深堀健二の兜町法律放談 兜町法律放談 雪国まいたけ事件【前編】

兜町法律放談 連載


今月は、東北の地場優良企業として一世を風靡(ふうび)した雪国まいたけ(1378)(以下「会社」といいます)で起こっている騒動について検討したいと思います。

1 不適正会計事件

平成25年11月、会社は、土地取得関連支出の不正計上、事業用不動産の減損処理回避、公告宣伝費の繰延処理等の方法により、連結ベースで13億円に上る不適正会計が行われていたことが判明したと発表しました。

社内調査委員会の調査報告書によると、その原因は、経営トップのリーダーシップにあるとされています。

具体的には「私たちは出来ない理由を探しません!出来る理由を見付けます!私たちは妥協しません!許しません!」との行動基準を掲げるなど、経営トップからの業績維持に関する圧力が存在したり、経営トップの意向を担当者が過度に忖度(そんたく)したりしたことが、大きな原因であると認定されています。

この不適正会計事件の発覚に至る経緯については、監査役会の指摘無視と、退任役員からの告発という、二つの大きなポイントがあります。

調査報告書によると、平成24年4月に監査役の所見として、社長に対し「広告宣伝費の繰延処理は不適切である」との指摘がなされたのにもかかわらず、会社は何ら指摘を反映することはありませんでした。

また、各種報道によると、平成25年6月に退任した元取締役が、監査役などに対して、告発文書を資料付きで送付したことが、不適正会計発覚の端緒であったということです。

このような発覚経緯からしても、経営トップの責任が重大であることは明らかですので、会社は、創業社長の退任を決定し、後任にはイオンの元専務が就任したのです。

その後会社は、東京証券取引所に対して、決算修正などに関する経緯、改善措置を記載した「改善報告書」を提出しました。

そこには、「創業家兼大株主の影響を受けないようにするため、適度な出資割合まで引き下げていく方向で交渉を行っていきます」と、創業家の影響力を排除することが明記されていました。

2 今年の株主総会で全役員を掌握

このように、会社は、昨年の不適正会計事件をきっかけに、創業家の影響力を排除する方向へ舵を切ったのですが、今年の株主総会において、再び創業家が影響力を行使しました。

今年の株主総会において、イオン元専務の社長を筆頭に、8名の取締役と3名の監査役の選任議案を会社側が上程したところ、創業家による修正動議により、取締役・監査役各1名を除くすべての取締役・監査役選任議案が否決され、修正動議で提案された取締役6名、監査役3名が選任されたのです。

各種報道によると、新社長に就任したイオンの元専務が、東証に提出した「改善報告書」の記載に従って、創業家の影響力を排除しようとしたところ、創業家の逆鱗(げきりん)に触れ、創業家による実質的な経営支配権復活のために全役員が交替させられたとされており、そのように理解するのが普通でしょう。

他方、そもそも不正会計の最大の原因が創業家にあったことは明らかで、東証に対する「改善報告書」にその創業家の影響力を排除すると記載した以上、会社・創業家としては、「復権」だと東証に理解されてしまった場合には、最悪の場合には上場廃止もあり得るわけですから、創業家一族が取締役に就任するなどの直接的な行動は回避していると理解するところです。

ただ、創業家である支配株主の議決権所有割合は67%を超えていますので、創業家が自由に一般株主を締め出すことも可能な状況が継続していることは間違いなく、東証が、今回の総会による「復権」と持ち株比率をどう見ているか気になるところですし、創業家の比率を薄めるために、会社が何らか策を講じてくる可能性もあるのではないかとみています。

次回は、不適正会計事件発覚経緯を踏まえ、監査役の役割について考察してみたいと思います。

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