特報 京王ズホールディングス 特設市場注意銘柄の指定から満3年

特報 連載


上場維持をかけて30日に3度目の改善報告書提出へ

3年前、創業者佐々木英輔氏の会社私物化が原因で、特設市場注意銘柄に指定された京王ズホールディングス(3731・東マ)が、2度目の決算修正を1月15日に発表した。

今回の修正対象期間は2011年10月期から直近の15年3月期第3四半期(14年7月末時点)まで。3年前には06年10月期から11年10月期第3四半期(11年7月末時点)の修正を行っており、今回の修正期間はその直後から直近までということになる。

京王ズ(3731) 週足

京王ズ(3731) 週足

3年前も、過去5期分の修正を行っているが、これはEDINETの掲載期間が最大5年間だからで、実際には上場前から不正は続いており、結局のところ04年の上場以来公表してきたすべての決算が不正なものだったことになる。

今回の決算修正の主要要因も佐々木氏への不正な資金流出。佐々木氏は3年前の不正発覚時に代表を退いたものの、その後も資産管理会社保有分も含め、3割弱の株式を保有する筆頭株主であり続け、会社にも13年暮れまで出社を続け、昨年夏まで多額の報酬を受け取り続けた。

その手口や金額は後述するとして、佐々木氏が出社しなくなったのは1年前の昨年1月以降。ちょうどそのころ、何があったか。経営するソフトバンクショップの上位代理店を、光通信からノジマへ乗り換えようとして、ノジマへの第三者割当増資を発表したのが昨年2月末。この増資が実施されると、ノジマが5割超を握る筆頭株主となるほどの、高い希薄化を伴う増資だった。

1月はノジマとの交渉がなされていたと思われる時期だ。光通信は下位代理店を失いたくないので、当然、増資差し止めに動いた。少々意外だったのは、佐々木氏に話が通っていなかったらしく、佐々木氏も光通信に同調したという点だった。

結局ノジマがあっさり下りてしまい、光通信はその後、佐々木氏から全株を買い取るためにTOB(株式公開買い付け)を実施。昨年5月に8割弱を握る圧倒的な支配株主になった。

今回の決算修正は、光通信が進駐軍を入れたらたまたま見つかった、というものではなく、特設市場注意銘柄解除のために必要な膿出しのためのものと言っていい。

京王ズは3年前に佐々木氏が社長を退いた後、かつて京王ズで常務まで昇格した横江実氏を呼び戻して社長に据えている。社外監査役2名も加え、新体制で再スタートを切ったかに見えたが、横江社長とプロパー役員2名の合計3名が、佐々木氏への不正な資金流出の窓口になってしまった。

具体的な手口はというと、横江氏ら3人の役員が別の口座を開設。その口座に、正規の役員報酬のうち3分の2もの金額を移すことで、佐々木氏に資金を流していた。その額は2年間で、3人分合計で1億円を超える。

その不正送金を支えたのが、会社に残っていた佐々木氏の側近だった旧役員。東証は佐々木氏への不正な資金流出が継続していることを把握していたため、特設市場注意銘柄の指定を解除せず、今年1月19日、指定から満3年を迎えた。

特設市場注意銘柄に指定されて、3年以内に解除を受けられなければ上場廃止基準に抵触し、市場からの退場を余儀なくされる。

京王ズは1月30日にガバナンスの改善策を公表するとしており、この日に東証に3度目となる改善報告書を提出するのだろう。上場廃止がかかった審査になるので、東証も慎重になることは間違いない。結果は早くても3カ月以上先になるはずだ。

光通信はもともと実質的に佐々木氏に次ぐ第2位株主で、以前から株主提案で自社推薦の役員を送り込もうとしてきたものの実現しなかった。ある程度この会社の内情は理解していたはずで、昨年夏に支配株主になって以降、外部機関を入れて洗い出した結果を、社内調査委員会で整理してもらい、今回の決算修正と相成った。

下の比較表の通り、修正額自体は大した金額ではない。役員報酬として処理されながら佐々木氏に流出していた分を否認した結果、費用が減って営業利益が増え、今期第1四半期で処理していた佐々木氏に対する債権の貸倒引当金計上時期を、過去にさかのぼった結果、15年3月期第3四半期は、純益が2億1,600万円の赤字から、5,600万円の赤字へと大幅に改善している。

今期の通期業績予想は、昨年11月に下方修正した数字から変えておらず、2億8,500万円の最終赤字予想だが、第3四半期までで1億6,000万円も改善しているので、赤字幅も縮小して着地する可能性がある。

むしろ東証にガバナンスの正常化を認めさせる方が大変であることは間違いない。光通信が佐々木氏から株を買い取るにあたり、佐々木氏の責任を追求しない密約を結んでいながら開示していなかったこともこのほど明るみに出た。そうでもしなければ佐々木氏は売却に応じなかったのだろうが、光通信自身にもかなりの覚悟が必要になる。

それにしても理解に苦しむのは、佐々木氏への資金流出を手助けした横江氏ら3人のリスク感覚だ。自らが刑事責任を問われかねないことを理解していなかったのか。

実際に刑事責任を問われるのかどうかは現時点では不明だが、光通信が密約を結んでいても、その密約はほかの株主を拘束するわけではないので、ほかの株主は株主代表訴訟を起こせる。本件は世のサラリーマン役員が参考にすべき事例になるはずだ。

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著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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