深堀健二の兜町法律放談 タマホーム 第三者委員会報告

兜町法律放談 連載


今月は「第三者委員会」の報告について検討しておりますが、今回は、前回のリソー教育に続いて、日経新聞紙上で高評価を得ていたタマホームの第三者委員会報告について、「何が高評価なのか」検討してみたいと思います。

1 事案の概要

第三者委員会報告書には、多岐にわたる事実関係が記載されていますが、簡略化するとおおむね以下の通りになります。

(1)タマホームは同社で住宅を施工した顧客に対して屋根のソーラーパネルを販売する子会社としてJWを設立。

(2)JWの代表であるY氏は、平成24年4月にタマホームに入社した人物。Y氏は、入社前にJ社として、タマホームの施工で新たに家を建てた顧客(新規顧客)へのソーラーパネル販売を提案し、提携していた。そのため、JWは、新規顧客はJ社に、過去にタマホームで住宅を施工した顧客(OB顧客)はA社の子会社であるB社に発注することとした。

(3)B社は、JWの経常経費のほぼ全額を負担する代わりに、JWは注文をB社に「丸投げ」し、売り上げが上がれば、7%を利益として収受し、残り93%を、毎週金曜締めの翌週月曜払いでB社に支払うことになっていた。

(4)B社およびその親会社であるA社は実質的にB氏なる人物が支配しており、B氏は本件取引開始前のタマホームによる信用調査において「多数の詐欺事件の被疑者として事情聴取歴あり」などの反社会的勢力に近い存在であることが判明していた。

(5)JWが売り上げを計上し、顧客に代金を請求したり信販会社に代金を請求するためには「完工書」を顧客から回収する必要があるところ、JWは工事開始日前に完工書を回収するなどの方法により売上高を水増し計上していた(平成26年5月期に売上計上していた700件中265件が未完工)。

2 親会社取締役の責任への詳細な分析

JWが会計不正を行ったことについて、JWの取締役に法的責任があることは明らかですが、第三者委員会は、さらに親会社であるタマホームの取締役の責任について、極めて詳細な分析を加えています。

そもそも、会社法は、取締役を兼務している場合は別論、子会社における不正行為などに関し、親会社の役員が、いかなる場合に親会社に対する関係での義務に違反するか、明確に規定していません。

しかし、取締役は「当該株式会社ならびにその親会社および子会社からなる企業集団における業務の適正を確保するための体制を決定する義務」を有していることからすれば、子会社の不正行為などに関して一切責任を負わないというのは許されないでしょう。

そこで、第三者委員会は、近時の裁判例も踏まえ、各問題行為(不作為も含む)について、(a)親会社の取締役が子会社による不正行為などを指図した場合、(b)親会社の取締役が子会社における不正行為などを認識しつつも放置した場合、(c)親会社の取締役が子会社における不正行為などを認識していなかった場合、のいずれに該当するかを検討し、本件におけるタマホーム取締役の責任を詳細に分析しています。

3 経営トップの責任に対する切り込み

そして、前回、リソー教育の第三者委員会でも検討した通り、「普通の感覚でおかしい」と思われることに、タマホームの第三者委員会もズバリ切り込んでいます。

本件ではA社から多数の従業員がJWに出向していたことが明らかになっており、取引関係の異常性からしても、「JWがA社の傀儡であった」ことが本件の本質であると第三者委員会は評価しています。

その上で、「オーナー一族」であるタマホームの社長や、2名の取締役の責任について、「善管注意義務違反が認められる、または善管注意義務に違反する可能性がある」などと責任を肯定する結論を出しているのです。

また、その過程においても、「玉木社長のこの点に関する供述は信用できない」など、従業員から見ればドキッとするようなことも平気で記載しています。

このように、タマホームの第三者委員会報告が高く評価を受けているのは、広く一般の投資家が法的関係および事実関係を「正確に理解」するために貢献することに対し強い意欲を持って調査・報告を行ったことが伝わってくる点なのだと思っています。

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