【深層】を読む 「荒れる」秋口、転機を探る きっかけ次第で“点火”の芽

【深層】を読む 連載


情報は収集よりも取捨選択

9月に入ってめっきり朝晩が涼しくなったが、日本株市場は平穏・閑散な日々が続いている。理由の一つは、消費税再引き上げの議論が交錯するなかで、アベノミクスで活性化した日本経済の進捗状況が、いまひとつはっきりしない点にあるだろう。景気回復を感じているのは、主に大企業、正社員、大都市圏などに偏っている印象がぬぐえず、それ以外の人々は、消費税引き上げによる実質所得の減少に怯えている。実際、その現象を「体験」して「苦しんでいる」のではなくても、将来が見えにくい中では、どうしても保守的、防衛的な消費行動を取ってしまうのはやむを得ない。その守りの姿勢が伝播することで、実際に守りに入る必要がない人まで、心理的に影響を受けてしまい、消費行動が抑制的になる。

こういった社会的な空気の中では、相場に対する姿勢も、おのずから控えめになるし、場合によっては大きく抑制的になってしまう。外国人投資家は日本国内と違って、少し視線が異なる世界から物事を見ているハズなので、日本国内の心理的影響に左右されることは少ないと考えられる。しかし、その外国人投資家も、日本株を買いまくっているわけではなく、せいぜいポジション調整の範囲内で考えられる程度の動きしか見せていない。そうなると、国内投資家からすると、外国人が買ってこないのは、やはり日本のデフレ脱却・景気回復に自信が持てないから、と懐疑的に考えてしまう。つまり、心理的なマイナスの連鎖だ。

ただ、実際の株価を見ていると、夏場は横ばいからやや底堅い展開が続いた。心配材料があちこちに見つかり、さらに心理的にもマイナス連鎖が続く日本株市場でも、大きくは下がらない、という事実は厳然と輝いている。そのため、参加者の間では、売り急ぐほどの切迫感がない。現状のポジションを保持したまま気長に値上がりを待つ、という姿勢を維持している向きは少なくないだろう。こうなってくると、市場全体の取引量も減少するし、マーケットの活気もなくなる。これが現在の日本株を取り巻く状況だろう。

しかし、衆目が一致していることがもう一つある。それは、「この状態は永遠には続かない」ということだ。つまり、いつかどこかで相場が大きく動きだす局面が来る、と多くの市場参加者が考えている。多くは、そのタイミングや原因、さらに動き出す方向が見えないことで、息を潜めて待機している状態だ。また、経験則的にも、秋口の相場は「荒れる」ことが多い。その年によって原因は違うが、「ナントカ危機」や「〇〇ショック」と名付けられるのは、往々にして、9-11月に発生することが多い。その理由として、ヘッジファンドの決算絡みの動きなどが指摘されることもあるが、毎回、毎回、ヘッジファンドの動きだけで相場全体が左右されるほど、マーケットは小さくない。くだけた書き方をすれば、そもそも原因となる要因が何かがあり、何らかの「きっかけ」が加わって導火線に火が付けられ、それが爆弾にまで届くとドカーンと来る、という感じだろうか。

実際問題として、そのタイミングや原因、方向性を事前に予想するのは、ほぼ不可能だろう。予想できると主張する人がいるならば、それは詐欺師まがいである可能性が高い。市場参加者としては、それらの雑音に惑わされることなく、冷静に相場の動きを見守ることが大事だと考えている。ただ、これは口で言うほど簡単ではない。まして、情報過多の昨今では、情報収集が問題なのではなく、情報の取捨選択の方がよほど大事、という点を忘れないでおきたい。

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