取材の現場から 「昇龍道プロジェクト」 HIS乗り込み、名鉄が本気

取材の現場から 連載


トヨタ工場見学を観光資源に

愛知県蒲郡市の複合型観光施設「ラグーナ蒲郡」の再建にHIS(9603)が乗り出すことになった。ラグーナは「海の軽井沢」を目指し、1990年代から自治体と地元企業で開発を進めたものだが、バブル期の計画だったこともあり、なかなか軌道に乗らず、今回、ハウステンボス再建の実績を持つHISに、商業・レジャー施設部門のてこ入れを委ねることになった。

「実は、HISの澤田秀雄会長は、2008年からマリーナジャパンという会社でマリーナ事業を展開している。スカイマークで空のビジネスをやったので、『次は海だ』とマリーナ事業に意欲を示している」(マリーナ関係者)

マリーナジャパンは兵庫県芦屋と熊本、広島、北海道苫小牧、そして大飯原発のある福井県おおい町の5カ所のマリーナを運営。ハウステンボスにもマリーナがあり、澤田会長はラグーナで7つめのマリーナを手に入れた形となる。これらマリーナをクルーザーでつなぎ、複合的な展開も構想しているのでは、とみられている。

ところで、HISがラグーナ再建に携わることで、中部経済にちょっとした変化が生まれる可能性も見えてきた。HISが自社の旅行パックに、トヨタ(7203)の工場見学を組み入れるというのだ。

トヨタはラグーナを運営してきた蒲郡海洋開発の主要出資会社で、歴代社長も送り込んでいる。ラグーナ救済を要請する中で、HIS側が工場見学をトヨタに提案したようだ。

名鉄(9048) 週足

名鉄(9048) 週足

中部地区では「昇龍道プロジェクト」という取り組みが行われている。中部・北陸9県による外国人観光客誘致策だ。が、この昇龍道プロジェクトはいまひとつ。北陸には兼六園や東尋坊、岐阜には白川郷などあるが、愛知県にはインパクトのある観光資源がなく訴求力に欠ける。そこで、あの世界のトヨタの工場見学を入れれば、外国人にもアピールできるのではないか、というわけだ。

排他性が強いと言われる中部地方に、トヨタを後ろ盾としたHISという新たな血が入ることで、従来にない柔軟なアイデアが出てくる可能性はあり得る。

この昇龍道プロジェクトは、名鉄(9048)が自社の「重点テーマ」として掲げている。先の株主総会でも昇龍道プロジェクトに言及し、「名古屋、北陸は一番の事業基盤。グループを挙げて商品開発に取り組む」と述べたという。

HISによるラグーナ再建を端緒とし、観光事業が中部圏の主要産業に格上げとなる可能性に期待したい。

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