特報 続・ユニチカへの金融支援策 株価下落に優先株の存在

特報 連載


参考になるフジタの例

前回に引き続き、ユニチカ(3103)の金融支援策をもう少し掘り下げてみたい。ユニチカの株価は支援策を公表した5月26日の終値は57円だったが、翌日は46円に急落、以後43-47円前後で推移している。

ユニチカ(3103) 週足

ユニチカ(3103) 週足

その理由は明かに優先株の存在だろう。今回、ユニチカは三菱東京UFJ銀行から217億4,000万円、みずほ信託銀行から36億3,500万円、三菱UFJ信託銀行から21億2,400万円、そして政策投資銀行系のファンド・ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(以下JIS)から100億円を調達する。銀行分は全てデットエクイティスワップで、JIS分がニューマネー。

2014年3月末時点で純資産は194億円あるが、15年3月期は繊維部門など不採算部門の抜本的な整理を実施するので、370億円の最終赤字予想だ。そこで、194億円マイナス370億円のままだと160億円の債務超過になるから、375億円の出資と包括利益21億円で、15年3月期末の純資産は220億円になる、というシナリオだ。

有利子負債は15年3月末時点で前年同期比386億円減なので、デットエクイティスワップ以外の111億円は、キャッシュフローから返済するのだろう。

合計375億円はすべて優先株で調達、発行条件は引受者ごとに異なる。まず三菱東京UFJ銀行が引き受けるのはA種優先株。優先配当率は1.2%なので、年間配当額は2億6,088万円。普通株への転換権が付いていて、転換は20年7月末以降から可能になる。

みずほと三菱UFJ信託銀行が引き受けるのはB種優先株。優先配当率は2.374%なので年間配当額は1億3,671万円。普通株への転換は同じく20年7月末以降だが、条件次第では18年7月末以降可能になり、一部は金銭での買い取りを会社側に要求できる。

最後にJIS引受分がC種。優先配当率は実に6%という高水準。年間配当額は6億円。優先配当金の支払い、残余財産の配分、会社への買い取り請求、いずれの順位でもA種、B種に優先する。

優先株は株という名前が付いてはいるが、実質借金と同じだ。優先株の株主には普通株の株主への配当に優先して配当金を支払わねばならず、残余財産の分配権も普通株の株主に優先する。会社としては、優先株をすべて買い取り終わって初めて会社の再建が完了したと言えるもので、かつてゼネコンの再建でも多用された。

このため、一株当期純利益や一株純資産を計算するときは、当期純利益や純資産から優先株分を差し引いた残りの額を、普通株の発行済み株式総数(自己株は控除)で割って算出する。

そこで思い出すのがフジタの優先株だ。1990年代後半から中途半端な損失処理を続けた結果、傷口を広げ、本当に抜本的な処理に至ったのは2005年9月。このとき、スポンサーとして優先株を引き受けたのが、かのゴールドマン・サックス(以下GS)。2年後、有利子負債は劇的に減り、財務も改善したが、株価はGSによる支援前の3分の1に下落した。その理由は明快で、1株純資産はGSの優先部分を差し引くとマイナス、つまり普通株の株主にとっては依然として債務超過状態だったからだ。おいしいところはすべてGSに持って行かれるので、株価は低迷したままだった。

フジタの金融支援前後の財務状況
05/3 07/3
売上高 319,588 351,288
営業利益 10,099 9,659
  営業利益率 3.2% 2.7%
当期純利益 △145,206 7,845
総資産 267,621 241,823
純資産 △119,240 28,591
  うち優先株分 30,000 40,166
  うち普通株分 △116,277 △13,418
有利子負債 159,445 3,328
普通株のEPS △726.15 15.33
普通株のBPS △746.36 △35.58
株価 1,410 446
※EPS、BPS、株価は円、それ以外は百万円単位

ほぼ同時期に抜本支援を受けた長谷工は、優先株の条件がさほど厳しくなかったため、2年間で株価が3倍になった。ちなみに当時のフジタの優先配当率はTIBOR+4.5%。出来上がりで5.2%前後という高率だった。

今回のユニチカのC種優先株は6%の配当率で、フジタのケースの上を行く。ユニチカが公表した今後の計画数値を元にして、おおざっぱに18年3月期までの予想をシミュレーションしてみたのが別の表だ。

今後、高採算の高分子事業の売上げ構成を上げていくことで、営業利益率を引き上げていく計画だが、18年3月期で営業利益率を現在の倍以上の9.6%に引き上げるというのはかなり高いハードルに見える。

優先配当はB種とC種については累積もするので、最終黒字に転換するであろう16年3月期分は、前期の累積分を上乗せしてみた。

会社公表値の純資産は375億円の優先株を買い取らない前提とみられるので、優先部分以外の純資産がプラスになるのは、この売り上げと利益の計画が達成できれば17年3月期から。16年3月期までは、業績は向上しているのに普通株の株主には何の恩恵もないという状態が続くし、利益計画がこの通りに行かなければフジタの二の舞になる。

さらに、ユニチカの業績が順調に回復し、優先株の株主が金銭での償還よりも普通株での保有を希望すれば、今回発行される優先株の普通株転換で最大186.5%の希釈化が発生する。25%を大幅に上回る希釈化なので、来る定時株主総会での特別決議を実施要件にしている。

ユニチカには特定の大株主がいない。浮動株割合も4割近い。その中での特別決議である。波乱がないとは言い切れないのかもしれない。

ユニチカの業績予想シミュレーション
売上高 営業利益 営業
利益率
経常利益 当期
純利益
優先配当 純資産 有利子
負債
実額 内優先部分 差額
14/3実 162,686 6,799 4.2% 4,713 583 19,368 19,368 164,552
15/3 165,000 8,000 4.8% 6,000 △37,000 22,000 37,500 △15,500 126,000
16/3 158,400 10,000 6.3% 8,000 7,000 1,730 29,000 37,500 △8,500 122,400
17/3 152,000 12,000 7.9% 10,000 9,000 1,000 38,000 37,500 500 118,800
18/3 146,000 14,000 9.6% 12,000 11,000 1,000 49,000 37,500 11,500 115,000

※単位:百万円、15/3以降の予想値は色掛け部分が会社公表値。それ以外は筆者推定値。

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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