特報 エアバッグで揺れるタカタの懐事情 期末の純資産は1,518億円あるが…

特報 連載


トヨタ向け比率は低下していた

タカタ製エアバッグのリコール問題で、ホンダが調査リコールを全世界に広げる意向を表明した。本日は話題のタカタ(7312)の懐具合を見てみよう。

タカタと言えば、エアバッグ世界2位。創業は戦前の1933年で、もともとは織物業。救命索の製造から転じて、戦後、シートベルトやエアバッグ、チャイルドシートの生産に乗り出し、世界的にも高い評価を得ていた会社だった。

業歴の割に上場は遅く、2006年11月。四季報を見ると会社設立が04年1月になっているが、これは上場準備中に組織再編を実施したから。実質的な会社設立は、株式会社組織にした1956年である。

タカタ(7312) 週足

タカタ(7312) 週足

タカタのエアバッグは世界2位のシェアを誇るだけあって、日系自動車メーカーのみならず、米系、欧州系、アジア系に至るまで幅広く使われている。

11月6日に2015年3月期第2四半期決算を公表しているのだが、この時点で連結売上高の4割が日系、25%が米系、23%が欧州系、13%がアジア系その他という内訳になっている。

主要トップ5顧客は、1位がホンダ、2位がVW、3位がGM、4位がルノー・日産、5位がトヨタで、この5顧客で売上高の53%を占める。もっとも、上場当時は1位がホンダ、2位がGM、3位がダイムラークライスラーで、4位がトヨタ。この上位4社で売上高の4割を占めていたので、顧客勢力図はこの8年間で多少変化している。

注目すべきはトヨタの順位だ。08年から13年まではホンダに次いで2位だったのに、14年に突然5位に後退している。

このうち、大株主上位10位までに登場するのはホンダ。100万株で発行済みの1.2%の保有は上場当時から変わっていない。

本題の決算分析に入る前に、「タカタのリコール問題史」をざっとおさらいしておこう。

まず、最初に事故が発生したのは上場前の04年。ホンダ車でのエアバッグの異常破裂だったが、このときは拡大する懸念はないという判断だったらしい。

ところが、07年あたりから異常破裂の件数が増え出し、08年に始めて4,000台のリコールを実施。製品保証引当金の残高は、06年3月期103億円、07年118億円、08年124億円、09年124億円。10年に184億円に増加し、11年に一旦142億円に減り、12年が146億円。ところが13年に469億円にハネ上がる。14年3月期は若干減って462億円だったが、15年3月期第1四半期でさらに476億円を追加繰り入れしたため、11月6日公表の中間決算期末時点で引当金残高は921億円になっている。

10月20日、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が、各自動車メーカーが実施中のリコールに応じるよう、全米のタカタ製エアバッグ搭載車両474万台の所有者に呼びかけ、翌日には台数を一気に780万台に引き上げた。

ここからがタカタの懐事情の話になるのだが、タカタは追加で多額の引当金繰り入れが発生することはないという姿勢を現在まで崩していない。

タカタが米国で開催された公聴会の場で、全米へのリコールを拒否する一方、ホンダは全世界での調査リコール実施を宣言している。

タカタがやらないと言っている以上は自費でやるということだそうだが、実際にタカタに原因があると判明したら、上場の株式会社として、当然にかかった費用や損害はタカタに請求すべきスジのものだ。

さらに言えば、コトはリコール対応だけに留まらない可能性が高い。米国では既に集団訴訟の動きがあるという報道が出ている。

タカタの14年9月末時点の純資産は1,441億円。15年3月期の当期純損益の着地予想は250億円の赤字なので、期末の純資産は1,518億円という計算になるが、ここから先、一体どれだけ損失が拡大するのか全く見えない。

追加で1,000億円以上の引当金が必要になる可能性を示唆する専門家がいることも報じられているが、そもそも海外で損害賠償を求める集団訴訟をいくつも起こされたら、たかだか1,500億円程度の純資産はたちまち吹っ飛んでしまうだろう。

だからこそホンダは支援もすると言っているわけなのだが、その割にはタカタ自身が本件をどこまで深刻に受け止めているのかはよくわからない。

今中間も含め、タカタの決算説明資料に、過去、リコールの件や製品保証引当金に関する記載は登場しない。これだけの騒ぎになっているのに、今後の対応を記したリリースの公表も12月3日になってからだった。

公聴会まではリリースを出せないということだったのかもしれないが、この件、後々危機管理対応に関する代表的な事例として、教材に使われるのはまず間違いないだろう。

■タカタの業績推移
売上高 営業利益 当期
純利益
総資産 純資産 自己資本比率 配当 期末
株価
PER PBR 配当
性向
ROE
05/3 426,048 40,415 22,932 273,827 65,364 23.9% 12.5 3.6% 35.1%
06/3 465,922 38,017 16,789 317,966 102,293 32.2% 12.5 4.9% 16.4%
07/3 501,866 39,641 23,540 346,948 178,822 50.7% 30.0 4,680 14.74 2.16 9.4% 13.2%
08/3 515,857 36,732 22,878 339,010 346,948 51.6% 40.0 2,200 7.83 1.03 14.2% 6.6%
09/3 385,499 2,845 -7,319 315,352 145,379 46.0% 25.0 804 △8.99 0.45
10/3 350,914 14,656 6,942 330,040 150,789 45.5% 20.0 2,396 28.31 1.33 23.6% 4.6%
11/3 390,876 26,818 18,237 323,928 155,312 47.6% 30.0 2,380 10.85 1.28 13.7% 11.7%
12/3 382,737 13,618 11,937 329,718 161,186 48.5% 30.0 2,205 15.36 1.15 20.9% 7.4%
13/3 415,521 14,493 -21,122 385,722 154,085 39.5% 30.0 1,887 △7.43 1.03
14/3 556,998 26,275 11,144 446,745 176,888 39.3% 30.0 2,594 19.36 1.23 22.4% 6.3%
15/3予 600,000 28,000 -25,000 未定
※金額の単位は配当と株価のみ円、それ以外は百万円。PER,PBRは実績ベース。△はマイナス
著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
戻る