特報 SESC 日本風力開発への課徴金納付命令

特報 連載


第2四半期以降の業績注視

8月29日、日本風力開発(2766・2部)が、課徴金納付命令に関する審判手続きの結果を公表した。本件は昨年3月29日に証券取引等監視委員会(SESC)が金融庁に対し、日本風力開発に約4億円の課徴金納付命令を下すよう勧告を行った件で、約1年半にわたる審判手続きが行われてきたもの。

日本風力開発(2766) 週足

日本風力開発(2766) 週足

事のあらましをざっとおさらいしておくと、日本風力開発の2009年3月期決算について、実態のない風力発電機斡旋(あっせん)取引に係る売上計上があり、連結経常損益が4億400万円の赤字であるところを18億6,100万円の黒字に、また、連結当期純損益が16億3,500万円の赤字であるところを6億3,000万円の黒字と記載した。つまり赤字を黒字と偽った粉飾決算を行ったとSESCは認定。この09年3月期の有価証券報告書を参照書類とした公募増資や新株予約権付き社債の募集などで総額88億円を調達したので、課徴金の計算式に従って4億円という課徴金を算出した。

これに日本風力開発は猛反発し、審判手続きで徹底的に争う姿勢を鮮明にしたわけだが、そこまで日本風力開発が反発したのは、対象となっている取引を「架空」だと断言されたからだ。当初SESCが調査に入った段階では、収益計上時期の問題だったのに、突然取引自体が架空だという話に変わったというのが、日本風力開発側の主張である。

問題になった取引では、風力発電機の納品自体は翌期だったので、09年3月期中に受け取った斡旋手数料は売り上げ計上ではなく、いったん負債勘定の未収収益に計上しておき、実際に納品が完了した時点で未収収益から売上高勘定に振り替えるべき、というのがSESC側の当初の指摘だったという。

当時監査を担当していた新日本監査法人が売上高計上を認めているだけに、会社側としてはこれでも納得しかねる部分はあるだろうが、これだけなら見解の相違程度の話だ。

しかし日本風力開発とその取引先との構造的な関係がコトを複雑にした。対象となった発電機は、ゼネコンがメーカーから購入し、ゼネコンは日本風力開発の子会社であるところの発電所経営会社から施工を請負い、工事が完成したら発電所経営会社に引き渡すという流れになっている。

この流れの中で、日本風力開発はメーカーとゼネコンの間に立って斡旋手数料を受け取る立場。自らの子会社がエンドユーザーになるところの発電機を、メーカーがゼネコンに売却する際の仲立ちをする。このスキームだと、メーカーは決算期末の3月末までに受注を獲得でき、ゼネコンは予約レベルとはいえ、工事に必要な資材の確保ができる。だが、SESCは日本風力開発のハラ一つで取引を動かせると考えた。

1年半という過去に例がない長期間の審判手続きを経て、ようやく出た結論はやはりクロ。10月29日までに3億9,969万円を納付せよという行政処分が決まったため、日本風力開発は同日付で同額を特損に計上。業績予想も純益の部分だけ下方修正した。

日本風力開発はこれであきらめる気は毛頭ないらしく、リリースには「速やかに裁判所に対し、課徴金納付命令の決定の取り消し訴訟を提起する」、とある。

もっとも、この結果について、市場は折り込み済みだったようで、株価はほとんど反応していない。反応したのは、8月12日に第1四半期決算が出た翌日。前日の11日には173億円の金融機関借入について、来年7月末までの延長合意を取り付けたというリリースを出している。もともと今年5月の段階で、来年4月末までの延長合意を取り付けたというリリースを出しており、今回はさらに3カ月延ばせましたという内容だったから、これに市場がほとんど反応しなかったのは当然ではある。

一方、12日発表の第1四半期実績では、売上高は前年比12%減、営業赤字額が前期比で1億円強拡大した。15年3月期の通期計画が前期比で売上高が10億円増、営業利益が8,700万円増なので、第1四半期の出遅れに市場が反応したことになる。

今月25日には総額30億円の社債償還期限を迎えるが、これも今月12日に社債権者集会を開いて3年間の延長合意を取り付ける。年間の営業損益が黒字なのに、今の時点でこの会社の息の根を止める決断ができる社債権者がいるとは思えないので、この延長合意もおそらく通るのだろう。

ただ、営業損益は営業キャッシュフローに直接インパクトを与える。風力発電事業は風が吹く冬場に売上高が集中するため、勝負は常に第4四半期とはいえ、この時点で行政処分はいつ出るのか分からない微妙なタイミングだった。それだけに、第1四半期の出遅れに市場が反応したのは当然だろう。

9月2日12時半時点の株価は575円。最終赤字予想なので予想PERは計算しても意味がなく、実績PBR(株価純資産倍率)は0.89倍。過去の水準からするとだいぶ低い。

金融庁との対決が長期化することはほぼ間違いない中、債権者の態度を左右するものは、まさにこの会社自身の“稼ぐ力”以外にはない。第2四半期以降、同社の業績はますます市場の厳しい“審判”を受けることになるだろう。

日本風力開発の2009年3月期決算訂正後の業績推移  
03/3 04/3 05/3 06/3 07/3 08/3 09/3
売上高 4,064 4,872 5,827 7,942 8,094 10,522 4,592
 機器販売事業 3,926 4,428 4,814 6,457 6,403 8,062 1,302
 売電事業 96 433 1,012 1,485 1,691 2,460 3,290
営業利益 193 402 730 1,022 774 1,657 -361
当期純利益 95 359 273 380 255 656 -1,635
総資産 6,408 13,462 19,663 29,376 45,405 63,238 71,710
純資産 1,619 3,921 7,037 7,360 7,655 11,052 14,034
自己資本比率 25.3% 29.1% 35.8% 25.1% 16.5% 17.1% 19.2%
有利子負債 4,440 8,556 11,866 21,422 34,432 47,471 46,809
EBITDA 250 493 1,106 1,640 1,586 2,713 1,242
有利子負債/EBITDA 18 17 11 13 22 17 38
期末株価 531,000 282,000 237,000 221,000 292,000 424,000 265,600
実績
PER
(訂正前) 110.2 58.4 76.6 56.5 111.7 66.2 51.5
(訂正後) -19.9
実績
PBR
(訂正前) 7.6 5.8 3.3 2.9 3.8 4.4 2.1
(訂正後) 2.4
日本風力開発の2009年3月期決算訂正後の業績推移2  
10/3 11/3 12/3 13/3 14/3 15/3予
売上高 5,112 5,246 5,986 6,283 8,207 9,204
 機器販売事業 130 69
 売電事業 4,957 5,176 5,986 6,283 8,207 9,204
営業利益 -784 -2,459 -1,329 -726 1,266 1,353
当期純利益 -2,394 -5,696 -5,506 3,862 373 -202
総資産 101,001 83,969 73,837 60,714 53,671
純資産 20,059 13,512 7,850 12,049 12,746
自己資本比率 16.6% 12.4% 6.6% 14.9% 18.0%
有利子負債 51,789 47,059 47,957 34,949 30,865
EBITDA 1,905 803 2,130 2,291 3,862
有利子負債/EBITDA 27 59 23 15 8
期末株価 279,300 79,600 71,700 117,300 685
実績PER (訂正前) -15.7 -2.1 -2.0 4.6 27.6
(訂正後)
実績PBR (訂正前) 2.2 0.9 1.5 2.0 1.1
(訂正後) 2.5 1.1 2.2

※単位は金額は株価は円、それ以外は百万円、有利子負債/EBITDA、PER、PBRは倍、青字部分が訂正箇所

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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