特報 大幸薬品 デング熱特需はあるか

特報 連載


感染管理事業の復活に期待 中間決算の数字待ちに

デング熱の感染拡大を受け、9月4日大幸薬品(4574)が急騰。2,000円台に回復する局面もあった。連休前の終値は1,913円で休み明けの16日13時時点では1,880円だが、これでもまだデング熱報道前よりも100円前後高い。今回は大幸薬品の財務をのぞいてみたい。

大幸薬品は昨年12月3日にも株価が急騰している。香港でH7N9型の鳥インフルエンザ感染者が確認されたとの報道を受け、前日12月2日の終値は1,969円だったが、3日終値は2,224円。年が明けても勢いは止まらず、1月14日には2,717円を付けた。

大幸薬品(4574) 週足

大幸薬品(4574) 週足

これが今年の年初来最高値となるわけだが、2月5日に第3四半期発表と同時に業績予想を大幅に上方修正すると、するすると株価が落ち始める。

業績予想は従来予想売上高75億円、営業利益11億円、純益9億円から、それぞれ92億円、22億円、14億円へと修正し、この1週間後に公表された配当予想は一気に10円乗って25円という修正だった。それなのに株価が下落を始めたのは、期待が先行し過ぎたためだろう。

何しろ前期は中間期の時点で既に売上高は前年比28%増、営業益は2・6倍の14億円。それでも修正を出していなかったところへ、12月の鳥インフル報道。

結局2014年3月期の着地は売上高99億円、営業利益25億円と、修正予想をさらに上回った。部門別の内訳でいうと、セイロガンなどの医薬品事業が売上高55億円で営業利益が22億円。感染管理事業が売上高43億円で営業利益16億円。

決算発表時点では来期予想、つまり今期の予想で株価は動く。この時点の今期予想は売上高が前期比17%ダウンの82億円、営業利益は10億円ダウン(4割減)の15億円だった。

というのも、医薬品の売上高は前期比でほぼ横ばいの56億円計画だが、14年3月期に大きく伸びた感染管理事業の売上高が4割も落ちるという計画になっていたからだ。

8月12日公表の第1四半期実績では、売上高は前期比25%減、営業利益は前期比33%減と、減収幅は期初通期予想を上回ったが、営業減益率は通期予想よりも良かった。

そこへデング熱報道が飛び込んで来たため、感染管理が一気に伸びるのでは、という期待を抱かせたわけだ。

そこでこの会社の過去を振り返ってみたい。この会社はまさにセイロガンの本家本元である。だが、模造品が大量に出回った際に、法的手段をとるのが遅れたため、「セイロガンは既に普通名詞化しているから、セイロガンという名称を他社が使用しても権利侵害にならない」という判断を裁判所から下されてしまうという、苦い経験をしている。

歴史は長いが上場は09年3月。無借金で財務状態は極めて良好だ。10年3月期に売上高、営業利益がともにとんでもない伸びを示し、翌11年3月期は一転して売上高は半減、営業損益は赤字という、極端な結果を残している。

これがまさに感染管理事業のせいなのだ。10年3月期は鳥インフルエンザの大流行でクレベリンが一挙に伸びたが、11年3月期は鳥インフルエンザが収束。大量の返品も受けるハメになり、赤字転落という事態になった。

この会社、前期の上方修正を公表したのが今年2月ということからも分かるように、業績予想は極めて保守的だ。デング熱特需が本当にあるのかどうかもまだ判明していない。

現状、大幅な減益前提の予想PERは78倍と異常に高いが、それは予想が低過ぎるからとも言える。特需が顕在化すると一気に業績を好転させるので、取りあえずは中間決算の数字待ちといったところだろう。

大幸薬品の業績推移  
売上高 営業
利益
経常
利益
当期
純利益
総資産 純資産 自己資本比率 配当 期末
株価
PER PBR
04/10 4,713 232 297 -96 11,409 7,977 69.9% 10
05/3 1,609 -118 -96 92 10,847 8,157 75.2% 0
06/3 5,065 378 442 207 11,251 8,436 75.0% 10
07/3 4,935 519 696 379 11,188 8,393 75.0% 10
08/3 5,540 672 682 360 10,638 8,594 80.8% 10
09/3 6,094 894 843 470 11,460 8,984 78.4% 5 2,565 23.2 1.21
10/3 8,816 2,489 2,531 1,645 13,929 10,613 76.2% 10 1,505 11.7 1.81
11/3 4,699 -1,242 -1,192 -2,228 11,253 8,293 73.6% 5 895 -5.2 1.39
12/3 6,683 515 558 482 12,261 8,783 71.3% 15 827 22.2 1.23
13/3 7,443 1,120 1,211 1,037 13,016 9,478 72.4% 15 877 10.8 1.18
14/3 9,947 2,590 2,683 1,747 16,622 11,406 68.2% 25 1,689 12.4 1.94
15/3予 8,200 1,560 1,560 1,000 15

※06/3までは単体、それ以降は連結。金額の単位は配当と株価のみ円、それ以外は百万円。PER、PBRは実績ベース

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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