取材の現場 LGBTはもはや世界の趨勢

取材の現場から 連載


米国で支持得る富士重工、ブリヂストン

米アップルのティム・クックCEOがビジネス誌に寄稿し、同性愛者であることを公表した。この勇気ある表明が、関係方面から称賛されている。芸術や芸能のジャンルでは多くの同性愛者がカミングアウトしているが、近年ではスポーツ選手も増え、さらにビジネス界にも広がりつつあるのかもしれない。

「ダイバーシティ」(多様性)なる言葉が定着してきたが、本当の意味で日本企業に多様性が浸透しているだろうか。昨今の「女性活躍」に経済界があたふたしている姿を見ると、日本企業に本当のダイバーシティが根付くのはまだ先のようにみえる。

ただ、そんな悠長な態度でいられないほど、世界の趨勢(すうせい)は活発だ。今年2月のソチ五輪では、ロシアの同性愛禁止に欧米が反発し、開会式への出席を見送るなどした。

同月の米グラミー賞では同性婚合法化を祝い、34組のカップルが集団結婚式を挙げた。また、大ヒットした映画「アナと雪の女王」の裏テーマには同性愛があるとも言われている。ヒット曲「レット・イット・ゴー」は、ありのままの自分を肯定する内容であり、同性愛のカミングアウトを促す歌だ――という解説も出ている。

このように同性愛者に対する嫌悪、拒絶、偏見が欧米で改善の方向に向かっている。その中、「LGBT市場」に注目する向きも増えている。LGBTとはレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーを示す用語。電通総研の調査では、国内にLGBTは5.2%おり、市場規模は5兆7,000億円規模だという。

ソフトバンク(9984) 週足

ソフトバンク(9984) 週足

しかし、LGBTを単なるマーケットと見ると怪我をする可能性もある。任天堂(7974)は今年5月、米国で発売した「トモダチコレクション」でミスを犯した。仮想空間で生活するゲームだが、発売を前に「同性結婚ができないか」と要望が来た。任天堂は仕様の追加はできないとし、「どのような形での社会的主張も行うことは意図していません」とも説明。これが米国内で批判を浴び、謝罪に追い込まれた。同性婚を受け入れないことがむしろ、社会的主張だと受け止められたのだ。日本人にはピンとこないかもしれないが、これがスタンダードだ。

LGBTの支持を得ている企業というと、米国では富士重工(7270)ブリヂストン(5108)の名が挙がるという。国内では、LGBTの入籍を伴わない結婚にも「祝い金」を拠出する日本IBMや、男性同士や女性同士でも「家族割」を認めているソフトバンク(9984)がある。

LGBTは経営者、そして企業意識の問題だ。企業意識は今や、株価にも影響する。

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