深堀健二の兜町法律放談 リソー教育第三者委員会報告

兜町法律放談 連載


近年、会社において不祥事が発生した場合に「第三者委員会」が設置され、事件の真相究明及び再発防止策の提案が行われることが増えているのはご承知の通りですが、先日の日経新聞に、専門家が、タマホーム(1419)リソー教育(4714)の第三者委員会調査を高く評価している記事が掲載されていました。

そこで、今月は、両社における調査の何が高い評価を受けているのか、第三者委員会による調査報告書を検討したいと思います。

1 事件の概要

報告書によると、リソー教育グループ各社では、毎年20%成長を目標に掲げ、四半期ごとの売り上げなどの目標達成度合いに直結した人事評価と頻繁な人事異動を行っており、社員が目標達成に過剰な関心を抱くようになったところ、社員が、会計システムの欠陥も利用し、架空の売り上げを計上したり、売り上げの前倒し計上を行ったりすることが常態化していました。

その金額は、過去5期の売上高では毎年おおむね4%ないし9%が水増しされており、平成25年2月期決算における純資産額に至っては、訂正後には7億9000万円となっていたものが、56億円まで、結果的には約7倍にまで水増しされていました。

2 投資家の疑問への切り込み

日経新聞によると、リソー教育の調査が評価されているのは、「疑わしい点に切り込んだ過程がうかがえる」点のようです。

この点、当社経営幹部には、創業者で当社発行済株式総数の30%超を保有するA会長以外に、専務、常務および3名の取締役がいたところ、A会長以外の取締役は、従業員による売り上げの水増し計上を黙認し放置したことを全員認めています。

確かに、かつて平成19年にも監査法人から売り上げの不適正計上を指摘された経験があったことや、売り上げの水増しが大規模かつ専務も含め組織的に行われたことからすると、本件不正を経営トップであるA会長が知らなかったとは通常考え難いところです。

そこで、不正への関与および水増し事実の認識を一貫して否定したA会長に対して、第三者委員会は、「A会長に対して徹底した調査を行った」と報告書に明記しています。この、事件における最も重要かつ、普通の感覚で「おかしい」と感じる点の解明に注力したことが、「疑問へ切り込んだ」と評価されているのだと思います。

3 会長の不関与に関する論拠

第三者委員会は、次の5点を論拠として、会長の不関与を認定しています。

(1) 専務以下の役員・幹部社員は自らの関与について素直に供述しているが、A会長については不正会計に関与したことはなく、その認識もなかったはずであると供述しており、ある幹部社員は「自己保身もあり、また、不正を黙認する専務の手前もありA会長に事実を述べるはできなかった」と涙ながらに供述するなど、これらの供述の信用性が低いとはいえないこと

(2) A会長は平成19年2月期に監査法人から売り上げの不適正計上を指摘された際に部下に直接事情聴取しているが、その聴取メモややりとりも、A会長が実情を知っていたとは到底思われないこと

(3) A会長は監査法人の指摘を受けて数億円の費用をかけて再発防止のためのシステムを導入してきたこと

(4) 売り上げの水増しは教室の社員やそれを統括する幹部社員らがノルマを達成するために行ったものであるところ、経営者であるA会長が売り上げの水増しを容認するとノルマの意義を全く失わせること

(5) これほど大規模な不正をA会長が関与、認識していたとすれば何らかの痕跡が残ることが当然であるのに、それが全く見当たらないこと

たしかに、以上のような論拠に基いて、「会長は不関与である」と認定したと説明されると、なかなかこれを覆す反論するのは難しいと思われますので、この報告書は「社会的説明を果たした」という意味でも高評価を得ているのだと思います。

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