深堀健二の兜町法律放談 会社法改正(前編) ガバナンスについて

兜町法律放談 連載


平成18年施行後大きな改正のなかった会社法がいよいよ今国会で可決、来年4月1日に施行される見込みとなりましたので、今回はガバナンスに関する改正点について整理したいと思います。

1 上場会社における社外取締役設置原則

社外取締役設置の義務化が見送られたことが大きく報じられていますが、こと上場会社においては、社外取締役を原則として置かなければならなくなりました。

すなわち、改正法では、社外取締役を置いていない上場会社は、総会で「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明しなければならなくなり、上場会社が社外取締役を置くことを原則としたのです。

2 社外取締役や社外監査役の範囲

これまで、親会社の取締役や法務部長が上場子会社の社外取締役や社外監査役に就任している例は多々あったと思いますが、改正法では、親会社関係者は、現職である限り、社外要件を満たさなくなります。

すなわち、親会社の社外取締役は、子会社の社外取締役や社外監査役にはなれなくなり、親会社の社外監査役も子会社の社外監査役になれなくなります(子会社の取締役になれないのは改正前も同様)。

3 監査等委員会設置会社

会社法改正の「一番の目玉」とも評されるのが「監査等委員会設置会社」制度の新設です。監査役会を設けず、取締役会の一組織として、社外取締役が過半数を占める監査等委員会を設置し、監査役会が行ってきた監査を行う仕組みです。

位置付けを説明するのが難しい制度ですが「監査役会の発展形」および「委員会設置会社の簡易形」という2つの説明方法があります。

すなわち、従来は業務執行の「適法性監査」しかできなかった監査役を、取締役会の構成員として取り込むことによって「妥当性監査」もできるようになった、取締役会の監査機能が強化された、という説明が1つです。

もう1つは、指名委員会、報酬委員会、監査委員会の3つの委員会を設けなければならず、経営の自由を過度に制約するとして導入の進まなかった委員会等設置会社から、指名委員会と報酬委員会の一部機能を取り込んだ監査等委員会を設けることによって、経営の自由を確保しつつガバナンス強化を達成する、という説明です。

監査等委員会は3名以上の取締役のみで構成され、その過半数が社外取締役であることが必要となります。他方、先述の通り、上場会社においては社外取締役の設置が原則となりましたので、従来、上場会社のうちで社外取締役の存在していなかった会社においては、社外監査役2名を社外取締役に横滑りさせ、監査等委員会を設置することにより、社外取締役1名追加の必要がなく、社外役員は2名のままで足りることになります。そのため、従来社外取締役の存在しなかった会社で導入が進む可能性が高いと報じられています。

4 多重代表訴訟制度の導入

従来、株主代表訴訟制度では、親会社の株主が子会社の役員の責任を直接追求することが原則できませんでした。そのため、メガバンクの銀行子会社など、上場している持ち株会社の株主が、業務執行子会社の役員に対して代表訴訟を提起することができませんでした。

今回の改正により、一定の要件を満たす場合には、完全親会社の株主が、子会社の役員に対して株主代表訴訟を提起することができるようになりました。ただし、濫訴(らんそ)の防止の必要性から、「親会社の議決権の1%以上を保有」等、要件が厳格に定められていることに注意が必要となります。

次回(6月2日付予定)は、M&A(企業合併・買収)に関する改正についてご説明する予定です。

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