特報 エイベックス大減益はBeeTVが影響

特報 連載


「アナ雪」効果を打ち消す

2月5日、エイベックス・グループ・ホールディングス(7860)が第3四半期の決算短信を公表した。第3四半期までの累計では、売上高こそ1,203億円と、前年同期比1.2%増だったが、営業利益は31億円。実に6割減である。最終損益は角川ドワンゴ株全株を売却し、34億円の売却益が特別利益に乗っているので営業利益よりも多い35億円。ただし前年同期比で言えばこちらもほぼ半減だ。

増収になったのはまさにアナ雪効果。ディズニーの大ヒット映画「アナと雪の女王」の主題歌「Let it go」を歌ったMayJ.の所属レーベルはエイベックス・グループのリズムゾーン。

エイベックス(7860) 週足

エイベックス(7860) 週足

その上、エイベックスはウォルト・ディズニー・レコードとライセンス契約も結んでいるので、昨年はアナ雪の恩恵を想定以上に受けた。

このため、音楽事業部門の通期売上高の期初予想は587億円だったが、中間期で627億円に引き上げた。ただ、部門営業利益は51億円の期初予想を、46億円に引き下げている。利益率があまり高くないことに加え、宣伝費や販売費もかさんだからだ。

それでは営業利益の大幅な減少理由は何かというと、それはこの会社がここ数年力を入れてきた映像の有料配信サービスが不振だったことにある。

エイベックスはNTTドコモと合弁で設立したエイベックス通信放送という会社で、有料の映像配信サービス「BeeTV」を提供している。月々500円(消費税込みで540円)で2万3,000タイトルもある洋画、邦画、国内外のドラマやアニメなどが見放題というサービスで、2009年5月にサービスを開始。現在では国内最大級の動画配信サービスになっている。

当初は携帯・スマートフォン(スマホ)対応のみだったが、今ではパソコンやテレビなどにも対応している。実際に契約している筆者の友人は高く評価している。

だが、会員数は13年7月末時点の562万人でピークアウトしてしまい、その後は漸減が続き、今期中間期末(14年9月末)時点では477万人にまで減ってしまった。

嗜好(しこう)の多様化が進んだ結果、かつてのようなミリオンセラーが出なくなった音楽事業に代わり、この会社の屋台骨に育成する事業として位置づけられてきたのがこの事業。利益も高いので、成長が鈍化もしくは縮小に転じることはかなりの痛手になる。

下の業績表は上場以来のエイベックスの業績を集計したものだが、14年3月期の増収は前半で稼いだ分の貯金が効いたため。営業減益は7月のピークアウト後の影響だ。

エイベックスの業績推移

エイベックスの業績推移(クリックで拡大)

WOWOW契約データで検証

2月5日公表の第3四半期末時点では、会員数は502万人へと、久々に増加したが、これは当初1カ月間無料キャンペーンの効果だ。無料キャンペーンで集めた会員がどれだけ定着するかということになるのだが、そこで参考になりそうなのがWOWOW(4839)

WOWOWの月次加入・解約状況
加入 解約 純増 累計
2013年    
1月 38,759 60,503 △21,744 2,603,859
2月 44,830 47,314 △2,484 2,601,375
3月 74,465 44,422 30,043 2,631,418
4月 26,099 65,658 △39,559 2,591,859
5月 33,085 42,612 △9,527 2,582,332
6月 36,427 37,265 △838 2,581,494
7月 32,274 34,801 △2,527 2,578,967
8月 39,491 33,180 6,311 2,585,278
9月 48,856 31,928 16,928 2,602,206
10月 30,843 42,361 △11,518 2,590,688
11月 31,860 31,133 727 2,591,415
12月 75,672 30,860 44,812 2,636,227
2014年    
1月 36,656 53,583 △16,927 2,619,300
2月 40,633 50,025 △9,392 2,609,908
3月 71,958 33,422 38,536 2,648,444
4月 28,098 60,341 △32,243 2,616,201
5月 36,349 52,868 △16,519 2,599,682
6月 81,000 37,158 43,842 2,643,524
7月 39,059 41,964 △2,905 2,640,619
8月 42,448 39,183 3,265 2,643,884
9月 153,273 34,212 119,061 2,762,945
10月 50,326 61,036 △10,710 2,752,235
11月 35,501 42,727 △7,226 2,745,009
12月 72,421 42,355 30,066 2,775,075
2015年
1月 46,141 61,586 △15,445 2,759,730

全米オープンテニスで決勝に進出した錦織圭選手の試合を唯一、放送するのがWOWOWだったため、入会申し込みが殺到し、昨年9月の入会者数は通常月のおよそ3倍。錦織選手のゲームだけ見て、翌月以降に退会する手もあったのだが、退会者はさほど多くはなく、錦織効果で獲得した会員はほとんど逃げていないことが分かる。

ただ、これは例外だ。通常は平均3万人前後の入会者があり、7万人台にハネ上がる月があるのだが、これはいずれも音楽関連の特番の吸引力ゆえ。13年3月は安室奈美恵の20周年アニバーサリースペシャルの再放送、同年12月は矢沢永吉の武道館ライブの生中継、昨年3月はサザンオールスターズのスーパーライブ2013の再放送、そして昨年6月はTBSとのタイアップで、地上波で放送したドラマの続きという形をとったMozu、そして年末はサザンの年越しライブ中継である。

音楽番組の方は、いずれも放送翌月以降に解約が出て、中にはまるまる純増分が解約で飛んでしまっている月もある。音楽番組の視聴者は出たり入ったりに馴れているのかもしれない。

さて、それではBeeTVはなぜ会員数が漸減に転じてしまったのか。原因はまだあまり分析が進んでいないようで、昨年前半くらいまではスマホの売れ行きの停滞が原因とされていたが、9月以降その言い訳は通用しなくなった。「iPhone6」がバカ売れしたのに会員数は漸減が続いたからだ。

当初はたくさん見てお得感があったけれど、だんだん利用頻度が減っていった結果ということか。エイベックスは青山の本社を購入した際に借金をしただけで、徐々に返済が進んでおり、今は現預金残高が有利子負債残高を上回る実質無借金状態。財務は健全だが、アナ雪効果なかりせば、今期はいったいどうなっていたのか。新たな成長エンジンを見いだす必要に迫られていることは間違いない。(本紙2月12日12面)

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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