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高採算新薬が北米で売れる

10月6日、医薬品2位のアステラス製薬(4503)が、首位の武田薬品工業(4502)を時価総額で追い抜いた。10月7日午前11時半現在でもアステラスの株価は前日比22円高の1,671円で時価総額は3兆7,761億円。武田薬品は前日比8円高の4,690円で時価総額は3兆7,038億円。アステラスが約700億円上回っている。

アステラス製薬(4503) 週足

アステラス製薬(4503) 週足

両社の時価総額は、今年3月末時点ではアステラス2兆7,966億円に対し、武田薬品が3兆8,631億円と、1兆円以上の開きがあった。

その開きがわずか半年足らずで縮小、アステラスが武田薬品を抜くまでに至ったのは、やはりアステラスの第1四半期実績が好調だったからだろう。

アステラス、武田薬品ともに2015年3月期第1四半期実績の公表は今年8月1日。

売上高はアステラスが前期比109.5%増に対し、武田薬品は横ばい。営業利益はアステラスが前期比190.6%とほぼ倍増したのに対し、武田薬品は111.3%。11%の営業増益は普通なら十分評価される伸び率だが、アステラスの伸びの前には見劣りしてしまう。

アステラスの株価はじりじり上昇。8月1日終値は1,398円だったが、1カ月後の9月1日終値は1,527円へと9%も上昇。その後も着実な上昇を続け、さらに1カ月後の10月1日終値は1,634円。そして10月6日に年初来最高値の1,657円をつけ、1,649円で取引を終えた。本稿を執筆している7日には日本経済新聞の朝刊がアステラスと武田薬品の時価総額の逆転を報じたことが効いたのかどうかは分からないが、さらに年初来最高値を更新中だ。

武田薬品工業(4502) 週足

武田薬品工業(4502) 週足

第1四半期で大きく営業利益が伸びた原因は、売上原価率が30.1%から25.7%へと、前年同期比で4.4ポイントもも低下したことにある。

新製品の前立腺がん治療剤のイクスタジンや、ベシケアとミラベトリックを組み合わせた過活動膀胱治療剤が米国で大きく売り上げを伸ばしたことが、原価率が大きく下がった原因で、つまりは高採算の新薬が北米で売れたことが、営業利益が倍増した原因らしい。

一方武田薬品の原価率は前年同期横ばいの28.7%。原価率で3%の差は大きい。販管比率もアステラス32.8%に対し、武田薬品は33.2%とわずかではあるが高い。

アステラスは05年に山之内製薬と藤沢薬品工業が経営統合して誕生した医薬品メーカーだが、誕生当時の時価総額は2兆5,655億円。2007年3月末時点では3兆円近い時価総額だったが、リーマン・ショック後大きく株価が落ち込み、底を打ったのが11年3月。昨年あたりからようやく誕生当時の水準に戻りつつあるという状態だった。

一方の武田薬品は、アステラス誕生当時の時価総額は5兆円を超えていて、アステラスのおよそ倍だった。ピークは07年3月期で、その後サブプライム・ショック、リーマン・ショックを経て株価が下落、12年に底を打って回復途上段階だ。

現在の武田薬品の時価総額水準はピークの5割強でしかなく、今回のアステラス逆転は、基本的には武田薬品の下落が主要原因と言っていい。

医薬品は20年で特許が切れればジェネリックとの競合にさらされ、いきなり単価が下がる。だからこそどれだけ売れる新薬のタマを持っているかで将来が決まる。

医薬品業界は投資家も投資家にレポートを提供するアナリストも、専門性が極めて高い「大人の業界」。開発中のどの新薬がどの程度の将来性があるかについては、プロの目の評価に常にさらされているとはいえ、不特定多数の投資家は実際に上げた実績に反応する。

素人が両社の決算発表資料を見る限り、新薬のタマはアステラスの方が多そうに見えるが、市場は結局第1四半期の実績に反応した。

今後この時価総額の逆転現象が継続するかどうかは、第2四半期以降の業績次第と言えるだろう。

アステラス製薬と武田薬品工業の業績推移(クリックで拡大)

アステラス製薬と武田薬品工業の業績推移(クリックで拡大)

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