取材の現場から もう1つのサムスンショック

取材の現場から 連載


蓄電池補助金が韓国に流れる

韓国のサムスン電子がスマートフォン(スマホ)事業の不振で営業利益が6カ月で半減し、「ギャラクシー・ショック」と称されている。この余波が日本にも波及。スマホ向けのリチウムイオン電池の受注減により、日立マクセル(6810)は10月22日、業績の下方修正と早期退職者募集の構造改革を発表。これが「サムスン・ショック」と呼ばれているが、実は日本にはもう1つ、別のサムスン・ショックがあった。

経済産業省は2012年7月、『蓄電池戦略』を公表。20年に世界の蓄電池市場で5割のシェアを国内企業が獲得することを目標とした。もともとリチウムイオン電池は日本が独占していた。00年ごろは90%以上の世界シェアだったが、今や日本企業のシェアは4割に落ち込んでいる。サムスンがトップに躍り出て、中国のBYD、BYKといったメーカーもシェアを伸ばしている。原発事故で国内の電力供給は不安定になり、再生可能エネルギーの供給にかかわる蓄電池は、より重要性が増している。その中で日本勢が落ち込み、海外が席巻し始めたことに経産省が危機感を覚え、蓄電池産業のてこ入れに乗り出したわけだ。

「これに合わせ電池工業会が、家庭用蓄電池への補助金を経産省に陳情した。電池工業会が国に陳情するのは初めてだ」(経産省担当記者)。

ニチコン(6996) 週足

ニチコン(6996) 週足

その結果、家庭用の定置型リチウムイオン蓄電池の購入補助制度を勝ち取った。既に310億円が予算措置され、来年度概算要求でも70億円が計上されている。

「ところが、補助金の6割が韓国に行ってしまった。国内の電池産業支援策だったのに、サムスンの電池ばかりが売れてしまった。経産省は電池工業会を呼びつけ、『どういうことか!』と説明を求めている」(電池工業会関係者)。

今、家庭用蓄電池で最も売れているのはニチコン(6996)の製品だという。ニチコンはサムスンSDIからリチウムイオン電池の供給を受け、電機制御システムを付けて自社製品として販売。表向きは日本メーカーに補助金が使われているが、実際は韓国企業の販売拡大に協力してしまったわけだ。

「ニチコンの充電器が売れたのは、サムスン制の安価な電池を調達していたことと、10年保証など他社に比べて手厚い保証を設定したためだった。国内メーカーは『何か事故があると困る』と販売に消極的だったその違いが、売れ行きの差に表れた」(前出・関係者)。

日本企業が韓国にやられているのは、こうしたリスクを取らない姿勢にあるのだろうか。

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