特報 虹技の第三者委員会報告書 生真面目な日本の製造業を象徴

特報 連載


業績順調、株価は割安?

12月12日はエナリス(6079・東マ)石山ゲートウェイホールディングス(7708・JQ)、が第三者委員会報告を公表して話題になったが、この2社以外にも、クワザワ(8104・札証)虹技(5603)の2社が第三者委員会報告書を公表している。

この虹技とクワザワ、投資家でその存在を知る人はかなりマニアックであろうと思われる銘柄であり、不祥事でもなければなかなか着目する機会はない。

虹技(5603) 週足

虹技(5603) 週足

どちらも業歴も上場歴も長く、虹技は姫路の鉄鋼メーカーで1916年創業、40年法人化、52年上場。クワザワは札幌の建材・土木資材商社で51年設立、73年上場。太平洋セメントの資本が17%入っているが、虹技は純然たる独立系。

というわけで、今回は業歴、上場歴ともに勝る虹技を取り上げてみたい。

この会社、虹の技と書いて「こうぎ」と読む。創業当時から93年までは神戸鋳鉄所と名乗っており、この社名に変えたのは93年。創業77年を機に社名を変えたらしい。

メインの販売先は神戸製鋼所、メタルワン建材、岡谷鋼機、新日鐵住金、栗林商会など製鉄大手。年商は2014年3月期で186億円。事業部門は大きく分けると鋳物製造の部門と送風機などの機械や環境装置を製造している部門。前者が売上高の8割、営業利益の7割を稼ぎだしている。

第三者委員会発足のきっかけは内部監査室の調査。鉄鋼事業部で、製品の製造工程上不自然な状態にある製品在庫が多数あったこと、受注生産の製品なのに帳簿上完成品として計上されてから長期間在庫のままになっていたものが大量にあったこと、その一方で納期遅れが発生していたことなどから、仕掛品や製品を不正に計上したり、ニッケル・マグネシウム合金の在庫を過大に計上する不正が発覚したのだそうだ。

第三者委が言う鉄鋼事業部とは、鋳物製造部門のうち、この会社では保守本流ともいえるロール製品を作っている部門らしい。

こういった不正会計の場合、決算の修正は通常過去5年分だけ行う。5年分の訂正前、訂正後の数値を見比べてみると、売上高の修正はなく、営業利益以下の利益と総資産、それに純資産が修正されている。

手口は在庫評価の水増しという、最もオーソドックスな手法での粉飾だった。売上原価は期初在庫+当期製造費用-当期末在庫で計算される。売上原価を小さくすれば売上総利益は底上げされるわけで、期末在庫の金額を水増しすると売上原価を小さくできる。

文字通り粉飾の初歩の初歩の手口だったわけで、内部監査で発見し、わずかな修正のために63ページもの報告書を作成するあたりは、生真面目な日本の製造業の典型とも言えるが、逆にこの単純な手口に何年間も気付かなかったというあたりは、性善説の日本企業ならではとも言える。

この会社、90年代後半から2000年代前半までは業績不振に苦しんだ。1999年3月期、2000年3月期は連続営業赤字で、01年3月期は経常損益以下が赤字。03年3月期は最終赤字で、00年、01年、03年、04年が無配だったが、それ以降は着実に配当を実施している。

皮肉なことに、赤字が出ないので純資産が積み上がり、ROE(自己資本利益率)の計算上の分母が増えた結果、かつて20%を超えていたROEはいまや1%台。

それだけに財務はまずまず健全で、有利子負債は直近本決算の14年3月末時点で53億円あるが、EBITDA(償却前営業利益)の3.3年分とかなり少ない。

週明けの15日に公表された今上期の実績は、売上高が前期比16%増収の98億円。営業利益は82%増の4億円。通期予想は売上高が前期比8%増の210億円で営業利益は前期比1.7倍の11億円。当期純利益は前期比3倍増の5.5億円。

上期の進捗(しんちょく)を見る限り達成は可能な計画だが、本稿執筆時点の16日13時半時点の株価は211円。予想PER12.67倍、実績PBR(株価純資産倍率)0.83倍は割安なのかもしれない。

 虹技の業績推移
売上高 営業
利益
当期純利益 総資産 純資産 自己資本比率 配当 期末株価 PER PBR 配当
性向
ROE
04/3 11,673 196 93 16,560 3,370 20.4% 0.0 126 40.26 1.12 2.8%
05/3 13,709 536 869 16,258 3,955 24.3% 3.0 408 14.07 3.09 10.3% 22.0%
06/3 14,446 1,162 586 16,851 5,842 34.7% 3.0 294 15.50 1.69 15.8% 10.0%
07/3 16,417 1,813 950 18,824 6,976 34.9% 5.0 299 10.57 1.53 17.7% 13.6%
08/3 18,439 2,024 916 20,260 7,540 34.7% 6.0 150 5.49 0.72 22.0% 12.1%
09/3 18,220 1,415 697 18,835 7,723 38.2% 6.0 186 8.95 0.87 28.9% 9.0%
10/3 13,886 711 322 18,540 7,941 39.5% 3.0 135 14.06 0.62 31.3% 4.1%
11/3 16,202 1,373 615 20,141 8,345 38.2% 5.0 250 13.54 1.07 27.1% 7.4%
16,202 1,353 603 20,129 8,333 38.2% 5.0 250 13.80 1.07 27.6% 7.2%
12/3 17,540 1,094 561 20,682 8,830 39.2% 5.0 252 14.82 1.03 29.4% 6.4%
17,540 908 451 20,560 8,708 38.8% 5.0 252 18.43 1.04 36.6% 5.2%
13/3 17,245 535 284 20,439 9,380 41.2% 5.0 181 21.05 0.71 58.1% 3.0%
17,245 369 180 20,213 9,155 40.6% 5.0 181 33.09 0.73 91.4% 2.0%
14/3 18,609 704 211 21,504 9,859 40.3% 5.0 204 31.83 0.78 78.0% 2.1%
18,609 657 181 21,249 9,604 39.5% 5.0 204 37.02 0.80 90.7% 1.9%
15/3予 20,100 1,120 550 5.0 30.0%
※金額の単位は配当と株価のみ円、それ以外は百万円。PER、PBRは実績ベース。前・後は訂正前、訂正後
著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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