注目指標「空売り比率」の有効性は? ルール変更で“断層”発生

夕凪所長のイベント投資100% 連載


季節的には待ちの姿勢を

10月に入ってからというもの、日本市場の雲行きが怪しくなってきた。日本市場ばかりでなく全世界的に株価が値下がり傾向にあり、株価を支える材料に乏しい状況にある。どこまでで下げ止まるのかの見当がつかない。

そんな中、市場関係者に最近注目されている指標がある。それは、東証が日々公表している「空売り比率」である。この空売り比率が10月3日は36.48%、10月9日は36.17%と、いずれも過去最大級の値を付けており、それが株価底打ちのサインとなるのではないかと認識されているからだ。

ここでいう「空売り比率」は、2008年11月から東証が公表を始めたものを指している。市場全体の売り約定の中で、空売り分の約定が金額換算でどれだけを占めていたかの値である。売り注文には、現物の売りと空売りの2種類が存在する。仮に空売り比率が30%と公表された場合、全部の売り約定のうち、金額ベースで現物の売り分が70%、空売り分が30%であったという意味である。

空売り分の約定は、将来的には買い戻し約定を行う必要がある。このため、空売り比率が上昇すればするほど、将来の買い戻し分が株価の下支えの役割を果たすことになる。このことから、空売り比率が高まれば高まるほど、株価が底打ちになりやすいと認識されている。

では、本当に空売り比率が高まれば株価の底打ちが近いのか、どの値まで高まれば底打ちとなるのか、実際に調べてみることにした。ここでいきなりであるが結果を先に言ってしまうことにする。それは「データ数が十分になく、まだよく分からない」である。白か黒かを期待されていた方には申し訳ない。この結論になってしまった大きな理由は、信用取引に関するルール改正が13年11月5日にあったことにある。その日以前とその日以降ではデータの一貫性がなくなってしまったのだ。

東証が公表を開始した08年11月から、ルールが改正される13年11月5日より前までは、全銘柄に対して空売りに対するアップティックルールが適用されていた。つまりは直近株価よりも安い値段で空売り注文することは禁止されていた。例外的に50単元以下であればアップティックルールの対象外となっていたが、それでも50単元の空売りを連発させるようなことは禁止されていた。空売りがしにくい状況である。

ルール改正後の13年11月5日からは、10%以上の下落が発生した銘柄のみ、空売りに対するアップティックルールが適用されることとなった。それ以外の大多数の銘柄については、50単元の制限なしに直近価格よりも安い値段で空売りができるようになった。空売りがしやすい状況である。このほかにもさまざまな規制緩和が加わったことで、空売り比率が以前よりも明らかに大きな値を示すようになったのである。

実際、ルール改正直前の空売り比率の20日平均が21.8%程度なのに対して、ルール改正以降、5営業日後からの空売り比率の20日平均が28.5%程度と、6.7ポイントも高くなってしまったのである。その状況が今までずっと続いている。

従って、今月10月3日に記録した空売り比率36.48%という数値について、ルール改正前の数値と比較してどうこう言うには無理がある。また、ルール改正後のデータの中で比較しようとしても十分な日数がたっていないため、どんな意味を持つのか分からないのが正直なところである。ということで、空売り比率が高まれば、株価の底打ちが近いのか、36.48%は底打ちとして十分なのかということに対する結論は「データ数が十分になく、まだよく分からない」に行き着いてしまった。

以上のことから、ここ最近の過去最大級の空売り比率によって語られる株価の底打ちの期待は、いったん忘れてしまった方がいいであろう。過去のデータと素直に比較できない以上、目安となりそうなことすら言えない。

季節のアノマリー的にも、株価は11月末まではイマイチの時期である。早期の底打ちを期待するよりも、嵐が去るまでゆっくりと待ちの姿勢がいいのかもしれない。株価は下落があるからこそ、その後の上昇に一段と期待が持てる。そう思えば少しは気が楽になるというものである。

夕凪所長とは…
証券界会社のプロも参考にしているサイト「ダントツ投資研究所」を主催。現在はフルタイムの個人投資家。株主優待投資を中心に読者の投資力向上を目指したメルマガ「夕凪所長の株主優待最新ニュース」も発行している。
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