取材の現場から 衆議院の解散余波 「自動車産業戦略」公表遅れる

取材の現場から 連載


「輸出戻し税」も先送りに

トヨタ(7203)は18日、燃料電池車(FCV)「ミライ」を発表した。その前日にはホンダ(7267)が「FCVコンセプト」を世界初公開した。これから、次世代カーの主役と称されるFCVの本格普及が始まるが、FCVのインフラ整備はまだ不十分で、水素ステーションの普及などには行政のバックアップが不可欠。ところが、経産省が策定した「自動車産業戦略」の公表が、安倍政権のおかげで延びに延び、いまだ公表のメドがたっていないのだという。

トヨタ(7203) 週足

トヨタ(7203) 週足

経産省は8月21日、産業構造審議会の分科会に「自動車産業戦略」を提出。本来なら、大臣にこの新戦略をほどなく報告するのだが、経産省は敢えて止めた。というのも、内閣改造で経産大臣の交代が予定されていたからだ。退任する大臣に提出すると、「新戦略は前大臣の仕事」としてお蔵入りしかねない。改造後に提出すれば、新大臣の新政策として打ち出すことも可能。そんな胸算用だった。ところが、就任から2カ月もたたずに小渕優子大臣は政治資金問題であっさり辞めてしまう。

「10月中にも、小渕大臣と自動車工業会との懇談会が予定されていた。その直前に大臣に報告し、自動車業界に新戦略を披露する段取りだったが、辞任で見送りとなった。まあ、辞任前に新戦略をご説明していなかったのは、勿怪の幸いだったが…」(経産省関係者)。

そして宮沢洋一氏が経産相に就任。SMバー騒動もあったが何とかやり過ごし、今度こそ新戦略を報告しようとしたところに、解散である。選挙後、大臣交代もあり得るので、新戦略を出すタイミングをまた失った――。

今回の解散で、自動車業界が最重要視する自動車諸税の問題も先送りされた形だ。再来年10月の消費税10%に合わせて、自動車取得税を撤廃することが決まっていたが、消費税とともに先送りとなった。年末の税制改正では、重量税の廃止や環境性能課税の詳細などを議論する予定だったが、これらも皆、棚上げとなり、段取りが大幅に狂ってしまった。

蛇足ながら、消費税が上がると「輸出戻し税」も増額となり、自動車メーカーへの還付が増える。消費税問題に詳しい湖東京至・元静岡大学教授の推算を参考に計算すると、8%が10%になれば、トヨタなら560億円、日産(7201)302億円、ホンダ172億円、マツダ(7261)145億円、三菱自(7211)135億円還付が増える。消費税先送りで、この“収入”も先送りだ。

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