取材の現場から 注目される豪州向け潜水艦 難しい安全保障とビジネスの両立

セクター 取材の現場から 連載


小野寺五典防衛相は4月18日、米企業から三菱重工(7011)に対し、ミサイル部品の輸出要請があったことを明らかにした。武器輸出三原則の撤廃を受けたもので、これで日本企業の武器ビジネスが本格化することをアピールしたかったようだ。が、どうも漠然としていて、具体的な展開が見えづらい。

しかし、霞が関の関係者に聞くと、着々と武器輸出の作業は始まっているという。

「英国とは、化学防護服の共同開発の話が進んでいる。それよりも有望なのは、オーストラリア向けの潜水艦だ。オーストラリアは今、中国の南シナ海進出を警戒している。潜水艦を調達したいが、米国の潜水艦は原子力なので導入し難い。そのため、静粛性などで世界最高レベルと言われる日本の潜水艦に着目している。豪州側から提供を求めてきている」

最新鋭の「そうりゅう」型潜水艦は、スターリング機関方式の「AIP(非大気依存推進)」技術を採用しており、通常型と比べて長時間、浮上せずに行動が可能。自衛隊では「海の忍者」などとも称している。オーストラリアはこれが欲しいのだという。

川重(7012) 日足

川重(7012) 日足

このスターリング機関はスウェーデンのコックムス社が開発したもので、日本では川崎重工業(7012)がライセンスを得て、川重と三菱重工がAIP潜水艦を製造している。

4月5-8日にはオーストラリアのアボット首相が来日し、潜水艦の日豪共同開発を検討することで合意。一歩駒を進めた。

さて、潜水艦を作っているのはどの会社か。ざっと見ると、艦艇器材製造では藤倉ゴム工業(5121)横浜ゴム(5101)、搭載武器ではOKI(6703)三菱電機(6503)日立製作所(6501)古野電機(6814)日本無線(6751)ニコン(7731)NEC(6701)日本信号(6741)住友精密工業(6355)フジクラ(5803)富士通(6702)日本アビオニクス(6946・2部)、衛生器材ではアルフレッサHD(2784)、主導電池はジーエスユアサコーポレーション(6674)、個人脱出機材は双日(2768)といったところ。

ただ、防衛省関係者は次のように言う。

「防衛省、特に海上自衛隊はオーストラリアへの潜水艦提供は反対だ。情報・技術の流出を懸念している。しかし、一方で重工や川重は前向きだ。最後は安倍政権がどちらを取るかだ」

安全保障とビジネスをウィン・ウィンの関係に導くのは、なかなか難しいようだ。

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