DLE椎木隆太社長インタビュー 世界のビッグプレーヤーを目指す【竹中三佳の株Catch one’s eye特別版】

インタビュー 竹中三佳の株Catch one's eye 連載


アニメ、キャラクター分野の革命児に

椎木隆太社長

椎木隆太社長

3月26日のIPOから活況相場が続くディー・エル・イー(3686・東マ、DLE)。上場直後に調整した株価もその後大きく巻き返している。「20世紀型と言われるハリウッドメジャーとは一線を画し、コンテンツ&キャラクター権利を軸とした21世紀型の映像コンテンツ及びキャラクター会社として、世界で1番のビッグプレーヤーを目指す」と語る椎木隆太社長。紙面では割愛した内容を当コーナーではフルバージョンで掲載する。(聞き手は竹中三佳さん)

■先ずは上場された理由からお聞かせください。

椎木 DLE社としての信頼獲得やファイナンスの意味も勿論ありますが、当社が手掛ける「フラッシュアニメ」は就活者やビジネスパートナーなどに「DLEは『鷹の爪』なんかを手掛ける面白い会社だとは思うけど、ビジネスとして利益が出ているの?」と聞かれることがあります。フラッシュアニメ業界の先頭ランナーの当社としては、「如何にフラッシュアニメを上手く利用し仕事として展開させているのか」という事実を広く認知してもらい、業界への更なる尊敬や信頼を得、人材や資金等を獲得しやすい環境を整えられれば、「業界自体を益々発展させられるのではないか」と考え、上場を決意しました。

■有名漫画とコラボレーションされています。

椎木 『島耕作』のアニメ化を提案した際、原作の世界観をある意味ぶち壊すというスタンスが原作者の弘兼憲史先生にウケたんです。「受け入れてくれるんだ!」と驚きました。原作者の先生方や出版社は、生み出したキャラクターが既に自分の頭の中でしっかりと実在し、声や雰囲気なども確定してしまっているので、アニメ化をすると「声が違う」など、どうしても世界観に不満を持ってしまうそうです。ところが当社は、作家とDLEのコラボという名の「化学反応」で出来た、元の世界とは余りに違う世界観で作品を作りあげるので、作家は違うフィールドでの作品を純粋に楽しみ、遊び心も芽生え、キャラクターを託してくれるようです。DLEはアニメ力ではなく、物語や設定などの企画力を活かして作品と向き合ってきた結果、『島耕作』『ガラスの仮面』『金田一少年の事件簿』等、著名な漫画とのコラボレーションを実現できたとのだと思っています。

■ところで、フラッシュアニメと通常アニメの違いはなんですか。

DLE椎木隆太社長(写真右)と竹中三佳さん(左)

DLE椎木隆太社長(写真右)と竹中三佳さん(左)

椎木 フラッシュアニメは、時間、金額ともに、通常の約1/4位で制作出来るアニメーションです。『鷹の爪』の映画は、制作人数は5-6人で、期間は約2-3週間程度ですよ。基本的に脚本には時間をかけますが、その後の制作自体はとてもスピーディーです。

一方、いわゆる通常のアニメは、ある意味歴史を重ねた芸術品で沢山の熟練の職人アニメーターにより制作されていますから時間もお金もそれなりを要するわけです。

例えばアニメ後発の中国には熟練の職人アニメーターがいません。そして育てる時間もありませんから、中国では、少人数で仕掛けられ、スピーディーに制作できるフラッシュアニメの方が主流です。

また、制作に際し、企画書を基に打ち合わせをし、口答や書面で承諾をとっても、いざ作品をお見せしたら「思っていたのと違う」となってしまうことがままあります。その時点からの修正は、通常、コスト・時間ともに相当なロスが出てしまいますが、フラッシュアニメは制作スピードが速く、企画の段階で実際の映像を提示できるため、両者に相違が生まれにくく、勿論、修正も柔軟且つ迅速に対応できます。この身軽さがフラッシュアニメの特性であり、魅力だと思っています。

■「鷹の爪」に次いで、「パンパカパンツ」の映画化も発表されていますが、やはり制作期間は短いのですか。

椎木 『パンパカパンツ』の様なファミリー向けの作品は、シュールな『鷹の爪』よりは、比較的手が掛かっているのです。親御さんは「子供には良質なものを」と求められますし、子供は「より動きのあるもの」に興味を持って好きになってくれます。また歌や音楽にあわせてキャラクターが踊っているように表現するには、コマ割なども細かするため、時間がかかります。一言でフラッシュアニメーションと言っても、それぞれのターゲット層に合わせて制作しています。もちろん、通常アニメと比較すると圧倒的にスピーディーですが。

■さきほど中国の話が出ましたが、コストの安い中国市場でDLEの優位性は。

椎木 ずばり、中国よりもっと安く制作できることです。日本はクリエイティブ産業が発達しており、ビジネスとしても成熟しているので、多くの国が日本と組んで「ものづくり」がしたいと思っています。ですが費用面で折り合わない事が多い。そんな中当社は、フラッシュアニメという手法で、日本のクリエイティブの良さを生かしつつも予算に合わせたコスト設定を実現します。その代わり権利収入はきちんと主張しますよ。安く仕掛けて、権利収入で収益を上げる。収益を生めるだけのクリエイティブ力を持ち、さらにそれをその国や世界に配信するノウハウも自信もあるからこそ成立しているビジネスモデルです。

■国境を越えてビジネスを展開する際に重要なのは。

椎木 柔軟性ですね。価格、仕掛けた後の軌道修正、不測の事態が起きた際の進退の判断、代替案の提示、組織のスピード感やそれを取りまとめられるトップがいるかどうかなど、ビジネスの部分でも、クリエイティブな部分でも柔軟性が不可欠です。組織の柔軟性やスピード、そしてトップに会社全体をリードするパワーがあれば、海外でもリスクヘッジしながらチャレンジできると思います。

鷹の爪■魅力的な独自のキャラクターの創造は大変だと思いますが。

椎木 当社にはプロジェクト毎にプロデューサーが居ます。ストーリー、世界観、キャラクターにしても、「かわいい」「面白い」など右脳的なひらめきで作ることはありません。この作り方をしていたら10打数1安打。当社は「やってみなくちゃ分からない」という作り方は絶対にしません。仕掛けてからこう露出させる、そうするとここで認知度があがる、そのタイミングでこのイベント、ここでDVDを出す、ここでタイアップ、次はLINEを利用して、世界に出て…と、ビジネスの動きを予測し、逆算してターゲット層を絞ります。細かくセグメントしていくと、キャラクターもある程度絞り込む事が可能です。条件を絞った状態でキャラクター制作をクリエイターに依頼すると、同じ0から1を生む作業でもクリエイターはとても生み出しやすい。当社では、0-10でビジネスを作るとしたら、1-10まではプロデューサーの仕事ですが、彼らは0から1は生めません。そこはクリエイターの仕事です。その時に具体的にこういう0-1をとお願いするのと、なんでも良いから0-1を作ってというのでは全く違います。感覚としては、プロデューサーが仕掛けやすい武器をクリエイターが作る感じ。プロデューサーによってこういう武器作ってという絞り込みがされていれば、極端な話、天才クリエイターでなくともヒットは生めるのです。当社は、天才クリエイターに頼るビジネスモデルではなく、プロデューサーとクリエイターが1つになってヒットを生む仕組み。これが最大の強みであり、これで10打数7安打を打ってきたと自負しています。誰に依存することなくヒットを生み続ける集団が、DLEです。

■プロデューサーの役割を教えてください。

椎木 当社には現在30名のプロデューサーが在籍しています。どうやって収益化していくかを計画して商品化するか等、収益面の責任プロデューサーである「ライツプロデューサー」。キャラクター作りを担う「クリエイティブプロデューサー」。クライアントに対して提案、営業をする「ビジネスプロデューサー」。当社のプロデューサー業は三種類あり、三位一体で各プロジェクトが動いています。

■プロデューサー養成講座を開かれたようですかその意図は。

椎木 次世代のプロデューサーの育成は、当社、業界、そして日本のためにもとても大切な事です。お蔭様で養成講座の反響は大きかったですよ。何故クリエイター講座ではなくプロデューサー講座だったか。それは、クリエイターが面白いものを作るからビジネスとし成り立っているのではなく、「プロデューサーのこだわり」と、「クリエイターの無から有を生む力」、この2つの化学反応とバランスでヒット作が生まれ、当社が成長しているからです。クリエイティブだけでなく、ビジネス戦略や長期ビジョンなどプロデュースの力の重要性を訴えたくて「プロデューサー養成講座」としました。当社は、クリエイター依存の会社ではなく、クリエイター&プロデューサーの両輪で走る会社だと考えています。

■ちなみに、椎木さんはそもそもアニメがお好きなのですか。

椎木 実はそんなに詳しくないのです。『999』『ヤマト』『ドラえもん』など誰もが知っているアニメを途中まで見ていた、その程度です(笑)。

■アニメに興味があまりないのになぜアニプレックスに。

椎木 ソニー在籍時、「ソニーベトナム」や「シンガポール」で支社長まで務め、ハードウェアについては達成感を超えたやりつくした感がありました。ソニーといえば、当事はソフトとハードの両輪を誇っており、『ソニーピクチャーズ』と『ソニーミュージック』がエンターテイメントの中心的存在でした。そんな中「これからはハリウッドと連動したビジネスを構築し、日本のアニメを輸出産業として真剣に世界に売り出していきたい。それには海外経験があり、立ち上げメンバーをとりまとめ、ブルドーザーの様なパワーで実行できる人が不可欠。是非、引き受けてくれないか。」との打診を受けたのです。実は日本に帰国するまで『ポケモン』の存在すら知りませんでしたが、「自分のスペックを一番評価してくれるところに行きたい」と希望を出していたので挑戦することにしました。

■独立のきっかけは。

椎木 ハリウッドでは交渉力や人間性を重要視するため「ソニーの看板を背負った椎木」ではなく、「椎木という個人」が評価されました。アメリカのアニメーションビジネス業界は、肩書きは関係なく個人そのものを信頼してビジネスをする世界だったのです。自らの独立志向が高まって行った時、アニメ自体には詳しくなくても、この業界でならこれまで培ってきた経験と人間力で十分勝負ができる、と自信を持ち独立に踏み切りました。

■椎木社長ご自身の強みは。

椎木 一番の強みは人間力ですが(笑)、アニメに関して言えば、キャラクターなどを好き嫌いで判断せず、フラットに、ビジネスとして冷静に見る事が出来る点だと思います。当社が仕掛ける相手は、マスオーディエンスである一般の方々です。私はアニメに対してはコアな知識がないので「自分に理解できない、面白くないなら皆も同じなのでは?」と、ターゲットである一般視聴者の感覚を代弁して議論することができます。プロであるが故に見えなくなってしまった素人感覚、一般的な感覚を作品に呼び戻す事が出来るのも強みではないかと思っています。

■海外からのアニメ輸入に関しては。

椎木 『トランスフォーマー』や『GIジョー』は米ハズブロ社からの要望でオリジナルを流しました。少しパターンが違うのが2006~07年まで放映された『パワーパフガールズZ』です。こちらはオリジナルの『パワーパフガールズ』がアジアではなかなか受け入れられなかったため、デザインなど全てフリーハンドで託すのでアジアで人気が出るようなアジア版にリメイクを頼まれました。この時はまだ、現在のDLE的な「ある意味突き抜けたリメイク」は行っていません。

■話は変わりますが、キャンペーンでもフレキシブルな対応をされるのか。

パンパカパンツ椎木 スマホやWEBでのプロモーションは、ページの作成が完成した後にクライアントの要望で変更を加えるのはなかなか難しいのが現状です。しかしそれでは、思った成果は得られません。例えば「思ったよりユーザー登録が進まない、何故だろう」「ここを少し変えてみよう」「登録者数が伸びてきた」「よし、ここをもっと強化しよう」みたいなことをフレキシブルに対応出来ると当然キャンペーンの成功率があがりますよね。この対応は当然のことで今の時代にマッチしている動きなのですが、映像エンターテイメントは、今までそこに真摯に向き合ってはこなかったのだと思います。30秒のCMですら手を加えられない、その現状に疑問を持ち、自分達ならそこを打破して、ヒット率1割だったものを7割まで伸ばすことが出来る。と考え、例えばキャンペーンなら一度やったら変えられないキャンペーンでなく、そのキャンペーンを成功に導くまででどんどん変更していくなど柔軟に取り組んでいます。

■作品にユーザーの意見が反映されるのですか。

椎木 作品を手掛け世に出したら、必ず『twitter』などの視聴者の反応をリアルタイムに確認します。視聴者の『twitter』での意見を反映させて、次回のストーリーを変更することもあります。そういう意味ではビッグデータを分析して課金ポイントを設定するゲームなどのIT業界に近い考え方かも知れません。映像業界や広告業界において、CMなどは納品した制作物に修正を加えるという事は基本的にありません。それが当社だと『twitter』での反響やクライアント意向によって、迅速に変更、軌道修正ができる。これはまさに今の世の中にマッチしたビジネススタイルだと思っています。

■現代の映像業界のあるべき姿とは。

椎木 時代がどんどんフレキシブルになっていっているのに、映像業界だけ対策や予見もせずに「もう作ってしまったので変更は無理です」という体制なのは無責任だしおかしいと感じています。では時代と世の中の動きに合わせた映像コンテンツスタジオはどういう姿なのか?と考えるとニーズに柔軟に応えてコストも抑え、スピーディーで且つしなやかな動きが出来る映像コンテンツスタジオ、DLEはそこに位置していると自負していますし、逆にそれが出来ないのであれば成長は見込めないと思っています。

■業界のルールブレイカーを標榜もされています。

椎木 『鷹の爪』映画化第5作目の『鷹の爪GO ~美しきエリエール消臭プラス~』は映画のタイトルに企業の商品名が入っており、作品の中に唐突にスポンサーロゴが出るなど、新しい形の広告手法をとりました。映画館サイドで「お客様から1800円を頂く映画の中で広告をするのは如何なものか」と物議を醸したのは間違いない様です。しかしそれも含めて『鷹の爪』らしさだし、結果として、お客様はとても喜び、人も入りましたから、「まぁ『鷹の爪』『DLE』は特別だよね」と新しいものを仕掛けた1つのスタイルとして、皆さん、寛容に対応頂きました。今後もこういう新しく面白いものを仕掛けて行きたいし、ずっと業界内で良い意味での「ルールブレイカー」として存在したいと思っています。キャラクター業界も映像業界も、広告業界も、業界自体に歴史があり、昔からの慣習に疑問をもたなくなりがちです。例えば「この値段ってなぜ決まっているのか」「商品化のライセンスフィー3%はなぜ3%なのか」など色々考えると納得いかない点も多くあります。旧体制の業界を変えていくには、そこに疑問を見出し、打開し、行動に移すことが肝要です。私は、そこを打ち壊して初めて『DLE』の存在意義があると思っています。

■DLEの強みとライバルは。

椎木 DLEは「安く仕掛けられる」「早く仕掛けられる」「権利収入を得る」「国境を簡単に超える事が出来る」これを要にしており、強みとしています。

ライバルは現段階ではいません。独走していると思っています。アンダーグランドで制作し、内輪で楽しんでいたフラッシュアニメを、ビジネスとして成り立たせたのはDLEが初めてだと自負しています。

■最後に、読者に一言。

椎木 インターネット広告、モバイル広告、動画広告、などマルチメディア時代の今後、ショートコンテンツのニーズは、ネットを介し、国境を超えて世界中にコンテンツのマーケットが爆発的に広がっています。そこを狙うには、受け入れられやすいアニメやキャラクターなどを武器に、マーケットにあわせ柔軟に対応することが求められると思います。そしてコスト競争力も重要。コストにも柔軟に対応できればアジアでもアフリカでもどこででもビジネスが成立します。これに対応できる日本のスタジオは、現時点でDLE社しかありません。グローバル戦略、地域戦略などをこのまましっかり取り組んで行けば、より一層の発展が見込めると考えています。20世紀型と言われるハリウッドメジャーとは一線を画し、当社は、コンテンツ&キャラクター権利を軸とした21世紀型の映像コンテンツ及びキャラクター会社として、世界で1番のビッグプレーヤーを目指し、今後も成長を続けていきますので、ぜひご注目頂きたいです。

◇取材を終えて
椎木社長のルーツは「ソニーベトナム時代」。隣の席に座っていたソニーの社員である一般人(日本人)を独自の戦略により、ベトナム中が熱狂する国民的キャラクターへと作り上げた経験にあるそうで、それが自信となって今があるそうです。

竹中三佳さんのプロフィール
タレント、リポーター、モデル。ホリプロアナウンス室所属。明るく誠実でファッショナブルなキャラクターでTVやラジオ、CMなどで活躍。J-WAVE「PARADISO」(毎週金曜日)の「HOT in TREND」コーナーリポーターとして出演中
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