【深層】を読む 「HFT」、恐れず冷静な対応を 現在の薄商い相場に思う

【深層】を読む 連載


弊害あるも流動性で貢献

足元の日本株市場は、急落はしないものの、上値も限定的といったイライラが積み重なる相場が続いている。影響は出来高面にも出ており、薄商いが引き起こす構造的な問題も表面化しつつある印象だ。

最近、海外市場でも日本市場でも話題になることが多いのは、高頻度取引とか超高速取引(HFT、ハイ・フリークエンシー・トレーディング)と呼ばれる取引手法だ。コンピューターを駆使する取引で、1秒間に数千回とか数万回の大量の小口取引を発注して執行する取引手法で、薄利多売の典型的で徹底的な戦略が基本線だ。取引対象は株式や株式先物だけでなく、通貨や商品先物など、ありとあらゆる市場が対象となる。コンピューターのプログラムにより株の自動取引を行う「アルゴリズム取引」の一種として認識されているが、HFTを専門的に扱う業者(投資顧問やヘッジファンド)はここ数年で急増し、市場への影響力が大きくなるとともに、その弊害も認識されるようになってきた。米国でHFTの世界の暴露本とも言える本が発行されたことをきっかけに、最近では、関連ニュースを見聞きするケースも急増している印象だ。

日本株市場も、もちろんHFTと無縁ではない。東証はHFTに積極的に活動してもらうように、数々の施策を実施している。東証の取引システムのそばに設置したサーバーから注文を出す「コロケーション」サービスはその典型例で、東証は積極的に推進した経緯がある。そして現在では、「売買代金の4割超、注文件数で6割超」がコロケーション経由での発注とされており、このかなりの部分がHFTの注文であることは疑う余地がない。さらに、東証は最近、「呼値の刻み」を細かくする変更の第一段階を実施した。海外からの論調を引用すると、呼び値単位の縮小はHFTにとっては友好的な施策とされており、米国ではHFTが膨張する要因になったとの指摘もなされている。HFT膨張の弊害が注目されるようになってきたことで、証券取引所やブローカー、投資信託会社や監督当局の代表者による会議も重ねられ、試験的に呼び値単位の拡大を検討しているという。

HFTは取引手法の1つで、その存在を否定することはできないし、そもそも論として、筆者は否定することを是とはしない。いろいろな取引手法が共存することで、お互いにさまざまな視点から株式などを売り買いすることで、マーケットに流動性を供給しあう利点が出てくる。いろいろな視点があってこそ、売りたい人と買いたい人が存在し市場が成立する。多種多様な考え方を持つマーケットは、それだけ出来高が増えるし、にぎわうし、大量の資金をやり取りできる大きなマーケットとして成長することになる。ただ、それも程度モノの話ではある。

現在の日本株市場では、少子高齢化の社会構造などから、構造的に長期投資を旨とする年金資金が株式を大量に買い越すことが難しくなりつつある。また、1960年代からの高度成長期はとっくに過ぎ去り、90年以降のデフレ経済下では「株を保有すれば損」という経済構造が長く続いた。アベノミクスでデフレ脱出の糸口は見えているにしても、日本経済が青春を謳歌(おうか)する状態に戻ったわけではない。そういった中、HFTという超短期志向の活動だけが突出して目立つようになれば、マーケットはバランスを欠き、弊害だけが目立つようになってしまう。現在の米国がその状態にかなり近く、東京市場も同様の罠にはまる寸前だとみている。

かつて裁定取引がワケも無く恐れられたことと同様に、HFTやアルゴリズム取引は、その姿が見えにくいがために、市場の不安心理を煽る要因として指摘される。投資家としては、冷静にその中身を見極め、弱点を見極め、そして対処する必要がある。「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」だ。逆に言えば、「敵を知り、己を知ること」ができなければ、そもそも戦いに参加することを控えるべきだろう。現在の日本株市場の薄商いを見て感じることだ。

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