特報 歴史的大相場(10月31日)の上昇率トップ銘柄 ダイヤ通商 8年ぶり株価輝く 株価材料は……?

特報 連載


午後1時44分に日銀が突然追加緩和を発表した10月31日。日経平均は一時前日比800円高まで上昇、終値は前日比755円高の1万6,413円。黒田東彦日銀総裁が直前まで追加緩和の必要性を否定していただけに、まさにサプライズ。

この日の値上がり率ランキング上位に登場したのは、やはり値動きが激しい中小型銘柄。上位50銘柄の中で、ある程度名が通った大企業はというと、三菱地所や東急不動産、住友不動産といった大手不動産デベロッパーやオリックス、ヒューリック、大京など、不動産銘柄が目立つが、それ以外は四季報を見て初めて、何をしている会社なのかが分かるような、マニアックな銘柄が大半だ。

ダイヤ通商(7462) 日足

ダイヤ通商(7462) 日足

そんな中、栄えある値上がり率トップに躍り出たのは、年商わずか50億円のガソリンスタンド経営会社ダイヤ通商(7462・JQ)。

前日終値の139円から一気に35.97%も上昇し、終値は189円にハネ上がった。2008年7月以降、11年1月までは株価が3ケタになることがなく、11年2月以降もたまに100円台に乗る程度。昨年10月から12月にかけては3ケタと2ケタを行き来していたが、189円という株価は200円台を維持していた06年9月以来、実に8年ぶり。

週明けの11月4日はいきなり210円から始まり、5日には285円を付ける場面も。本稿を執筆している11月11日午後12時30分時点の株価は206円である。

■事業整理と経営陣変遷

ただ、今回の急上昇、特に個別の材料は見当たらない。この会社を不動産銘柄とする説もあるらしいが、それはいくらなんでも無理筋だ。一応自社保有のビル2棟で不動産賃貸業も営んではいるが、賃料収入は2棟合計でもせいぜい1億4,000万円程度。昨年は耐震補強工事の影響で、年間売上高は6,000万円程度まで落ちたが、工事が済んでもこの程度だ。

やはり本業は連結売上高の9割弱を占めるガソリンスタンド事業であり、会社側が今後大きく不動産事業を伸ばそうなどと言っているわけでもない。

現在はガソリンスタンドと不動産賃貸以外に自転車専門店経営の3部門しかないが、1995年の上場当時はこれ以外にホームセンターやイエローハットのFCの事業も手掛けていたので、年商は現在の5倍以上で270億-280億円規模だった。

儲からないイエローハットのFCからの撤退は2004年4月、ホームセンターからの撤退は08年2月。現在の事業メニューになったのは09年3月期だ。

2年ほど前には“お家騒動”もあった。筆頭株主で1982年から28年間にわたって社長を務めた森猛氏が、代表を降りて会長職に就いたのは2010年1月。4期連続での営業赤字がほぼ確実になっていた、いわば最悪の時期だ。後を託されたのは専務取締役経理部長だった大矢晃久氏。社長就任翌年の11年3月期と、その次の12年3月期は2期連続で黒字化したが、その12年6月の総会で、森氏の娘婿の菊池新治監査役を会社提案の取締役候補にするかどうかで、大矢氏と森氏の間に対立が起きた。

一時は大矢氏側が、菊池氏の不正追及のための第三者委員会まで設置して調査に乗り出す勢いだったが、結局は菊池氏を取締役に推薦しないことで話が収まり、第三者委員会も調査途中で解散、調査結果は公表されずじまいという、前代未聞の結末になった。

こんな経緯(いきさつ)があった大矢氏が会社に残れるはずもなく、後任の社長には高島屋OBの北野稔が外部招聘(しょうへい)され、さらにこの北野氏も1年で会長に退き、代わって今年4月から社長を務めているのが、第一勧業銀行(現みずほ銀行)OBの阿部匡氏。現在この会社の役員構成は、取締役4人に監査役3人だが、取締役4人のうち2人は弁護士。残る2人は阿部氏と北野氏なのでプロパーはゼロ。

■注目は第3四半期決算発表

業績の方もぱっとせず、上場からの19期間で最終黒字は8回しかない。当然市場の評価は低く、PBR(株価純資産倍率)が1倍を超えたのは上場直後の2年間くらいしかない。だが、11月10日終値ベースでの実績PBRは2.63倍に達しており、明らかに過大評価だ。

11月13日には第2四半期の決算短信が公表される。今期は久々の通期黒字予想であり、第1四半期並みの売上総利益率が確保できれば、黒字は射程圏。だが、実現を阻みかねないのが最近の円安だ。石油販売は円安に弱い。

第1四半期の営業損益は、前年同期の2,800万円の赤字からだいぶ改善して300万円の赤字だったが、石油事業のセグメント損益は94万円の赤字。不動産と自転車ショップの利益がそれぞれ1,600万-1,700万円前後しかない。

しかも11月13日に発表される数字は9月末で締めたもの。最近の円安による影響は反映されていない。11月5日に、助成金収入で営業外損益に3,700万円が立つということを開示しているが、下期の売上総利益率が1.5ポイント下がれば3,700万円などたちまち吹っ飛んでしまう。

この会社、黒田サプライズで株価では多大な恩恵を受けたが、石油事業の損益が被るダメージの程度は、第3四半期の結果が出る来年2月まで分からない。余計なお世話かもしれないが、投資家の皆さまにはくれぐれも冷静な対応を心がけていただきたいと思う。

ダイヤ通商の連結業績推移と株価指標
売上高 営業
利益
経常
利益
当期
純利益
総資産 純資産 自己資本比率 配当 期末
株価
PER PBR 配当
性向
96/3 28,047 732 781 392 15,298 7,722 50.5% 12.5 2,380 44.25 2.33 23.2%
97/3 27,932 442 480 163 16,122 7,714 47.8% 12.5 2,000 92.25 1.96 57.7%
98/3 27,199 50 44 -205 16,604 7,400 44.6% 12.5 280 -10.30 0.29
99/3 25,617 -419 -485 -1,861 15,232 5,491 36.1% 10 400 -1.62 0.55
00/3 25,710 147 103 59 16,442 5,467 33.2% 6 514 64.82 0.71 75.7%
01/3 25,778 -575 -621 -979 15,195 4,442 29.2% 0 398 -3.07 0.68
02/3 25,493 -212 -282 -352 14,812 4,471 30.2% 0 249 -5.34 0.42
03/3 24,606 215 131 126 13,780 4,550 33.0% 3 157 9.35 0.26
04/3 23,207 174 86 74 13,300 4,689 35.3% 3 180 18.20 0.29
05/3 20,906 -342 -428 -815 11,856 3,891 32.8% 0 185 -1.71 0.36
06/3 20,569 10 -47 -828 9,544 2,652 27.8% 0 225 -2.05 0.64
07/3 17,850 -13 -65 92 8,011 2,515 31.4% 0 127 10.39 0.38
08/3 15,124 -508 -546 -944 5,973 1,541 25.8% 0 70 -0.56 0.34
09/3 6,700 -235 -283 -347 4,062 1,156 28.5% 0 34 -0.74 0.22
10/3 5,220 -80 -91 -181 2,710 982 36.2% 0 49 -2.03 0.38
11/3 5,560 38 27 6 2,721 985 36.2% 0 59 65.56 0.45
12/3 5,914 42 35 36 2,993 1,052 35.1% 0 99 20.29 0.71
13/3 6,375 12 -14 -42 3,033 1,013 33.4% 0 81 -14.54 0.61
14/3 5,535 -209 -228 -388 2,317 624 27.0% 0 74 -1.45 0.91
15/3予 4,991 36 29 29 0
※金額の単位は配当と株価のみ円、それ以外は百万円。PER、PBRは実績ベース。

 

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