深堀健二の兜町法律放談 2014年株主総会を巡る話題【前編】

兜町法律放談 連載


6月の総会集中シーズンを終え、投資家の皆さまも一段落しているところかと存じますが、今月は今年の株主総会から、話題となった事件を振り返ってみたいと思います。

1 オンコセラピー・サイエンス事件

マザーズ上場のオンコセラピー・サイエンス社が、定時総会において、議決権行使書を含む出席株主の議決権数が取締役選任議案を決議するのに必要な定足数を満たさず、同議案の審議ができなかった事件です。

会社法は、役員の選任議案の定足数を原則として議決権の過半数、3分の1以上の割合を定款で定めた場合にはその割合以上、と定めており、同社も含め、多くの上場企業では、定款で「3分の1以上」と定足数を緩和しています。

そうすると、同社では、議決権の3分の1すら集めることができなかったということであり、「異常事態」であることは明らかです。

かかる異常事態の背景として、同社の大株主と経営陣が対立しており、経営陣の方針に反対する大株主が、自分の支持者を含めて、議決権行使書の提出および総会への出席を拒否した可能性が考えられるところです。

同社の筆頭株主・創業者は著名な医学博士ですが、同社は、新聞社による創業者の名誉を毀損(きそん)し得る内容の報道を巡って新聞社に対して損害賠償請求訴訟を起こし、提訴から3年半経過した本年5月、敗訴判決を受け、控訴しないことを公表しています。

この裁判に対する対応、具体的には、会社の費用で裁判を続けるか否かを巡って、「最高裁まで争うべき」と主張する筆頭株主と、業績悪化状況下、裁判の終了を主張する経営陣の意見が対立したために、筆頭株主が総会の決議に協力しなかった可能性がありそうです。

本件は任期満了に伴う役員選任議案でしたので、審議採決できなかったことにより、取締役の定員を欠く事態になります。しばしば「定員を欠いた場合どうなるのか」という質問を受けるのですが、会社法は、新たに選任された役員が就任するまで引き続き前役員が役員としての権利義務を有すると手当てしていますので、経営陣は法的には引き続き役員の立場に残ります。

今後、大株主と経営陣の間で、経営方針、人事案を巡る話し合いが行われることになりますが、交渉が決裂すれば、会社提案と株主提案が真っ向対立し、委任状争奪戦に発展する可能性もあると思われます。

2 セイノー議案撤回事件

運輸会社であるセイノーホールディングス社が、定時総会の開催直前(15分前)になって定款変更議案を撤回した事件です。

議案の撤回について、会社法上、明文規定はありませんが、総会で審議すべき議案は取締役会決議事項であることから、取締役会決議により自由に取り下げが可能だというのが通説的見解であり、実は話題にならないものも含めると、多くの会社で会社提案の取り下げが行われています。

しかし、会社が一度議案として審議採決することを決定した議案について、会社が可決の見込がないからといって、勝手に取り下げることが本当に許されるのでしょうか。

本件では、無議決権優先株式を発行できるよう「定款の一部変更に関する議案」を上程していたところ、集まった議決権行使書の状況から可決できないと判断し、議案の取り下げに至ったと理解されています。

しかし、本来であれば、株主総会において、会社側の賛成派株主と反対派株主とが、公開された場において、議案に関する意見を出し合い、徹底的に議論することが、株主総会のあるべき姿ではないでしょうか。

特に、当該議案に賛成していた株主の立場からすれば、反対派株主を説得する材料を提供しようと、意気込んで出席する場合もあるでしょうから、当職としては、議案の撤回には株主総会の同意が必要なのではないか思料する次第です。

そういう意味では、可決の見込みが乏しい中、あえて買収防衛策継続議案を撤回しなかったカプコンの対応は、すがすがしく映ります。

深堀健二氏プロフィール
八重洲総合法律事務所弁護士(証券アナリスト資格保有)。平成5年慶應義塾大学法学部法律学科卒、都市銀行入行、証券会社勤務を経て平成22年12月弁護士登録。
戻る