍に近い2倍。PERも高水準と、市場での人気は高い。

そんな偉大なる引きこもり企業に異変が生じたのは2013年秋。同社を世界トップ企業に育て、オーナーではないのに同族支配を強めようとした稲葉清右衛門元会長が更迭された。この更迭劇の一部始終は当時、週刊東洋経済が報じ、ほかのメディアの追随はなかったが、株価は静かに反応。1万5,000-1万6,000円前後だった株価の水準が1,000-2,000円程度切り上がった。

この時期は、14年3月期の業績が2年連続で減収減益となる見通しが立ち始めていた時期。株価の上昇材料は稲葉氏更迭以外にない。

以来、短信の掲載年数は過去5期に拡大、決算説明会こそ開催しないが、パワーポイントで決算説明資料を掲載するようにもなった。

取引所や主幹事証券からIR(投資家向け広報)の重要性をとことんたたきこまれている最近の新規上場会社と比較すれば、これでもまだ上場会社の開示水準としては消極的だが、以前との比較で言えば劇的な変化だ。

そのファナック、とてつもない金持ち企業としても有名なので、バランスシートを分析してみたところ、うわさにたがわぬ金持ちぶりだった。

現預金は常に年商を上回り、近年では1.8倍くらいになっている。もちろん無借金で自己資本比率は8割台後半。9割を超えていた時期もある。

世界首位の座を守っているくらいなので、必要な設備投資はちゃんとしているが、何しろ現預金の残高が大き過ぎるので、必要な投資をし、配当性向3割の配当を実施しても、現預金残高は増える一方だ。

サードポイントによる株付けが日本で報道されたのは2月9日朝。ウォールストリートジャーナルなどがニューヨークで報じた情報が最初だ。

サードポイントはソニーやIHI、ソフトバンクの株も保有しているが、いずれもカストディ名義での保有なので、大量保有報告書で保有株数を確認することはできないが、ソニーに関しては7%と公言していた。

ファナックに関しては今のところ保有株数は報道されていない。

ファナック早速、1,000億円の投資計画があることを日経のインタビューに答える形で明らかにしている。こんなことは稲葉氏更迭以前では考えられなかったことだ。

ただ、8,000億円もある現預金のうちの1,000億円。それも一気に投じるわけではないので、その間にも現預金は積み上がってしまうだろう。

サードポイントは「経営には問題がない」と言っているそうで、自己株の取得を求めているとされる。

ソニーにはエンタメ部門の売却を迫り、IHIには不動産部門の分離を提案するなど、企業価値向上に向けた「助言」を行ってきたサードポイントだが、さすがにファナック相手では自己株取得くらいしか言うことがなかったということか。

配当は着地の純益のきっちり3割をここ数年出している。今期の純益予想は前年比1.7倍。しかも過去最高。配当をもらったら高値で売り抜けてさっさと撤退ということも考えられる。

そうだとしても、株主で居る間に、情報開示レベルのさらなる向上を現経営陣に実行させてから撤退してもらえるとありがたいと思う次第だ。(本紙2月18日付12面)

ファナックの業績推移と株価指標

ファナックの業績推移と株価指標(クリックで拡大)

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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