特報 丸紅の業績下方修正 エネルギー価格下落が直撃

特報 連載


IFRSで減損発生ならばショック大

1月26日、丸紅が大幅な業績予想の下方修正を公表した。売上高と営業利益は従来予想を据え置いたが、当期純利益は従来予想の2,300億円から1,200億円へとほぼ半減。従来予想は前期実績プラス7・8%増だったので、前期実績比でもほぼ半減する計算になる。

原因は総額1,600億円の減損で、税効果の戻し入れ400億円との相殺で約1,200億円の下方修正である。

1,600億円の減損の内訳は、北海の油ガス鉱区群で600億円、そのほかのガス鉱区で350億円、チリの銅事業設備で100億円、オーストラリアの石炭事業設備で50億円。加えて、2013年6月に27億ドル(当時の為替換算で2,700億円)で買収した、穀物大手ガビロンののれん減損で500億円。

まとめると、エネルギー価格の下落で1,100億円、穀物子会社の不振で500億円という内訳だ。

昨年11月6日公表の第2四半期業績では、連結売上高が前年同期比11%増の7兆1,105億円で営業利益は16%増の9,245億円。純益は18%増の1,338億円だった。食料が前期比5倍増の350億円、情報・金融・不動産で2・7倍増の129億円を稼ぎ出したことが効いた。

一方、エネルギーが横ばいでプラントが12%減、ライフスタイル・紙パルプが45%減、電力が5%減。明暗がはっきり分かれた形になっていた。

丸紅(8002) 週足

丸紅(8002) 週足

ただ、部門内での入り繰りはあり、前期比で利益が5倍になった食料は、ガビロンがフル連結になったり、輸出施設の統合で評価益が出たりといった底上げ効果があってこその大幅増益。ただ、ガビロン自体は計画未達に終わり、ガビロンが計画を達成できていれば、営業利益はあと200億円くらい乗るはずだった。

エネルギーも純益ベースで3億円の減益。ガビロンの買収、チリの銅鉱山開発、オーストラリアの鉄鉱石開発への投資が割高だったとして、昨年12月に大和証券が目標株価を800円から780円に引き下げている。

不振事業の実態はある程度市場が理解していたためか、今回の多額の減損処理決定で市場が大きく反応した形跡はない。今回、ガビロンで実施した減損500億円は、買収当時ののれん1,000億円のほぼ半額。

丸紅は住友商事とともに、商社の中ではいち早くIFRS(国際財務報告基準)に切り替えている。IFRSはのれんの償却をせず、減損が発生するときには一気に顕在化する点が、日本基準との最大の違いだ。買収から1年半が経過しているので、日本基準だったら20年償却で75億円は償却が済んでいたはず。500億円が425億円になったところでどうという違いはなかったかもしれないし、そもそも丸紅はIFRSの前は米国基準だったから、やはりのれん償却はしない会計制度だった。たらればを言っても意味がないと言われればその通りだが、のれんが大きい会社は日本基準からIFRSに切り替えると純益が底上げされる。

その半面、何かあれば一気に反動が来る。三菱商事、三井物産、伊藤忠商事の3社が、今期からIFRSに移行したため、今期から総合商社はトーメンを買収した豊田通商以外は全て会計基準がそろったことになる。

資源事業への依存度が高いのはどこも基本的に同じだ。投資額が巨額になるだけに、いったん減損の対象になると純益の下ブレ幅も巨額になってしまう。

セグメント情報は、損益項目だけでなく資産項目にも目配りしておく必要があるだろう。(本紙1月28日付12面)

丸紅の業績推移
決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期
純利益
内エネルギー 総資産 純資産 配当 配当
性向
04/3 7,905,640 78,624 58,900 34,565 29.3% 4,254,194 392,982 3 13.13%
05/3 7,936,348 86,461 61,590 41,247 38.5% 4,208,037 443,152 4 15.03%
06/3 8,686,532 143,248 101,453 73,801 36.1% 4,587,072 663,787 5 10.34%
07/3 9,554,943 165,020 193,815 119,349 26.5% 4,873,304 745,454 10 13.81%
08/3 10,631,616 200,153 216,197 147,249 26.4% 5,207,225 779,764 13 15.31%
09/3 10,462,067 234,065 200,896 111,208 46.8% 4,707,309 623,356 10 15.62%
10/3 7,965,055 118,926 166,427 95,312 39.5% 4,586,572 799,746 8.5 15.49%
11/3 9,020,468 145,774 207,217 136,541 20.7% 4,679,089 831,730 12 15.26%
12/3 10,584,393 157,315 260,983 172,125 23.8% 5,129,887 915,770 20 20.18%
13/3 10,674,395 128,423 157,254 130,143 3.5% 6,115,783 1,203,008 24 32.02%
14/3 13,633,520 157,462 236,373 210,945 17.3% 7,255,380 1,533,186 25 20.57%
15/3修正前 14,300,000 175,000 300,000 220,000 26 20.51%
15/3修正後 14,300,000 175,000 150,000 120,000 26 41.02%
※金額の単位は配当のみ円、それ以外は百万円。13年3月期以降IFRS、それ以前は米国基準。
丸紅以外の総合商社6社の業績比
社名 決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期
純利益
内エネルギー 総資産 純資産 配当 配当性向
三菱商事 14/3 21,950,137 198,467 432,233 444,793 33.3% 15,219,699 5,204,026 68 25.19%
15/3計 400,000 70 28.45%
伊藤忠商事 14/3 14,566,820 279,094 373,808 310,267 5.4% 7,848,440 2,522,823 46 23.43%
15/3計 280,000 438,000 300,000 46 24.53%
三井物産 14/3 11,165,660 275,216 453,732 422,161 46.7% 11,001,264 3,868,066 59 25.45%
15/3計 560,000 380,000 64 30.19%
住友商事 14/3 8,146,184 171,750 304,246 223,064 10.4% 8,668,738 2,540,184 47 26.32%
15/3計 62,000 10,000 50 623.44%
豊田通商 14/3 7,743,237 161,321 163,438 73,034 4,072,728 1,156,080 50 24.04%
15/3計 8,600,000 162,000 166,000 76,000 56 25.91%
双日 14/3 4,046,577 23,694 44,033 27,250 34.0% 2,220,236 492,959 4 18.37%
15/3計 40,000 55,000 33,000 5 18.95%
※金額の単位は配当のみ円。それ以外は百万円。豊田通商は日本基準。三菱商事、伊藤忠商事、三井物産の14年3月期は米国基準。それ以外はすべてIFRS。
著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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