取材の現場から 燃料電池車の普及に薄雲 行き詰まるコスト削減

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水素価格も不確定

燃料電池車(FCV)の実用化は2015年ということになっているが、あと1年にしては、関連情報が伝わってこない。いったいどうなっているのだろうか。

岩谷産業が昨年5月愛知県豊田市に開設した水素ステーション

岩谷産業が昨年5月愛知県豊田市に開設した
水素ステーション

「FCV自体はともかく、水素ステーションの設置が思いのほか進んでいない。目標に掲げる、4大都市圏を中心に全国100カ所の達成は難しいのではないか」(自動車担当記者)。

JX(5020)は40カ所を計画し、岩谷産業(8088)も20カ所を目指すとしているが、水素ステーション建設に拠出される次世代自動車振興センターの「燃料電池自動車用水素供給設備設置補助事業」の交付件数は、昨年度が19カ所、今年度もまだ6カ所にすぎない。水素ステーションの建設には3億―6億円掛かるという。通常のガソリンスタンドは1億円あればできるそうなので、水素ステーション建設には補助金は不可欠だ。その補助金交付が、あと1年の段階でまだ25カ所という状態だ。

「経産省や国交省、消防庁は水素ステーション設置の規制緩和を進めているが、安全規制の緩和が停滞している。タンクやディスペンサー関連の安全性を慎重に見ている。さらに、ここへきての都市部の地価上昇で、思いのほか拠点が決まらない」(経産省関係者)。

FCV自体は、トヨタ(7203)日産(7201)ホンダ(7267)各社で販売価格1,000万円以下のめどが立ったとも伝えられる。しかし、「FCVの触媒に不可欠なプラチナの価格がまだ上昇しており、これ以上のコスト削減は困難」(アナリスト)という観測もある。

水素ステーションの配備も、FCV自体のコスト削減もここへきて行き詰まりを見せているという。

もちろん技術開発は進んでおり、中国工業(5974)はNEDOと共同で、炭素繊維を使った水素ステーション用のタンクの開発を進めており、川崎重工(7012)は水素輸入用の専用船を配備するという情報もある。

政府は6月にも経済対策を公表する見通しだが、その中でFCV計画に関する内容も盛り込まれる手はずだ。経産省では、FCV普及のロードマップを作製中とも伝えられる。

その中で、肝心な問題が先送りとなっている。「水素については、いくらで販売するかが決まっていない。財務省と調整がついていない。課税額は政治判断となるので、役所が勝手に決められないのだ」(前出・記者)。

経産省が唱える「水素社会の実現」は、少々先送りになるようだ。

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