特報 ユニチカへの金融支援 ニューマネー100億円が生きるか

特報 連載


カギ握る高分子事業

5月26日、ユニチカ(3103)が抜本的金融支援を受けることを公表した。もともと旧・三和銀行が所属していたみどり会の一員なので、支援は三菱UFJ銀行を中心とする銀行団で、支援額は総額375億円。

ユニチカといえばバレーボールとマスコットガール。真っ先に東洋の魔女を連想する人はもはや60歳代以上で、横山樹里あたりを思い出すのは大体50歳代以上。バレーボール選手がアイドル待遇を受けたのはこの人あたりが最初ではないだろうか。

マスコットガールの方も連想する人物で世代がわかる。風吹ジュンの名前を出せるのは50歳代半ば以上。手塚理美や紺野美紗子の名前が出せるのも大体50歳代以上だ。本上まなみや米倉涼子あたりでようやく30歳代だろうか。

ユニチカ(3103) 週足

ユニチカ(3103) 週足

そのユニチカ、創業は1899年(明治32年)。当時の大阪財界有志の出資で設立され、当初は綿紡績が主力で尼崎紡績という社名だったが、18年(大正7年)に大日本紡績に社名を変え、戦後の64年にニチボーに社名を変えた。東洋の魔女・東京五輪の女子バレーボールチームはニチボーの貝塚工場のチームが中核になって組成されたので、東京五輪をリアルで知る人にとっては東洋の魔女は今もニチボー貝塚だ。東京五輪翌年の69年、子会社の日本レイヨンを吸収合併した際に現社名に変えた。

今年は創業125周年に当たるが、その年に金融支援を受けるというのは、当事者にとっては忸怩(じくじ)たる思いがあるだろう。

かつて隆盛を極めた繊維会社がたどった道同様、ユニチカも経営悪化の主要原因は繊維部門の不振だ。化学繊維部門はかなり以前に大幅な縮小を行っているが、綿紡績の縮小が同行他社に比べて後れを取ったことが業績悪化の要因、と日本経済新聞は報じている。

実際、直近の2014年3月期の営業利益67億円の内訳は、68億円が稼ぎ頭の高分子事業。高分子事業はフィルムや、自動車・スマートフォン用途の樹脂事業、土木用途などの不織布などを手掛ける事業部門だ。

硝子繊維などを扱う機能材部門の貢献度は高分子事業に比べると大きく見劣りする19億円。繊維は4億円と、辛うじて黒字だが、全社調整分31億円を3部門に配賦したら、繊維は赤字というのが実態だろう。

純資産の残高は238億円あり、この金額だけを見るとさほど危機的な状況には見えないが、自己資本比率はわずか6・1%。これまで幾度となく実施してきた不採算事業からの撤退で、1度の決算期に出している赤字は数十億円から100億円単位。実際には危険水域ということになる。

実際13年3月期は108億円の最終赤字。特損自体は減損を中心に合計84億円だったが、赤字になったことで繰り延べ税金資産の取り崩しを余儀なくされ、これが63億円にも上ったことが響いた。

もともと資本金が厚かったので、14年3月末時点でも資本金と資本剰余金の合計額は300億円あるが、利益剰余金は113億円のマイナス。

今回の375億円の支援の内訳は、217億4000万円が三菱東京UFJ銀行で、みずほ銀行が36億円、三菱UFJ信託銀行が21億円。残る100億円は日本政策投資銀行系の事業再生ファンド。

いずれも出資形態は普通株の引き受けではなく優先株。銀行引き受け分はデッドエクイティスワップなので、ニューマネーは事業再生ファンドが出す100億円部分のみ。この100億円はフィルム事業、樹脂事業、不織布事業に投じられる。

日ごろもはや手遅れなのではないかと思いたくなる資本注入を目にする機会が多く、そういうエクイティでは、いくらもっともらしい資金使途を語られてもしらけるばかりだが、さすがに今回はニューマネーが生きそうに見える。

資本注入は7月末付で実施されるので、バランスシートが変わってくるのは9月中間期からになるとはいえ、第1四半期で高分子事業がどれだけの実績を出せるかは今後を占うカギになるだろう。

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著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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