【深層】を読む 波乱なき日米上値追い展開 「低ボラ相場」の終焉にらむ

【深層】を読む 連載


HF業界は苦戦気味

このところの相場は、日々の上げ下げを伴いながらも、意外に底堅い展開が続いている印象だ。これは現時点では、日本株よりも米国株市場でより顕著に見られる傾向で、足元で史上最高値を何度も更新しながらも、不思議に過熱感に乏しい相場が継続している。これは数値上からも明らかな傾向で、相場のボラティリティー(変動率)は低水準にあり続け、「高値波乱」という状態に陥らずに、最高値を更新し続けるという珍しい現象が起こっている。

これは、世界中のヘッジファンド(HF)、とりわけトレーディングを主体に考えるHFT(高頻度取引)を得意とする戦略を取っているHFにとっては、悩ましい状況を招いている。要するに彼らにとって「儲かりにくい」相場環境にあるのだ。HFはおおむねボラティリティーを収益の源泉としている。言い換えれば、荒れる相場ほど儲けのチャンスが多いのだ。相場というのは、往々にして上昇局面では時間をかけるものの、下落局面は急激に訪れることが多い。つまり、上昇局面よりも下落局面の方がボラティリティーが高くなる傾向が明らかで、そのため、HFは下落局面で儲ける傾向が強くなる。これは投資家にとっても有意義で、基本的に「バイ・アンド・ホールド」の年金資金などにとって、下落局面で儲かる可能性の高い戦略を組み入れることで、年金資産全体の運用効率を上げることが可能になる。この特徴を生かして、近年のHFは世界中の年金資金からの受託を増やし、それにレバレッジを掛けて運用することで、巨大化への道を歩んできたという歴史がある。

ところが、ここ最近のボラティリティーが低迷している現環境下では、HFの「儲けのネタ」に見放される状態にあり、HF業界は苦戦気味だ。基本的な「バイ・アンド・ホールド」の年金資金にとっては、HF以外の運用部分はそれなりに好調だろうから、全体としては、計画通りに回っている可能性が強い。しかし、競争が激しいHF業界にとっては、ボラティリティーが低迷して儲かりにくい相場になっている今は、まさに生き残りを懸けた局面になりつつある。

これは、日本株市場でも見受けられる傾向になりつつある。この1-2カ月の相場展開は、日計りなどの短期トレードを中心とする投資家にとっては、あまり儲からない相場環境だろう。一方、中期的な視点に立つ投資家にとっては、比較的安心感があり、日中の相場を凝視していなくて、適度にポジションを放置していても、方針を大きく間違っていない限り、それなりに利益を積み重ねることができていると思う。銘柄研究に、ある程度の時間をかけることも可能だし、それによって得られる果実も、かなり実感できると思う。

ただ、残念ながら、こういった穏やかで落ち着いた日々は永遠には続かないのが相場の常だ。どこかで状況が急変し、ボラティリティーが急激に上昇する局面が、いずれやってくるだろう。それがいつ、どういった理由で訪れるかは、事前には分からない。いらついたHFが仕掛けてくる可能性も否定できないし、世界のどこかで突発的な事件が発生するかもしれない。何かが起こった時に、自分がどう対処すべきかについて、こういった静かな時に考えを巡らせておくことは無駄ではないと考えている。急激な渦の中に巻き込まれてしまった後で、冷静な判断を下すことは簡単ではない。比較的落ち着いた環境の今こそ、次の展開で何をすべきか、じっくり考えを巡らせておきたい。

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