取材の現場から 「肉関税」引き下げの裏事情 

取材の現場から 連載


歓迎でも口にできないメーカー 異なる牛と豚の関税

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉は、夏の大筋合意には至らない見通しが強まった。ただ、日本政府は、重要5品目は「聖域」だとして関税撤廃の例外にする方針だったが、牛肉と豚肉に関しては関税を見直す方向で議論が進んでいる。むしろ、肉の関税をどう下げるかが議論の焦点となっている。

関税見直しに対してJAなど生産者は大反対だが、食肉業界の関係者の多くは「関税が利権になっている。特に豚のようなゆがんだ関税は改めた方がいい」と、政府の妥協には理解を示しているようだ。

まず牛について。現行の38.5%が30%や20%引き下げられても、国内市場の大勢に影響はないとみられている。輸入牛肉と国産牛は既にすみ分けができているからだ。

「輸入と国産の価格差は200-800%と大きいから、関税が20、30%変わっても影響は軽微だ。むしろ、輸入牛の中での競争が厳しくなる。TPPの合意が遅れ、豪州などとのEPA(経済連携協定)が先行すれば、米国産牛肉の競争力が落ちる」(食肉コンサルタント)。

イオン(8267)では既に豪州産牛肉を強化しており、惣菜やPB(自社ブランド)にも豪州牛を幅広く使っている。一方、米国産牛にこだわりを示す吉野家HD(9861)にとってTPPの遅れはダメージとなる。輸入牛肉の中で勝ち組・負け組の行方が指摘されるようになってきた。

豚はどうなのか。豚肉の関税は通常とは異なる差額関税制度を採用しており、簡単に言えば、どんなに安い肉も1kg当たり546円以上になるような仕組みとなっている。が、この制度の逆手を取り、「すそもの」と呼ばれる安い部位と混ぜて節税する手法や、「裏ポーク」と呼ばれる脱税行為も横行していた。

日本ハム(2282) 週足

日本ハム(2282) 週足

「近年はコンプライアンスが厳しくなっているため、輸入豚肉を扱うことがストレスになっていた。TPPで関税制度が改善されれば、節税のため不要な部位を余計に仕入れる必要もなくなり、欲しい部位を必要な分だけ輸入できるようになり、ありがたい」(ハムメーカー)。

というように、日本ハム(2282)伊藤ハム(2284)プリマハム(2281)スターゼン(8043)といったメーカーは今の流れを歓迎している。しかし、その期待の声はほとんど聞こえてこない。

「各社ともTPPは歓迎だが、国内の畜産業者と取引もあり、自社で牧場も経営しているから、メーカー自身が生産者でもある。だから、TPP歓迎と表向きには口が裂けても言えない」(前出・コンサルタント)という。

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