特報 ライツオファリングが正念場に 「第三者割当増資」増加の理由

特報 連載


イメージ転換なるか

3月19日、エネルギー削減保証ビジネスの草分け・省電舎(1711・東マ)が、ライツオファリングの実施を公表した。ノンコミットメント型で、権利行使価格は1,365円。公表当日終値2,000円に対するディスカウント率は31.8%なので、過去最低水準だ。ただ、調達目標額は20億円と、総資産の倍近い。この会社にとってはかなり大型の調達になる。新株予約権1個で1株取得できるので、株主全員が権利行使をすると、発行済み株式総数は一気に倍増する。

省電舎(1711) 日足

省電舎(1711) 日足

基準日は3月31日で新株予約権の上場期間は4月1日から5月19日。権利行使期間は5月8日から5月26日。

ライツオファリングは2010年3月にタカラレーベンが実施して以降、長らく追随する動きがなく、12年10月にADワークスが実施、その半年後の昨年3月にクレアホールディングスが実施してから相次いで実施事例が登場した。

年末までは1カ月に2件程度のペースで実施されたが、昨年暮にセーラー万年筆が実施を公表して以降は、3カ月近く公表事例がなかった。

一部例外もあるものの、昨年の実施事例のほとんどががけっぷち企業だったためか、「ライツオファリングを実施するのはがけっぷち企業」というイメージが何となく定着しつつある。決してがけっぷち企業ではない日医工ですら、権利行使されなかった新株予約権に証券会社の買取保証が付くコミットメント型にはなったものの、権利行使価格は市場価格の3割と、かなりの低水準だった。

ディープディスカウント型のライツオファリングについては、権利行使価格に市場価格がサヤ寄せされて大幅に下落、株価はそのまま低空飛行を続けることになるので、既存株主は権利行使をしないと高い取得原価のままになってしまう。このため、権利行使をして取得原価を下げざるを得ない心理に追い込まれる、ゆえに強圧的である、という見解を示す専門家が出てきている。それだけにイメージは決して良くない。

しかも証券会社の買取保証が付かないノンコミットメント型だと、実際に払い込みが完了するまで調達額が確定せず、この調達額確定までが新株予約権の上場期間が挟まるために、公表から3カ月近くかかるという欠点がある。

この欠点ゆえか、本当のがけっぷち企業がここ数カ月で選択しているのが、結局のところ高い希薄化率を伴う第三者割当増資だ。

特定の第三者に新株を有利発行する第三者割当増資は海外からの評判が悪く、金融当局と取引所が総力を挙げて撲滅に動いた。この結果、市場価格よりも1割以上安い単価は有利発行と見なされて株主総会決議が必要になったし、希薄化のほうは300%以上で上場廃止になり、25%以上の希薄化を伴う場合は総会決議を通すルールになった。

だが、25%ルールには抜け道もあり、正当な理由を認めた第三者の意見書があれば、総会決議を経なくても取締役会決議でOK。このため、単価のほうは1割未満に抑え、その分発行する株数を増やし、高い希薄化を伴うスキームに流れる結果になっている。

決算期末が近づいた今年2月、3月は時間がかかるライツオファリングはすっかり人気がなくなり、高希薄化率の第三者割当増資に人気を奪われた格好だ。

これまで、権利行使率はほぼディスカウント率に比例してきた。安い権利行使価格だったにもかかわらず、現在の市場価格がそれ以下になっている事例も散見される。つまり、企業価値の上昇が実現していないか、実現していたとしてもそれを市場が評価していないということになる。ライツオファリングががけっぷち企業の延命装置というイメージを払拭(ふっしょく)するためには、まっとうな事例が積み上がるのを待つしかないだろう。
ライツオファリングの実施事例(クリックで拡大)

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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