特報 石山ゲートウェイ ライツ発表後、異例の株高

特報 連載


実施要件に株主総会決議 投資家が会社側の自信を評価か

市場価格に比べて極端に低い権利行使価格ゆえに、実施公表と同時に株価の大幅な下落を招くライツオファリング。

6月12日に実施を公表した石山Gateway Holdings(7708・JQ)の株価が、その常識を破り、公表の翌日以降、上昇する珍事が起きた。

石山Gate(7708) 日足

石山Gate(7708) 日足

石山ゲートウェイ社の上場は2001年。上場当時はフォトニクスという社名で、半導体製造装置用のステッパーなど、超精密計測センサーなどを製造するメーカーだった。営業赤字に転落した08年ごろから同業のベンチャーへの投資事業に軸足を移し、09年に一度経営者が入れ替わり、学校対象のコンサル事業や太陽電池製造などに進出。自動車部品加工や広告事業などが加わり、HIS出身の三木隆一氏が代表を務めるファンドにスポンサーが交代したことを機に社名がゲートウェイに変わったのが10年9月。

11年6月末時点で債務超過に転落、翌12年6月末にデッドエクイティスワップを実施して2期連続での債務超過を回避している。現社名になったのは昨年秋。

現在の事業は自動車関連部品などの製造事業、旅行代理店の下請け業務であるホテルや交通機関などの手配、それに婦人服の販売が売り上げの3本柱だが、利益が出ているのは自動車関連部品の製造のみ。それ以外に不動産販売、医療機関への送患サポート、バイオディーゼル発電のコンサルサービスなど多岐にわたる。

14年6月期第3四半期末(14年3月末)時点で純資産は5億5,569万円、利益剰余金は19億6,371万円のマイナス。

その石山ゲートウェイが今回調達をもくろむ金額は最大で22億3,300万円。総資産の21億円を上回る金額である。権利行使価格は60円なので、公表当日の終値151円に対するディスカウント率は60.3%。過去24例の中では高い方から数えると9番目。

普通なら公表翌日から行使価格の60円めがけて一気に下がっていくところだが、なぜか翌日は急上昇。200円を付ける場面もあった。16日以降徐々に下げてきてはいるが、それでも23日終値は158円と、公表当日終値の151円をまだ上回っている。

ほかのライツオファリング実施企業と比べて財務内容が良いわけでもないし、調達額の規模も企業規模に対してかなり大きい。ディスカウント率も高い。証券会社の引受が付かないノンコミットメント型でもある。それなのになぜ株価だけが異例の動きを見せているのか。

今回の資金使途は、権利行使率が100%であれば最大で22億円の調達になる。成功した場合の資金使途は、借入金の返済に回るのは2億円だけで、8億5,000万円はバイオディーゼル発電機の購入など、新規に参入する発電事業に充てられる。

債務超過解消のために調達資金の大半が借入金返済に回り、設備投資や新規事業に回らないケースとは異なる。とはいえ、実施理由が債務超過解消ではなく、調達資金の一定割合が新規事業や設備投資に回る資金使途計画になっていたライツオファリングはほかにもある。ゆえに資金使途が株価を押し上げたとは考えにくい。

そうなると、過去のライツオファリングとの違いが株価に影響を与えたと考えるのであれば、唯一違うのは今回のライツオファリング実施要件に株主総会における決議を加えている点ということになる。

ライツオファリングは法令上、取締役会決議だけで実施でき、総会決議は不要だが、権利行使率を上げるためディスカウント率を高水準に設定する。そのため株価が下落して既存株主は権利行使をしないとストレートに含み損を抱えてしまう。

権利行使をすればナンピン効果だけは享受できるので、権利行使の意思決定プロセスは完全に自由かというとそうとは言えない面がある。にもかかわらず、取締役会決議だけで実施を決めてしまえるという点に、当局や市場関係者が疑問を抱いているのは事実だ。

行儀が良ければ投資家が評価するというものでもないだろうが、少なくとも新規事業に対する勝算に会社側がある程度自信を持っていないと、総会決議を要件にはできないということはあるだろう。投資家が会社側の自信を評価したということでしか、今回の株価の動きは説明が付かないのである。

ライツオファリングの実施事例

ライツオファリングの実施事例(クリックで拡大)

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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