特報 カシオは業績連動型の配当方針 「業績に応じ上方修正の必要性を検討」(21日付リリース)

特報 連載


年30円配ならリーマン・ショック直前水準並み

連休突入前日の11月21日の日経朝刊で増配の可能性を報じられたカシオ計算機(6952)。朝一番で「当社が公表したものではない」という決まり文句が書かれたリリースが出たが、午後に入ってジリジリと株価は上昇。この日の終値は前日の終値1,680円よりも48円高い1,728円。休み明けの本日11月25日は、午前11時30分時点で1,741円に上昇している。

カシオ(6952) 週足

カシオ(6952) 週足

ただ、リリースには「今期の業績に応じ上方修正の必要性を検討している」という一言が入っている。

確かに10月30日公表の上期実績を見ると、業績予想の上方修正の可能性は十分にある。業績予想が上方修正されるなら、業績連動型の配当方針である以上、配当の上方修正もあり得る。

カシオと言えば、2007年のカシオ・ショックを思い出す読者はおられよう。08年3月期の業績予想を07年10月4日に下方修正すると、その後の15日間で一気に3割も株価が下がった。このときは売上高を6,500億円から6,100億円に、営業利益を530億円から370億円に、当期純利益を280億円から170億円に引き下げるというもので、黒字予想が赤字になるわけではなかった。

だが、この時は株価にかなりの期待値が盛り込まれていた様で、一気に下がった。下方修正の主要原因が、それまでカシオの成長を支えてきた携帯電話向けのデバイス事業だったこともあった様だ。

携帯電話向けのデバイスで大きく業績を伸ばしながら、スマホへの世代交代でビジネスそのものが消滅してしまった電子機器メーカーは少なくない。カシオも売上高は当時の半分まで減った時期がある。

それでは今のカシオは何で稼いでいるのかというと、ずばり、同社の看板商品・G-SHOCKが売れているのである。それも海外でだ。

現在のカシオは「コンシューマ」、「システム」、「その他」の3つのセグメントで業績を開示しているが、上期の158億円の営業利益のうち、コンシューマが226億円を稼ぎ出している。他の2部門の赤字と全社経費を全て、コンシューマが賄っている。

地域別の売上高では、日本国内は1,599億円の売上高のうち、3分の1弱の487億円。前年比では8%減だが、北米が212億円で9%増、欧州が268億円で2.6%増、アジアその他が631億円で19%増。

海外では電卓も好調らしく、先日東洋経済オンラインが、インドでカシオがインド式桁表示対応の電卓を発売、これがバカ売れしていることや、インドの売上高が7年で5倍になったことなどを報じている。

そこで今回はカシオの現時点での業績予想の妥当性を検証してみたい。売上高3,500億円、営業利益350億円、当期純利益230億円という予想は期初予想から変えていない。

この通期予想から上期の実績を差し引いてみると、下期は売上高1,900億円、営業利益191億円、当期純利益126億円を稼ぐと計画値を達成できる。

まず売上高だが、1,900億円という売上高は前下期比111%。上期実績が前期比105%だったので若干不安が残る。まずは上期並みの伸びとして売上高を1,700億円くらいとみておこう。

次に利益だが、売上総利益率が上期は前期比で2.8ポイントも上昇している。販管比率はほぼ前年同期並みなので、この売上総利益率の上昇がそのまま営業利益率の上昇につながっている。

下期は例年、上期よりもボリュームが出る分、営業利益率が2ポイント強高い。上期の営業利益率9.8%に2.3ポイント上乗せしてみると12.3%。1,700億円の売上高でもこの営業利益率なら下期の営業利益は209億円。会社予想を18億円上回る。

欧州やアジアは景気動向に若干不安が残るが、米国は目下のところ絶好調。既にカシオの株価は上がってしまった感はあるが、業績予想の上方修正の可能性はかなり高そう。配当も日経の報道の通りなら30円。これが実現すればリーマン・ショック直前の08年3月期の33円以来の30円台復帰ということになる。

もともと期初予想ベースの配当性向は28%。30円で配当性向3割とすると、当期純利益は260億円以上にはなるはずだ。

かつては業績予想が期中で上へ下へ、めまぐるしく変わったカシオ。今期は投資家の期待に応えられるのかもしれない。

カシオ計算機の業績推移
売上高 営業
利益
経常
利益
当期
純利益
総資産 純資産 自己資本比率 配当 期末
株価
PER PBR 配当
性向
ROE
95/3 401,675 8,471 8,157 5,026 463,346 175,082 37.8% 13.0 910 49.86 1.43 71.2% 2.9%
96/3 411,927 4,145 3,897 695 495,563 172,127 34.7% 12.5 1,020 404.76 1.64 496.0% 0.4%
97/3 459,105 14,370 11,462 3,700 496,947 174,528 35.1% 12.5 866 64.97 1.38 93.8% 2.1%
98/3 502,012 37,757 31,854 11,738 537,013 182,657 34.0% 12.5 1,150 27.30 1.75 29.7% 6.4%
99/3 451,141 12,551 6,181 – 8,534 506,566 170,721 33.7% 12.5 803 1.28 -5.0%
00/3 410,338 19,477 14,210 6,173 507,105 169,634 33.5% 12.5 1,089 47.91 1.74 55.0% 3.6%
01/3 443,930 17,905 11,886 6,547 445,883 162,375 36.4% 12.5 809 33.55 1.35 51.8% 4.0%
02/3 382,154 -10,418 -17,824 -14,928 449,224 134,317 29.9% 12.5 602 1.21 -11.1%
03/3 440,567 17,914 12,272 5,647 459,113 131,957 28.7% 12.5 737 36.36 1.90 61.7% 4.3%
04/3 523,528 27,491 21,454 14,176 496,039 144,403 29.1% 15.0 1,238 23.81 2.28 28.9% 9.8%
05/3 559,006 39,040 33,588 21,534 495,743 162,271 32.7% 17.0 1,415 17.63 2.32 21.2% 13.3%
06/3 580,309 43,114 38,915 23,745 501,960 191,011 38.1% 20.0 2,095 23.65 2.92 22.6% 12.4%
07/3 620,769 48,074 41,431 25,147 525,483 236,669 42.6% 23.0 2,580 27.84 3.18 24.8% 10.6%
08/3 623,050 37,753 31,025 12,188 451,835 231,213 49.4% 33.0 1,459 33.03 1.81 74.7% 5.3%
09/3 518,036 4,016 -1,442 -44,117 444,653 184,981 41.2% 23.0 693 1.05 -23.8%
10/3 427,925 -29,309 -25,082 -20,968 429,983 168,857 37.3% 15.0 719 1.25 -12.4%
11/3 341,678 12,402 11,702 5,682 402,456 153,232 38.0% 17.0 658 31.48 1.16 81.3% 3.7%
12/3 301,660 9,065 6,980 2,556 366,212 149,254 40.7% 17.0 591 62.15 1.07 178.8% 1.7%
13/3 297,763 20,053 19,702 11,876 369,322 163,968 44.4% 20.0 725 16.41 1.19 45.3% 7.2%
14/3 321,761 26,576 25,743 15,989 366,964 185,256 50.5% 25.0 1,221 20.53 1.77 42.0% 8.6%
15/3予 350,000 35,000 33,000 23,000 25.0 29.2%
※金額の単位は配当と株価のみ円、それ以外は百万円。PER、PBRは実績ベース
著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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