取材の現場から メール便廃止問題

取材の現場から 連載


実はヤマト、日本郵政ともにプラス?

ヤマト運輸(ヤマトHD・9064)が、3月末でメール便を廃止すると発表した。メール便に「信書」を入れると、利用者が法律違反に問われる恐れがあるためだという。

信書とは簡単に言えば「手紙」のことだが、その定義は難解だ。例えば、履歴書を企業に送るのは信書に該当するので、メール便は使えないが、企業が不採用者に履歴書を送り返す場合は信書に該当しないので、メール便でもOK。また、冷蔵庫にラブレターを貼って送ると、その冷蔵庫は信書になる。

ヤマトHD(9064) 週足

ヤマトHD(9064) 週足

このように分かりづらいため、日常的に信書違反は行われている。例えばフジテレビの番組で、お笑い芸人の母親が息子あての荷物に手紙を入れていたエピソードが紹介された。総務省はこれを「信書の送達に当たる」と判定したが、告発はしなかった。

しかし、埼玉県庁の職員が住民あてに文書をメール便で送ったケースでは、県と職員、ヤマトとその社員がそれぞれ書類送検された。信書違反で警察が動いた事例は2006年以降に約80件もあり、ヤマトのメール便で8件あったという。

これを防ぐためにヤマトは、メール便の利用者への事前確認などを徹底した。しかし、そもそも信書の定義が曖昧(あいまい)だから、むしろ現場が混乱してしまい、コストも掛かるようになったという。

そこでヤマトは13年12月に総務省の情報通信審議会・郵政政策部会に意見書を提出。信書の定義を分かりやすくするよう求めた。ところが、同部会はこれを受け入れなかった。「政府としても、郵政の上場を考えれば、商売敵のヤマトが有利になる政策をとるわけにはいかなかったのだろう」ともっぱらみられている。

こうした経緯を経て、メール便廃止をヤマトは判断した。規制改革を唱え続けてきたヤマトにとって、今回の判断は敗北を意味する。しかし、利用者が“人質”に捕られている以上、この決断は止むなしということのようだ。

しかし必ずしもこの判断、ヤマトにとってマイナスではないのではないか。メール便の売上比率は9.2%と1割以下。利用数も11年から下落。ライバルの「ゆうメール」はヤマトを上回り、毎年伸ばしている。ヤマト内部では、メール便のコスト削減が経営課題となっていた。メール便に代わる新サービスの料金を高くすれば、事実上の値上げになる。そうした深謀遠慮が今回の決断にはあったのではないか。

もしそうだとすれば、ヤマトのメール便廃止は、郵政にとっても、ヤマトにとってもプラス材料と言っていいのではないか。(本紙2月16日付14面)

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