特報 サイバーステップがライツオファリング 発行規制導入後2件目の事例に

特報 連載


調達資金はゲームの開発費用など

1月9日の取引終了後、サイバーステップ(3810・東マ)が、ライツオファリングの実施を公表した。

サイバーステップはPCオンラインゲームの大手で、自社開発したゲームをオンラインゲームサイトに売ってロイヤルティー収入を得るビジネスと、自社でオンラインゲームサイトを運営し、ユーザーに直接ゲームを売るビジネスの2本立て。

自社サイト運営は上場直前に開始したため、上場当初はロイヤルティー収入が主な収益源だったが、直近の2014年5月期実績では約14億円の連結売上高のうち、ロイヤルティー収入はわずか1億5,500万円。売上高の大半は自社サイト運営による課金収入だ。

ライツオファリング実施公表と同時に発表した15年5月期中間時点の業績は、売上高こそ前年比19%増の7億7,800円だったが、営業損益は前期が7,400万円の黒字だったのに対し、今期は6,600万円の赤字。

前期からサービス拡大を目指し、海外子会社設立費用や研究開発費などが先行して発生している一方で、トップラインの伸びが費用の伸びに見合うところまで伸びていないことによる利益率低下ということらしい。

サイバーS(3810) 日足

サイバーS(3810) 日足

会社側が業績予想を開示していないので、下期がどうなるのかはわからないが、昨年12月発売の四季報新春号の営業利益予想は9,000万円(前期実績3,200万円)。増益予想ではあるが、前号比で2,000万円ほど減額している。

それではバランスシートはどうか。中間期末で総資産12億6,800万円に対し純資産は8億4,400万円。自己資本比率は62・7%と、けっこう高い。有利子負債は2億7,748万円あるが、現預金が5億3,363万円あるので、実質無借金だ。

通常、この財務体質の会社がライツオファリングを使うことはまずないのだが、ゲームという当たりはずれが大きい業種で将来性が見えにくいことや、利益の絶対額の小ささ故なのかもしれない。

また、今回この会社が実施するライツオファリングの新株予約権は、1個で1株の新株を取得できるので、希釈化率は100%。新株予約権が100%権利行使された場合の調達総額は10億1,700万円と、会社の規模の割にはかなりの額だ。純資産を上回り、総資産に迫る金額なので、これだけの規模の調達を借入で賄うのはまず不可能だろう。

公募が可能なほど収益力が高いわけでも、確たる将来性があるわけでもない。故にライツオファリングということになるのだろうが、証券会社の引き受けが付かず、ノンコミットメント型になってしまったのも、この調達規模故だろう。

満額調達できた場合の手取り金は、諸費用を差し引いてざっと9億円強。全額ゲームの開発と宣伝に充てる予定だが、このうち半分は人件費だ。

今回はライツオファリングの発行規制導入後2件目の事例となる。2期連続で経常赤字であったり債務超過だと発行できないといった基準にはひっかからないが、証券会社の引き受けが付かない。故に規制導入後第一号となった山喜同様、株主総会決議をとることによって発行が正式に決定0する。

権利行使価格は585円。実施を公表した1月9日の同社株の終値は1,125円だったので、ディスカウント率は48%。過去の発行事例の中では低い方で、ほぼ同じディスカウント率だったメガネスーパーの権利行使割合はわずか32%だった。

43・9%の小僧寿しの場合は6割を超えたが、9割以上の権利行使率を目指そうとすれば、ディスカウント率はもう少し低くないとムリだろう。

ただ、権利行使価格を低水準にすればするほど、実施公表後の株価の下落幅が大きくなり、株主の賛同を得にくくなるし、イメージも悪くなる。

規制導入後第一号の山喜は、同じくノンコミットメント型で、株主総会決議で発行が正式決定している。ディスカウント率は53%と、サイバーステップよりも若干高め。財務体質はサイバーステップよりも若干落ちる分、規模は大きい。どの程度の権利行使割合になるのか知りたいところだが、残念ながらまだ新株予約権の上場期間中。最終売買日が2月10日で権利行使期間終了は2月17日なので、結果が出るまでにはまだ1か月以上かかる。

本稿を執筆しているのが公表翌営業日の13日。始値は840円と、やはり株価は大きく下げた。

当局としては、優良会社にコミットメント型で利用してほしいところだろうが、この財務体質の会社でも引き受けが付かないとなると、ノンコミットメント型で総会決議、ディスカウント率は高いままという形で定着することになるのだろう。

ちなみに、臨時株主総会の開催予定日は2月3日で、新株予約権を割り当てる株主の確定日は2月13日。2月16日から4月3日までが新株予約権の上場期間で、権利行使期間は3月23日から4月10日まで。
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