特報 スターバックスコーヒージャパン TOB価格は悪くない条件

特報 連載


残る疑問はサザビーの撤退

9月24日、スターバックス コーヒー ジャパン(2712)が、米国スターバックス社に完全子会社化され、上場を廃止する予定であることを公表した。

スターバックス コーヒー ジャパンの上場は2001年10月。設立から6年目と比較的早い上場だったが、日本側の合弁相手のサザビーリーグと、米国本社が39.5%ずつ持ったまま、つまり発行済みの8割を株主2社が保有したままの上場だった。以来、筆頭株主2社の保有割合は現在に至るまで変わっていない。

公開買い付けは2段階になっていて、まずサザビーリーグから買い取る1回目は9月26日から10月27日までが公開買い付け期間。買い取り価格は965円で、この価格はTOB(株式公開買い付け)公表前営業日の株価1399円に対し、3割もディスカウントした価格だが、実績PBR(株価純資産倍率)では2.9倍。予想PERでは23倍だ。

日経平均のPBRが大体1.3倍、PERは15倍前後なので、スクイーズアウトにしては悪くない条件だ。

第二弾は1回目が成立したら実施されることになってはいるが、サザビーとの間で応募契約が締結されているので、1回目が成立しないということはまずない。

2回目のTOBは11月10日から12月22日までの30営業日。スクイーズアウトの場合、通常は40日程度の期間をとるが、サザビーが応募した時点で米国の親会社は8割を保有することになるので、もはや何でもやりたい放題にできる。

実際に買い付けを行うのは、ソーラージャパンホールディングスというSPC(特別目的会社)。日本で設立した合同会社で、やはり従来のスクイーズアウト同様、全部取得条項付き種類株を発行する方法で、TOBに応募しなかった居残り株主から保有株を強制取得する。この強制取得はサザビーの応募を受けた時点で技術的には可能になってしまうので、2回目の公開買い付けは本来やらなくてもいい。

だが、今回は2回目を実施し、しかも買い付け単価は1465円に引き上げる。1399円に対するプレミアムは4.7%足らずなので、過去の事例からするとかなり見劣りする。

だが、予想EPS(1株当たり利益)が53.39円なので予想PERは27倍。実績BPS(1株当たり純資産)が324.5円なので実績PBRは4.5倍。市場の評価が高い会社のTOBなので、このTOB価格でも実はけっこう条件は悪くない。

スターバックス コーヒー ジャパンはこの非公開化を公表する13日前の9月11日に、今期の業績予想を上方修正している。従来予想は売上高1350億円、営業利益が115億円、当期純利益は67億円だったが、これをそれぞれ売上高は1377億円、営業利益は130億円、純利益は77億円に引き上げた。

好業績の果実は親会社が独り占めするということかと勘繰りたくなるタイミングではあるのだが、そこで起こる疑問は、なぜサザビーはスタバの事業から撤退するのか、しかもこの値段で売却する気になったのかが、ソーラージャパンの公開買付届出書に書かれている経緯を見てもいまひとつよく分からない。

スターバックス コーヒー ジャパンのさらなる発展のためには100%親会社傘下に入ったほうが良いと判断したなどという理由を聞かされて納得できるわけがない。撤退によってサザビーにはどんなメリットがあるのかがとんと分からない。

この点を解明できると、今回の公開買い付け価格の妥当性もより高い精度で検証できそうな気がする。

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著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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