特報 すかいらーく再上場 2006年6月当時の時価総額を下回る

特報 連載


日本基準なら「のれん償却費」年90億円

2006年9月、野村ホールディングスグループが出資する、SNCインベストメントに完全子会社化され、上場市場を去ったすかいらーく(3197)が、10月9日、8年ぶりに上場市場に戻ってきた。

初値は公募価格と同じ1,200円だったが、翌10日終値は1,138円と、さっそく公募価格を割ってしまった。もっとも予想PERで22.86倍、実績PBR(株価純資産倍率)で2.75倍なので、とりあえず市場は高い評価を与えたことになるのだろう。

ただ、この8年間何をしてきたのか、つまりは5万5,000人を超える既存株主をスクイーズアウトで強制的に追い出さないとできない、大胆な経営改革が行われた痕跡はまるで感じられない。

すかいらーくのスクイーズアウト実施は06年6月。本人の同意なく株主から買収者が強制的に保有株を奪い取れることを認めた、金銭対価の株式交換の使用を合法化する会社法の施行はこの1年先。にもかかわらず株主全員の追い出しが可能になったのは、すかいらーくが産業活力再生法を使ったからだ。

スクイーズアウト発表時点の株価は1,962円。当時の発行済み株式総数は1億1,800万株だったので時価総額は2,315億円。

今回上場したすかいらーくはかつて上場していたすかいらーくとは法人格が別。野村が買収した時点で、買収のために用意したSPC(特別目的会社)であるSNCインベストメントが存続会社になって、旧すかいらーくを買収したので、この時点でまず法人格が変わっている。買収用に用意したSPCを存続会社にして被買収会社を吸収合併させる手法はスクイーズアウトでは一般的。この手続きによって、買収のために調達した借金を、買った会社にツケ回すのである。

SNCが買収のためにみずほ銀行から借りたのは2,200億円。買収必要資金は総額で2,735億円。みずほからの借り入れ以外に野村自身が1,036億円、野村の買収パートナーである欧州系バイアウトファンドのCVCキャピタルが599億円を用意することが、当時の公開買付届出書には出ている。

普通に考えれば、野村とCVCの出資合計1,635億円のうち、みずほからの借入で賄えなかった535億円プラスアルファを除く1,000億円程度をみずほからの借り入れ返済に充当したものと考えられる。

次にこの会社の法人格が変わるのは12年4月。野村とCVCが全保有株をベインキャピタルに譲渡、この時点でベインが買収用の受け皿として用意したのがBCJホールディングス6。今度はこの会社を存続会社にして旧すかいらーくを吸収合併させている。

売却価格は合計1,600億円(うち野村1,280億円)だったそうで、野村は340億円の売却益を出したというから、出資した1,036億円のうち、100億円くらいはベインへの売却前に回収済みだった計算になる。

そして今回の公募売り出しで株式を放出したのはこのBCJ。総額1,600億円で計算すると、1株当たりの取得単価は823円。公募で1株当たり377円の差益を得たことになる。

ただ、今回ベインが売り出した株数は3,240万株。発行済みの16.6%足らず。それでも実際に手にした売却益は122億円になる。依然として発行済みの8割弱を保有し続けるわけで、最終的にどれだけ利益が得られるかは、今後すかいらーくが株価を上げられる企業なのかどうかで決まる。

そこで、この8年間でどれだけ実力を蓄えたのかというと、これが実に心許ない。すかいらーくはベインに買収されて以降、12年12月期から会計基準を日本基準からIFRS(国際財務報告基準)に変えている。IFRSはのれんを償却しない。

05年12月期には載っていなくて、今は載っている資産項目で大きいものがまさにのれん。スクイーズアウトの際にSNCを存続会社にしたがために計上されたものだ。

今回の株式公開目論見書には、12年12月期の日本基準での決算数値も載っている。そこから計算すると、日本基準なら計上しなければならないのれん償却費は、ざっと年間で90億円。

13年12月期の当期純利益118億円から90億円を差し引くと28億円にしかならない。有利子負債もスクイーズアウトの際の借り入れがつけ回されている分、上場廃止前よりもかえって増えている。

一方、純資産は13年12月期時点では約200億円減。利益剰余金を資本準備金に振り替えたのか、利益剰余金の目減りが大きい。

当期純利益は一見、倍近くに増えたように見えるが、日本基準でなら発生するのれん償却額90億円を差し引けば当期純利益は28億円になってしまう。

第一、スクイーズアウトを公表した06年6月当時の時価は2,300億円以上あったのに、今の時価はそれを下回っている。日経平均の06年6月の終値は1万5,505円。現在よりもわずかに高いが、これから産活法を申請し、会社を再建しますと言っていた頃とマーケット環境も時価総額もさほど変わっていないということになる。市場の目は節穴ではないということかもしれない。

すかいらーくの業績・財務推移
05/12 13/12 14/6 14/12予
資産の部 229,566 306,892 300,269
現預金 19,092 13,883 15,539
有形固定資産 123,029 86,520 87,776
投資有価証券 11,225
敷金・保証金 40,475 24,541
のれん 146,320 146,320
負債の部 135,960 232,909 221,488
有利子負債 104,751 164,735 153,268
純資産 93,605 73,983 78,781
資本金等 42,558 60,239 60,577
利益剰余金 68,573 13,693 18,147
自己株式 △18,248
売上高 379,378 332,484 165,684 337,860
売上原価 127,376 100,242 50,010
売上原価率 33.6% 30.1% 30.2%
販管費 233,459 206,969 103,568
営業利益 18,542 22,563 11,273 20,870
経常利益 18,511 11,800 8,399 16,387
当期純利益 6,683 11,800 4,462 9,462
一株あたり純利益 61.44 37.29 23.43 49.53
一株あたり純資産 861.02 388.59 414.18
店舗数 3,213 3,006 3,001
※単位は百万円、1株あたり指標は円、店舗数は店。予想は会社側。
著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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