取材の現場から 「福祉灯油」に国の助成金 原油市況と選挙と大義

取材の現場から 連載


石油に関する小さい話と、大きい話――。

来る総選挙に向けて各党は、経済対策を公表。その中には、原油高への対応策もある。ハウス栽培農家や漁船に乗る漁師、中小企業向けの補助制度が中心だ。加えて、個人向けの灯油購入補助もラインアップに挙がっている。寒い冬を乗り切るため、低所得者を対象に灯油購入費の一部を助成したり、引換券を配布する。この制度は「福祉灯油」という。北海道や東北など寒冷地の自治体が既にやっている政策だが、今回は、これに国の交付金を付けるという。

シナネン(8132) 週足

シナネン(8132) 週足

福祉灯油への国からの交付金は、原油高が進んだ平成19、20年に行われた。今年3月も久々に小規模ながら交付が行われたが、今回は規模を拡大して、原油高騰対策という緊急経済対策の一環として行うらしい。

具体的な補助のスキームは自治体に任せる形になっているが、来年4月には統一地方選も控えているので、恐らく手厚い補助を行うのではないか、とみられている。実施されれば、灯油の売れ行きをそれなりに後押しするだろう。灯油であれば、富士興産(5009)シナネン(8132)ミツウロコグループHD(8131)といった会社にかかわる。

ただ、国の交付金はあくまで原油高対策のために行われるが、原油価格はここへきて下落している。ここのところ1バレル=100ドル前後で推移していたが、7月に100ドルを割り、今では70ドル台まで下がっている。サウジアラビアが生産調整しないことが理由で、「サウジは米国との関係がぎくしゃくしているので、シェールつぶしに動いているのではないか」との観測も出ている。確かに昨年サウジは、国連安保理の非常任理事国を辞退した。シリアへの軍事介入を渋り、イランとの関係改善に動き始めた米国への意趣返しだとみられていた。

しかし、別の見方もある。

「最終的にサウジと米国は協調関係を崩さない。今回の原油価格の下落は、エネルギー政策で国力を伸ばしているロシアへのけん制ではないか。米国はウクライナ問題でロシアに手を焼き、サウジからすれば、イランのバックにいるロシアの力を削ぐことは意味がある。とすれば、原油価格は70ドル台に“政治的”に維持される可能性がある。70ドルならシェールオイルはぎりぎりやっていける」(JETRO関係者)。

原油価格の高騰が収まれば、福祉灯油などへの交付金は大義を失う。「大義なき選挙」と称されているが、バラマキの経済対策には、元から大義などないのだが――。

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