特報 WOWOW “錦織効果” 加入者の行方注目

特報 連載


財務内容は良好、PBR1.76倍

全米オープンテニスで日本人としては初の決勝進出を果たした錦織圭選手。その恩恵で、全米オープンテニスの独占放送権を持つWOWOW(4839)の株価が急騰していたというので、本日はWOWOWの財務の中身をのぞいてみたい。

WOWOW(4839) 週足

WOWOW(4839) 週足

WOWOWは地上波放送ならタダで見られるところを、わざわざ対価を払って番組を見る人向けの有料放送局である。以前からスポーツ中継にはかなり力を入れており、テニスのグランドスラム大会すべての独占放送権を複数年で取得している。最初に獲得したのが2006年11月に獲得した全豪オープン。次が翌07年6月に獲得した全米、その後同年12月に全仏、08年1月にウィンブルドンを獲得している。

このほか、スペインサッカーのリーガ・エスパニョーラや女子プロゴルフのLPGAツアーの独占放送権、独占ではないようだがNBAバスケットボールの複数年放送権も持っている。

加入世帯数は今年8月末時点で264万世帯。03年3月末時点では249万世帯だったので、11年間で5.8%ほどの増加。タダで見られることが当たり前と思っている国民が多いのだから、この増加率を苦戦と見るのか、善戦と見るのかは意見が分かれるところだろうが、実は筆者宅も今年6月に加入した。

きっかけはTBSが今年4月からのクールで放送したドラマ『MOZU』。人気作家逢坂剛原作のハードボイルドものだ。放送時間は木曜9時、つまり深夜帯ではないのに、かなり過激な暴力シーンが次から次へと飛び出し、よくTBSは放送に踏み切ったなと思って関心した。

原作がしっかりしているせいか、内容はむちゃくちゃ面白かった。この作品、WOWOWとの共同制作で、TBSでの全10回の放送が6月10日に終了すると、6月22日から今度はWOWOWで続きを放送する、という仕掛け付き。

まんまとWOWOWの思惑にはまり6月から加入した。WOWOWの視聴料は月々2,300円だが、加入時期次第では最大当初2カ月が無料になる。目当ての番組が終わったら解約することが可能なシステムになっている。

fig1実際、MOZU効果なのだろう。毎月4万件前後の新規加入にほぼ同件数の解約が入るので、月々の純増件数は2,000件くらい。2,000件前後の純減になる月もあるが、今年6月は新規加入が8万1,100件と、例月の倍。9月に入ると解約が出てくるはずだ。

錦織効果でどのくらいの新規加入件数になるのかは、10月初旬に公表される月次実績を待つことになるが、MOZU効果で増えた分がどのくらい落ちるのかも見物だ。

ちなみにわが家は解約せず継続している。とにかくドラマの質がすごいのだ。MOZUを放送した時間帯は6回連続と決まっているらしく、MOZUの後番組が終了し、さらに次の番組が始まっているが、毎週必ず録画して見ている。

前フリが長くなったが、01年4月の上場から13年が経過。上場直前時点で117億円もの債務超過だった上、当初は赤字に苦しんだが、近年は着実に利益を出している。ポイントはどうやら番組ジャンルごとの費用の掛け方にあるらしい。確かにドラマの作りはすごく、出ている役者は演技がうまい役者ばかりだが、得てしてうまい役者はギャラが安い。ギャラが高そうなアイドル系のタレントは全く出ていない。

上場直前時点で117億円もあった債務超過のほうは上場時の公募で解消、04年5月の第三者割当増資も効いて、今や自己資本比率は64%という高水準。直近本決算の14年3月末時点で利益剰余金は288億円である。

錦織効果で決勝前日の9月8日終値ベースのPBR(株価純資産倍率)は1.76倍に上昇しているが、この錦織効果は2カ月後に必ず一定水準の反動減を呼び込む。

錦織効果で獲得した加入者がどの程度定着するのか。それが判明するのは12月の月次が出る来年の年明け早々だ。

WOWOWの連結業績推移
売上高 営業利益 経常利益 当期純利益 純資産 自己資本比率 配当 期末株価 PER PBR 配当性向
02/3 65,343 -2,050 -1,945 -2,141 4,289 8.7% 0 320,000 7.47 0.0%
03/3 62,998 1,665 1,152 538 4,660 11.5% 0 77,200 14.34 1.66 0.0%
04/3 61,610 486 -272 -1,072 3,438 8.2% 0 118,000 3.44 0.0%
05/3 63,990 3,086 2,665 2,203 10,489 24.8% 2,000 367,000 22.52 5.05 12.3%
06/3 64,113 2,518 2,346 1,815 12,005 29.0% 3,000 265,000 21.10 3.18 23.9%
07/3 66,296 3,109 4,088 2,020 14,416 35.8% 2,000 374,000 26.70 3.89 14.3%
08/3 65,419 5,448 6,130 3,438 16,682 39.6% 3,000 107,000 4.49 0.93 12.6%
09/3 66,924 4,018 4,347 3,051 19,363 48.4% 3,000 135,000 6.38 1.01 14.2%
10/3 65,514 5,561 5,879 4,509 23,729 53.0% 3,000 197,800 6.33 1.21 9.6%
11/3 65,930 5,631 6,109 3,151 26,237 56.4% 4,000 138,700 6.35 0.77 18.3%
12/3 66,583 4,830 5,027 3,397 29,335 61.1% 4,000 179,600 7.63 0.89 17.0%
13/3 70,542 6,420 6,822 4,294 33,584 59.4% 6,000 247,400 8.31 1.07 20.2%
14/3 70,274 7,186 7,545 4,766 34,203 64.8% 60 3,680 10.94 1.45 17.8%
15/3予 71,500 7,900 8,000 5,100 60 17.8%

※金額の単位は配当と株価のみ円、それ以外は百万円。PER、PBRは実績ベース

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
戻る