特報 石垣食品 下方修正よりも筆頭株主異動に反応

特報 連載


神戸物産は見事に投資回収

10月20日、石垣食品(2901・JQ)が業績予想の下方修正を発表した。翌21日は取引開始から40分後、前日比で1割安い180円まで下落。本稿執筆時点の昼すぎに190円まで戻す展開になった。

修正内容は、2015年通期の売上高予想を従来予想の6億3,800万円から5億7,500万円に、営業損益予想は300万円の黒字から3,200万円の赤字に、当期純損益予想は300万円の黒字から3,300万円の赤字へと、それぞれ引き下げるものだった。

すれすれとはいえ黒字予想から2期連続赤字予想への修正なので、イメージが悪いのは確かだが、9月13日発売の四季報2014年秋号の独自予想は売上高5億6,000万円に営業損益は6,000万円の赤。第1四半期の実績が芳しくなかったので、市場にとっては想定内だったと言っていい。実際、四季報発売後も株価は反応せず、190円~195円あたりで推移していた。

であれば、市場は何に反応したかというと、おそらく業績予想の下方修正と同時に公表された、筆頭株主の異動情報だろう。

石垣食品の筆頭株主は神戸物産(3038)。10年に石垣食品と業務提携し、その時点で80万株の第三者割当増資を引き受け、発行済みの23%を握る筆頭株主になっている。

その神戸物産、昨年後半から今年2月中旬にかけて市場で石垣株を約20万株追加取得し、保有割合は発行済みの31%に膨らんでいた。ところが、10月6日からの8営業日で40万株を市場で売却。保有割合が一気に2割を割るに至った。

神戸物産の大量保有報告書は10月14日と20日の二度に渡って提出されており、2割を割って筆頭株主ではなくなったところで石垣食品側が開示をしたわけだ。

この神戸物産の売りが業務提携解消を想像させた可能性は否めないが、神戸物産は「割安な時期に追加取得し、高騰したタイミングで売却をしただけであって、業務提携とは無関係」(広報)としている。

石垣食品といえば、松島トモ子のCMで有名なミネラル麦茶。日本で初めて水出し麦茶を発売した会社である。現在は茶飲料とビーフジャーキーが二本柱で年商もわずか5~6億円という水準だが、1985年11月の上場当時は30億円を超えていた。当時の事業は水出し麦茶とラーメン具材用の乾燥肉、それに日清製粉向けのパスタのOEM。

水出し麦茶の先駆者とはいえ、その後は競争に晒されて茶飲料の単価は右肩下がり。業務用のレトルト食品にも進出してはみたものの、受注が安定せず赤字の原因になっていたので2008年に撤退。無借金なので自己資本比率は高水準だが、厳しい展開が続いている。当然市場の評価も厳しい。

ところが今年10月2日に突如急騰、ストップ高を付けた。この日の終値は前日比81円高(139%)で売買高は13万2,300株。通常の半年分に相当する。翌3日は57万4,100株。終値は361円。4日はさらに上げ、高値437円を付けたところで下落が始まり、終値は295円。この日の売買高は77万4,800株に上った。

週明けの6日以降は連日下落が続き、もとの水準に戻ったのは16日。10月2日から15日までの9日間の売買高は282万株。

急騰の材料も急落の材料もない中での大商い。この間に見事に儲けたのが神戸物産である。10年に第三者割当増資を引き受けた際の単価は88円だし、約20万株を追加取得したのは昨年末から今年2月中旬にかけて。1月中旬くらいまで株価は100円前後で推移していた。売却を始めたのは急騰から3営業日目の10月6日。大量保有報告書にはいくらで売れたのかは載っていないが、市場で処分した40万株のうち9万8,100株は初日の6日に処分している。

この日は前半に400円台を付けている日でもある。平均で1株当たり200円-250円程度の儲けだったとすると、40万株で8,000万円~1億円前後になる。神戸物産が10年の第三者割当増資で投下した金額は7,000万円。見事に投資は回収できた上におつりが来て、なおかつ残り2割弱の分は全額含み益ということになる。

当期純利益で30億円前後という規模の会社なので、この程度の儲けは誤差の範囲といえてしまうが、決断力の素早さには舌を巻くばかりだ。

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著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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